とある部屋に、サキュバスが駆け込んだ。中にはたくさんの魔物娘たちがおり、その前にリリムが座っていた。
「ganota_Mk2が『第一回無差別格闘大会』を書き終えました。これでやっと連載小説がひとつ消えます」
サキュバスが言うと、机に座る眼鏡をかけたリリムが小さくうなづいた。
「やっと腐りかけたSSの処分を始めたのね、よかったわ」
しかし、入ってきたサキュバスは生唾を飲み、言いにくそうに続けた。
「あの、魔王様。それが・・・」
サキュバスの言葉を、クノイチが続けた。
「・・・ganota_Mk2のパソコンを極秘に調べたところ、『第二回競馬フォルダ』というものを見つけました。中身は5つ。『牛馬鳥競争』『ロリ競争第二弾』『人型クロカン競争』『昆虫競争第二弾』、そして、『持ちキャラ徒競走(宣伝用)』と書かれたWordファイルでした。おそらく小さく反響のあった競馬SSの第二弾かと・・・」
それを聞き、リリムは震える指で眼鏡をとった。
「・・・一瞬でも『ganota_Mk2の新作だヒャッハー』と思った娘は出て行きなさい」
『・・・・・・』
一部の魔物娘たちが音も立てずに部屋を出た。扉が閉まった途端、リリムは叫んだ。
「・・・何を考えてるのよあの妄想癖は!?ただでさえ未完結連載SSをみっつも抱えてるのにまだ新作をだすですって!?バカじゃないの!?ヴァーカじゃないの!?」
「魔王様、二回目で無理やり空耳言わないでください」
「二回も言ったのよ!大事なことだから!チキショーめぇっ!やっと格闘大会をやや打ち切り気味に終わらせたのに、今度はネタで打ち切らせたあの競馬SSの第二弾!?頭腐ってるの!?」
「しかし感想で『次回作待ってます』の意見があったのは事実です」
「知ってるわよ!ネタを固めて書けって言ってるの!ネタためすぎて書ききれないからってクロビネガに投稿をやめたスターリンのように!ネタ切れて放ってても誰も文句いわねぇだれとタカをくくってたらドッペルたん中毒者が真闇成分不足を訴えかけてきたのを忘れたの!?バカじゃないの!野郎のくせにおっぱいぷるんぷるん!(贅肉的な意味)」
リリムの叫びを廊下で聞いて、何故かしくしくと泣き出したドッペルゲンガーの娘に、メドゥーサの娘が駆け寄った。
「中毒者の感想を見て、急いで書き上げたらしいわよ、最新話」
部屋の中ではリリムが叫び疲れ、椅子に座った。
「・・・新作を出すことが悪いんじゃないと思うわ。ganotaは書くのが楽しくて書いてるし、閲覧数や投票数が増えたり、暖かい感想をいただくのを考えると、まだ鬱陶しがられてはないと思うわけ。
でもね・・・あんまり新作を出して、古いやつは放置して、古いSSの更新を待っている方のことを考えなさいよ。魔物の館脱出SSとか、どうなってるのよ。ネタのフォルダが見つからないなら、また作ればいいのに、新しいネタばかり作って・・・多くの人は忘れてるでしょうけど、待ってる人がひとりくらいいるかもしれないじゃない。
・・・ganotaに伝えなさい。
競馬SSを新しく書くなら、この格闘大会SSで『続編希望』的な感想がいくらか集まってからにしなさい、ってね・・・」
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