とある一家の義兄妹



都会の一戸建ての家。表札は、新神家。
ここには、一組の男女が住んでいた。

『ぼいん
hearts;』
『ぷりん
hearts;』

「おほー・・・ムッチムチのお姉さんだ
hearts;」

前を歩くダークエルフのピチピチスーツ姿に鼻をでれーんと伸ばしていた男が、新神家の長男、『新神 大和』である。
大和がニヤニヤしていると・・・


「兄様。不潔です。死んでください」


後ろから淡々とした口調で大和の心を抉る者が現れた。

「おっ、俺のどこが不潔なんだよ!?」

「主に兄様の頭の中です。淫らで不潔な妄想を現在進行形でしている、その煩悩発生源です」

サイドテールを添えた輝くような銀髪に、半月状のジト目。見事な幼児体型に加え、律儀に校則に従ったロングスカート。学校の制服の背中からのぞく純白の羽に頭には天使の輪。
大和の義妹、『新神 エリス』である。
ふたりの親がお互い子連れで再婚し、当時8才、7才だったふたりが義兄妹となったのだ。
ちなみに両親は大和が中学入学時に出張に出て、まだ帰ってこない。メールは通じるので、生きてはいるのだろうが・・・話を戻す。

「うっ、うるせーっ!健全な男子なら色っぽい人を見たら反応してしまうのはしょうがねぇだろうが!」

「兄様は過剰反応しすぎです。ウサギじゃないんですから自重してください。だからモテないんですよ」

「げぶほぁっ!い、言ってはならんことを・・・」

「くだらないお話はここまでにしましょう。先に行きますよ、兄様」

「く、くだらな・・・俺のモテ可否が、くだらな・・・」

がっくりと膝をついて真っ白になる大和を置いて、エリスはスタスタと歩いて行ってしまった。


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エリスは最初から大和に対して冷たかった。あまりエリスから話しかけないし、大和がなんとか話しても返事はあまりない。両親は何故か気にしなかったが、大和にしては気が気でなかった。必死にアプローチをしかけるも、エリスはそれを無視、もしくは適当にあしらっているように見えた。

別の意味でエリスがさらに冷たくなったのが、大和がエロ本を買ってきたことがバレた時である。それから、清純でふしだらなことが嫌いなエンジェルの本領発揮と言わんばかりにエリスは大和に『不潔』だの『変態じみてる』だの貶し、時にはエロ本を勝手に古紙回収に出すようなこともした。

そんな大和とエリスの関係が変わったのが、とある夏手前の日である・・・


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「へ?部活動禁止?」


放課後、いつものようにサッカー部に顔を出した大和は、今日の部活動がないことを部長から告げられた。

「今日は計画停電だから、帰れってよ。別に俺ら、電気使わねぇのによ」

「えぇ・・・マジっすか?」

「マジだよ。他の奴らも帰ったし、大和も今日は帰れ。ここにいると、顧問がうっせぇ」

「部長はどうするんすか?」

「あともう少しいるよ。まだ連絡できてねぇやつがいるし、そいつらが部活に来て待ちぼうけさせんのも可哀想だからよ」

「わかりました。お先に失礼しまーす」

こうした経緯で、大和はいつもと違い、相当早く家に帰ってきた。

「あっじぃ・・・うちも停電してんのかなー・・・くそ、クーラー使えなかったらテンションだだ下がりだぞ」

ぶつぶつ言いながら玄関を開けると、玄関にはエリスの靴が綺麗に置いてあった。

「エリスも帰ってんのか。電車は動いてんだな」

エリスは自転車通学の大和と違い、少し離れた電車通学の学校に通っている。結構時間がかかるのだが、どうやら大和より学校が早く終わったようだ。

「お、涼しい。うちは停電してねぇみてぇだな、ラッキー♪」

テンションを上げた大和は、スキップしながら階段を上がり、二階の自室の扉を開けた。

「さぁてC◯D4でMK14無双でもするk」



「すーっ
hearts;はーっ
hearts;すーっ・・・えっ?」



「・・・あ?」


瞬間。時が止まった。

静かになった大和の部屋。外には早めに羽化した蝉の声。

大和のベットの上には乱れた制服に恍惚な顔を浮かべ大和のトランクスを鼻に当ててオナニーしているエリス。

勢いよく扉を開けた大和はばっちりとエリスと目が合い、ふたりは硬直。

1秒、2秒、3秒・・・蝉の声が煩く感じる時間が過ぎ。


そして時は動き出す。


「す、すまん!!!」


先に動いたのは大和。
部屋を間違えたと思ったのか、慌てて部屋を出て扉を閉めた。
が、部屋にかかる『Yamato』の表札を見て、また硬直した。しかし、今回は頭をフル回転させながら。


(え?あれ?お、俺の部屋?
待て待て。落ち着け俺。

ここは俺の部屋だろ?
でも、中にエリスがいたよ
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