とある忍びの忠誠の裏側


時は戦国、土地はジパング。

ここ、サガミの地において、当主『北條』家に仕えるクノイチ一族がいた。

その一族は『封魔一族』と呼ばれ、反魔物派にとって恐ろしい存在であった。

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「『氏康』様、岳田の部下の下に放ったクノイチが見事任を終え、帰還しました」


当主である『北條 氏康』に小姓が報告した。
氏康は身長180はあろうかという巨躯をしており、あぐらをかいて座るその背中からは当主の威厳を感じさせる。
彼は月夜を見ながら酒を飲んでいた。背中を小姓に向けながらお猪口の中の酒を仰いだ。

「・・・ここへ」

「はっ」

氏康が短く言葉を発すると、小姓は静かに部屋を出て行く。すると、入れ替わりに天井から一人の女性・・・クノイチが下りてきた。クノイチは氏康から人ひとり分離れた場所に片膝をついてジッとする。

「・・・『白雪』だったか?」

「はっ、『封魔 白雪』にございます」

「・・・大義であった」

「はっ、ありがたきお言葉です」

「・・・うむ・・・これより、白雪に新たな任を任せる」

「はっ」

「・・・しかし、任の内容はすでに分かっているだろう・・・励め」

「はっ!失礼致しました」

言い終わった瞬間、クノイチが高く跳び、天井から脱出していった。

「・・・・・・」

残された氏康は徳利からお猪口に酒を注ぎ、またあおぐ。


その横に、音もなくクノイチが降りたった。


「・・・『藍華』か」

「はい、主様」

クノイチ『封魔 藍華』であった。
正座した状態で氏康とはひとまわり小さいくせに、面積の少ない服に収まり切らないムチムチした身体。顔は髪と布宛てで目元しか見えない。
藍華は徳利を持つと、無言で氏康から突き出されたお猪口に酒を注いだ。

「美味しゅうございますか」

「・・・どう飲んでも酒の味は変わらん」

「そうですか」

藍華が問うと、氏康は世辞も知らぬような返しをした。しかし、先ほどのクノイチとは違って藍華に堅苦しい姿勢はなく、目からわずかな微笑みが感じられた。

「・・・白雪が夫を持った・・・子作りに励めと言っておいた・・・」

「屋根裏にて聞いておりました」

「・・・そうか」

「はい」

氏康がお猪口を差し出すと、すかさず藍華が徳利を傾け、酒を注ぐ。

「・・・思えば、お前との仲も長いな」

「急にどうされました?」

「・・・封魔の血を紡ぐためとして、人間の妻もいる儂にお前を抱けと、祖父の早雲に言われたのはいつだったか」

「・・・もう、40も前です」

「・・・そうか・・・あれからしばらくして妻が逝き、独り身になるかと思った時・・・お前が『妻にして欲しい』と短刀片手に土下座してきた時・・・肝が冷えたぞ」

「娶っていただけなかった時、自害しようと思っていましたので」

さらりと恐ろしいことを言う藍華の目は、まだ微笑みを浮かべていた。いや、この目がデフォルトなのかもしれない。

「・・・お前も飲め」

急に、氏康がまだ酒の入ってるお猪口を藍華に突き出した。

「私がですか?主様の前で酒を飲むなど・・・」

「・・・女が夫の前で、酒を飲むことが、なにかおかしいか」

氏康が言うと藍華が目を細め、不機嫌そうな顔をする。

「・・・意地悪な人」

「・・・この時生、正直な輩は生きていけぬ」

その言葉とともに氏政がにやりと口端を歪めると、藍華はお猪口に目を落とし、口元の布を手で下に下げた。
現れたのは薄紅色をした瑞々しい小さな唇。そこにお猪口がつけられ、ゆっくり傾けられていく。

「・・・んくっ、んくっ」

小さく喉を鳴らして酒を飲むその様を、氏康はジッと見つめていた。

「・・・ぷはっ、美味しゅうございましっ!?」

お猪口を離し、顔ごと氏康へ向いた唇に、氏康の唇が重なった。頭は氏康の腕で逃げ場を塞がれてしまう。

「んっ・・・ちゅぱ
hearts;れるっ、んっ
hearts;」

しかし、藍華は取り乱すことなくすぐさま口を開き、氏康の舌に己が舌を重ねる。

「・・・・・・」

ところが、ここまで持ってきた氏康は動かない。舌も、腕に力を込めることもなく、ただジッと藍華の目を見ている。

「んちゅ
hearts;れるっ、じゅるるっ
hearts;んっ、んんっ
hearts;」

藍華はその目を蕩けた目で見つめ返しながら、口の中で舌を這い回らせ、絡まし、唾液をすすり、くぐもった声を出していた。

「んんっ
hearts;ぷはぁっ
hearts;」

藍華が手で押さえられていた顔を離すと、ふたりの間で唾液の橋がかかる。藍華自身はというと、先の落ち着いた雰囲気はどこへやら。舌を突き出し、待てをされた犬の様にはっはっと物欲しそうな目と共に短い吐息を吐いていた。

「・・
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