[アルラウネ寮 308]
「なぁ、サティア〜。そろそろベルンくん、許してやったら〜?」
「・・・知らない」
朝の7時、サティアとベーゼの部屋。
ベーゼが着替え中のサティアに話しかけていた。
「もうベルンくんも反省してるだろうしさ〜」
「うるさい」
「サティアだって早く仲直りしたいでしょ?」
「・・・ふん」
「・・・もう!素直じゃないんだから!ホントに知らないよ!」
とうとうベーゼがぷりぷり怒ったとき、部屋の入り口から円柱状に丸まった紙が放り込まれた。
「?なにこれ?」
ベーゼが広げてみて、一瞬でギョッとした顔になった。
「サティア!サティア!!」
「うっさい!いい加減にしないと固めるよ!」
「バカ!そんな意地張ってる場合じゃないって!これ!これ見て!!」
ベーゼが突き出した紙面に、いやいや目を向けたサティア。
瞬間、サティアの目が開かれた。
「・・・な、な、な、なによこれぇぇぇぇぇぇっ!!?」
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[ガーゴイル寮、312号室]
「・・・くぁぁ・・・」
ベルンが部屋で頭を掻きながら起きる。時計を見ると、7時近かった。
「・・・メシ食いに行くかな」
ベルンはのそのそと起き上がり、顔を洗おうと据え置きの洗面所に行ったところで、昨日のことを思い出した。
『君、ナンパ魔になりたまえ』
「・・・けっ。バカらしい。なぁにがナンパ魔になれー、だ」
舌打ちをしたベルンは、不機嫌を洗い流すかのように勢いよく顔を洗い、授業の用意と身支度を整えて、部屋を出た。
彼は知らなかった。インドランがひとつ、『騒動』を仕組んでいたことを。
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[巨大食堂『もふもふ亭』]
食堂に入ったベルンは、さっそく違和感を感じ取った。
(・・・ん?)
朝、人が少ないのは普通だったが、魔物娘たちの様子がおかしかった。
ベルンが入ってきてから、チラチラと見る者。
ベルンを見てギョッとし、凝視する者。
ベルンを横目で見ながらヒソヒソ話をする者。
ベルンは改めて自分の身だしなみを確認したが、特に変なところはなく、首を傾げるばかりだった。
「なんだってんだ?・・・あ、すんません」
トレイを持ったベルンは、稲荷のいるジパング料理の店へ向かった。
「すいません」
「あ、いらっしゃ・・・あっ」
店の稲荷はベルンを見ると、ポッと頬を染めた。
「・・・?」
「あの、こ、ご注文は?」
「あ、えーっと・・・親子丼で」
「あ、はい。親子丼ひとつー」
店の奥から『はーい』と言う声が聞こえた後、なぜか稲荷はベルンを見てもじもじした。
「・・・なんすか?」
「えっ!?あ、いや・・・うふふ////」
稲荷はごまかすように笑った。
ベルンはまた首を傾げた。ふいっと視線を外すとやはり周りの魔物たちがベルンを見ていた。
「・・・あ、あの」
「はい?」
今度はおそるおそる、といった感じで稲荷が声をかけてきた。
「あの・・・私に、お声はかけてくれないのでしょうか?」
「・・・は?」
「お好みではありませんか?えと、私、確かに年上ですが、まだ若い方で・・・」
「へ、へ??」
意味がわからないベルンが反応してると、稲荷の後ろから猫又が親子丼を持ってきた。
「親子丼ひとつですー♪」
「あっ!?」
「あ、あぁ…ありがとう」
「えへへー♪」
やけに愛想のいい猫又にも疑問を抱きながら、ベルンは親子丼を持って席に向かった。
(なんで今日に限って作るの早いの!)
(店長さんだけ誘うとかズルいです!)
「・・・んん?」
後ろで稲荷と猫又が小さくしゃべっているのを聞いたが、ベルンは無視することにした。
さて、ベルンは一人で座ったのだが、やはり周りの魔物たちがずっとベルンに視線を送っている。中にはわざわざ席を移ってきた者たちまでいる。
もうここまで来ると気味が悪かったが、そこにひとり、空気の読まぬ者が現れた。
「おはよー!いい人!」
ラトラは気さくに声をかけ、ぴょこんと跳んでベルンと同じ席についた。
「お、おぅ。おはよう、ラトラ」
知り合いが来て少しホッとしたベルンだった。
しかし、すぐさまこの異様な雰囲気の原因を知ることとなる。
「いい人ー。この学園新聞のこと、ホント?」
「ん?」
ガサガサと音を立てて、ラトラは一枚の紙を取り出した。
「なに?『学園新聞〜号外号〜』?へぇ、こんなんあったん・・・ぶっ!!?」
瞬間、中身を見たベルンは口に含んだお茶を吹いてしまった。
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新一回生ベルン・トリニティは 魔力供給者募集中!?]
『今年入学の一回生、ベルン・トリニティは
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