番外編「八日目夕方の雑多イベント」

[始まりの森丘・封印の間]

ベルンたちが入った封印の間、入口。
倒れて動かぬガーディアンを、ひとりの白衣を来た女性が調べていた。

「・・・ふーむ・・・」

その時、ざりっざりっと足音を立てて、リーフ・ライアーが女性に近づいていった。

「『ジーニアス』先生。なにかわかりましたか」

ジーニアスと呼ばれた女性は、『蛇の下半身』からぐるりと回し、リーフを正面に据えてメガネを取った。


「なんにも。ベルンくん、だっけ?彼の指輪が、如何にこのガーディアンに作用していたのか、全くわかんない。これ、相当複雑で、古いものみたい。私より、旧魔王様時代の魔法回路を知る者の助けが必要よ」


エキドナの『ジーニアス・ライアー』。リクラスト学園の教師である。
専攻学科は『補助魔法学科』及び『魔法回路学科』。後者は特別な学科で、パペットマスターの必修科目だが、それはおいて置く。

「貴女も旧魔王時代から生きているお方でしょうに」

「私が魔法回路に触れたのは魔王様が代わられて数年経ってから。まだまだ初心者なの」

「60年の年の功も役に立ちませんか」

「リーフちゃぁん?お姉ちゃんに絞め殺されたいかなー?」

ちなみに、リーフとジーニアスは義姉弟である。(リーフの兄がジーニアスと結婚)

「冗談はさておき、トラップに関しては色々と面白いことになってましたよ」

「・・・無視なの、リーフちゃん?」

「ツッコミを希望ですか?似合わないです」

「兄嫁ですが義理の弟が容赦ないです・・・」

「ふざけないでください。さっさと真面目な話に戻しますよ」

「・・・で、面白いことって?」

ジーニアスが小首を傾げて聞くと、リーフは腕組みをしながら言った。


「まず、入口トラップの触手。あれの反応術式を組んだのはファ先生なんですが、今日、術式を確認したところ、元々、生徒は例外なく侵入できないように組んであったのに、『特定の条件に合った男性』を引き込むように『組み換えられていた』そうです。侵入してからの触手トラップは正常に作動していたようですが。
次に、安らぎの間ですが、あそこは私の仕掛けた、催眠ガストラップがあったはずなんですが、何者かによって解除されていました。ベルン・トリニティの話から、彼やサティア・ウィーリィが解除したようではないようです。
さらにここ。この封印の間の扉の鍵は、『私が作った最難度の鍵』だったです。ところが、ベルン・トリニティの話では、数回ピッキングを試みたところ、解錠できたとのこと。確かにベルン・トリニティのピッキング技術は一回生の中では素晴らしい方ですが・・・正直、彼に解錠できたのはおかしい」


そこまで聞いて、ジーニアスは眉をひそめ、結論を言った。

「・・・つまり、誰かが、ベルンくんたちが封印の間に侵入、さらにバルフォスちゃんを解放できるように仕組んだってこと?」

「最悪、それが考えられます。さらに、ベルン・トリニティの話では、この封印の間の存在を、『お宝のある部屋』とボカして、未だ見つからぬ不審者3人組に情報を流した輩もいます。同一犯と考えると、いろいろ辻褄が合わせられます」

「う〜ん・・・誰なのかしら?」

ジーニアスが首を傾げる。そこに、リーフが尋ねた。



「・・・ところでジーニアス先生。貴女は、先週の月曜日から三日前まで突然休暇をとられていましたが・・・どこに行っておられたのですか?兄を置いて」



ピクリと眉を吊り上げたジーニアスが、リーフを睨んだ。

「・・・なに?リーフちゃんは私を疑うの?」

「バルフォス殿の封印場所を知り、学園のダンジョンのトラップに手を加えられる人物は相当限られます。部外者はそうそう入れないし、学園関係者でも封印場所を知る者は一握り。さらに実力があるとすれば・・・まず、貴女が疑われても仕方ない。第一、一週間前にここを私、ファ先生と午後の講義まで潰して見回った際には、こんな異常は見受けられなかった。教師の中で一番自由な時間を持っていたのは、貴女なんですよ、ジーニアス先生」

心外そうにするジーニアスの目をギロリと睨むリーフ。
しばらくして、ジーニアスの方がわっと泣き崩れた。

「ごめんなさい、刑事さん!私がやりました!」

「ふざけないでください。兄にヘソクリの在り処を教えますよ」

「ヘヘヘヘソクリなんて、アリマセンヨ?」

「ふざけないでください」

「はい、正直に言います。休暇中は昔の友達と遊んでました。マジです。嘘吐いてません。だからヘソクリの場所は言わないでぇ・・・飲む時に必要なのよぉ・・・」

よよよとリーフに泣きつくジーニアスの様は、どう見ても60過ぎのババァには見えな(

「・・・一応の確認だけですよ。初めから疑いは薄いですから」

「・・・信じてくれるの?」

「一
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