八日目『新しい週だけど不安がいっぱい!?』


[ガーゴイル寮、大浴場]


「・・・お、終わったぁ・・・」


大浴場の中から、ヘロヘロに疲れたベルンが出てきた。
朝の4時から大浴場の掃除をしており、やっと終わった今、すでに時計は7時を回っていた。

「真面目にやったようだね。ご苦労様、ベルンくん」

「・・・台座ごと移動できるんですか?」

「ははは。この台座は移動式なのさ。さて、今日はもう終わりだけど、君の部屋に、今日の朝に配られるものがある。早く行って確認しなさいな」

「あ、はい・・・お疲れさまです」

「授業、寝るんじゃないよ」

(正直、厳しいなぁ・・・)

そんなことを思いながら、ベルンは部屋へと戻った。


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戻ってきたベルンは、小包が部屋のベッドに置いてあるのに気づいた。

「・・・なんだこりゃ?」

ベルンが小包を開けてみると、一冊の手帳サイズの本と片手に収まる小さな端末が入っていた。本の表紙には『携帯型魔術式通信端末、ケータイの使い方』と書いてあった。

「通信端末?」

ベルンがページをめくり、中身を読み始めた。

「えーと・・・『この製品は、学内で友人たちや教師と連絡を取る際に使用できます。使用方法は…』・・・へぇ・・・」

ベルンが適当に読み解いたところ、この通信端末、ケータイには固定番号があり、その番号を打ち込むと通話できるようだ。ただし、通信できるのは学内、寮内のみらしい。

「なるほどな・・・こんなん、生徒全員に配ってんのか?・・・あ、そろそろメシに行くか・・・」

『新入生はこれからこれを常備のこと』という但し書きに従い、ベルンはケータイをズボンのポケットにいれて部屋を出た。


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[巨大食堂『もふもふ亭』]

そこでベルンは、一組の男女がテーブルに突っ伏しているのを発見した。

「・・・大丈夫か、ロック?」

「・・・答えは・・・ノーだ」

男はロックだった。もう彼がいるということは、もう一人が誰か、自明の理であろう。

「・・・バルフォスも、大丈夫じゃなさそうだな」

「・・・黙れ人間・・・殺すぞ・・・」

ベルンはため息を吐いて、手に持ったトレイを置いて同じテーブルについた。

「なんでそんな疲れてるんだよ?寝れなかったのか?」

「・・・わからん・・・なんかしんどい・・・」

「・・・我は・・・魔力が・・・回復せん・・・何故、何故なのだ・・・」

朝食も食べずにぐったりする二人を前に、ベルンはサンドイッチを頬張った。

「・・・予想はできるが・・・やっぱ、寝なかったんだな。性的な意味で」

『当たり前だ!!!』

ベルンの一言に、ロックとバルフォスが声を大にして起き上がった。ベルンが驚いてビクリと肩を跳ねさせたが、二人は気にせず離し続けた。

「なんでこんなチビとヤらなけりゃいかんのだ!?俺が童貞を捨てる相手はムチムチボインのお姉様と決めている!!」
「こっちとて願い下げじゃ!貴様と同衾するくらいならスライムと同衾するわい!!」
「んだとテメコラ俺はスライム以下だっつうのか!?」
「当たり前じゃこのど低能が!人間という下等種に生まれた時点で貴様の価値などそこらに生える苔以下じゃ!!」
「いい度胸だテメェ、こうしてやる!!」
「こりゃきはまらにをひゅるいはははははは!」

ロックがバルフォスの頬を引っ張り、バルフォスは涙目になりながらぺしぺしとロックの腕を叩いて反抗した。

「・・・仲良しだな、お前ら」

「どこが!?」
「ろほは!?」(どこが!?)

「ははは・・・」

ちょっとした茶々に敏感に反応した二人に、ベルンは軽く笑った。そのとき、視界のはしに見えた人影に、ベルンはハッとした。

「・・・・・・」

そこには、トレイを持ってベルンを見る、サティアがいた。

「サティ・・・」

「・・・」(ぷいっ)

「あ・・・」

ベルンが立ち上がってサティアを呼ぼうとした瞬間、サティアはそっぽを向いて遠ざかってしまった。追いかけようにも、ベルンとサティアの間にはテーブルや椅子が多く、さらに人が座っていたため、追いかけられなかった。
あっという間にするすると遠ざかり、人ごみに紛れたサティアを見て、ベルンはひとつため息を漏らした。

「・・・はぁ」

「おい?どうした?サティアちゃんと、なんかあったのか?」

「いや・・・なんでもない」

「・・・あ、ベルン。お前、ケータイあるか?」

そう言ったロックは、カバンから取り出したノートを破り、紙切れに番号を書いた。

「これ、俺のケータイの番号だからよ。なんかあったら連絡しろよ」

「・・・サンキュ」

ここでは話しにくい事柄なんだと思ったようだ。ベルンはロックから番号を受け取り、ケータイの番号を交換した
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