五日目、夜 & 六日目、午前(土曜日)

[ロックが起きる前・・・]


「いい人ぉ・・・ついてきてぇ・・・」


ベルンの目の前には、泣きそうな顔をしたラトラがいた。

「なんだよラトラ・・・こっちは男子テントだぞ・・・」

「いい人じゃなきゃやだぁ・・・ついてきてぇ・・・」

うるうると涙ぐむラトラにベルンは頭を掻きながら眠そうに欠伸をする。

「・・・ったく・・・ついて来いって、どこにだよ?」

「うぅ・・・」

ラトラがもぞもぞと動き、顔を赤らめながら小さい声で言った。





「・・・おしっこ」





「独りで行け」

ベルンはすぐさま寝袋を被ってしまった。

「やぁ!暗い!怖い!いい人ついてきてぇ!」

「バカ!サティアやベーゼを呼べよ!


「乳の人もチビの人も起きないよぅ!ひとりぼっちじゃ怖いのぉ!いい人ぉ!お願いぃ!ついてきてくんなきゃ、いい人の寝袋の中でする!」

「ふざけんなバカ!分かった、分かったから・・・騒ぐのはやめろ・・・ちょっと待ってろ・・・」

はぁ、と一発大きくため息を吐いた後、ベルンは寝袋から出て上着を羽織った。


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「いい人いてよ!?絶対だよ!?ラトラが聞いたら、返事してよ!?」

「わかったからさっさとやっちまえ!」

テントから出て滝を出て、すぐ近くの茂み。
ラトラが屈むすぐ後ろの岩陰からベルンが応える。流石に目の前でやるのは恥ずかしかったようだ。

(・・・ったく。暗い、暗いっていうが、夜にしちゃ明るいじゃねぇか)

ベルンが見上げると、空にはたくさんの星が煌き、さらに大きな満月が爛々としており、ランタンなしでもだいたい足元が見えるくらいだった。

(暗がりが怖いのか?子供みたいなやつだ)

その時。


『・・・ちょろろろろ・・・』


「・・・・・・」

なんの音かは言わずもがな。察しのついてしまったベルンは気まずい顔をしたまま、硬直してしまった。

「・・・いい人?」

音が止んだのち、衣こすれの音がし、ラトラが岩陰から顔を出した。

「・・・なんだ」

「・・・聞いてた?」

「・・・なにも聞いてない」

「・・・ラトラの声、聞いてたよね?」

「・・・あぁ」

「いい人の変態!」

「てめぇ言うにことかいてそれかよ!第一お前がなぁ!」

頭にカチンときたベルンがヒートアップしかけた瞬間だった。



「・・・だれかいるの?」



ハッとしたベルンとラトラは、すぐさま岩陰に隠れた。今日の昼に聞いた声だからだ。

「・・・あれ〜?だれもいない・・・」

声の後に現れたのは、ビィブだった。
キョロキョロと辺りを見回す彼女のちょうど岩陰に、ベルンたちは隠れていた。

(いい人、どうする?)
(急だったからヴィンギナーもナイフも持ってきてない。なんとか隠れてやり過ごすぞ)
(らじゃ)

その時。


「ビィブー!なんか見つけたかい!?」
「こっちはなんもなかったー」


昼のオーガとオークの片割れまでもが、ビィブの近くに来た。
しかし、二人が盗賊職だったからか、はたまた運がよかったのか。ちょうどベルンたちの隠れた周りに岩がゴロゴロあり、なんとかベルンたちの姿を隠していた。

(くそっ。集まってきやがった・・・)
(めんどくさいよぉ、いい人ぉ・・・)

ふたりは息を殺し、三人が去るのを待った・・・


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「いえ〜。誰もいないし、なにもないです〜」

「そうかい・・・おかしいねぇ・・・ここいらに『入り口』があるはずなんだが・・・」

「姉貴〜。もうひとつの『入り口』探しましょうよ〜。森の中にあるっぽいやつ〜」

「森の中ねぇ・・・案外そっちのほうが見つかりやすいかもねぇ・・・」

「というか、ボクはご主人様を探したいんですけどぉ・・・あいたっ!」

「ビィブ!いいかい!うちらは『洞窟に眠る宝』を探しに来たんだよ!あの野郎なんか後回しだ!」

「でもぉ・・・『この近くにある洞窟に宝がある』って話だって、胡散臭い情報屋にタレこまれた情報じゃないですかぁ・・・それより、ボクは目の前の素敵なご主人様を・・・」

「・・・はぁ、分かったよ・・・明日、洞窟の入り口が見つからなかったら、あの野郎をとっちめるよ」

「・・・ホント!?」

「ただし!明日、ビィブが真面目にやってないとアタイが判断したら・・・あさっても洞窟探しだよ!」

「分かった!ボク、頑張る!!」

「『エイブ』も張り切るよ!」

「よし、じゃあ。明日頑張るために、今日はトンズラして、しっかり寝るよ!」

『おーぅ!!!』


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・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

オーガたちが去っていってしばらくしてから、ベルンとラトラ
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