「ふぅむ・・・」
魔術師リーグスは一階の扉のひとつを選択。中にはいると、縦横それぞれ50mほどのプールがある部屋だった。
扉の前には立て札が立っており、こう書かれていた。
『ハズレ。プールの底にある鍵でこの部屋から脱出可能』
どうやら、この部屋から館を脱出するのは不可能ではあるが、部屋を出ることは可能のようだ。
「『キーブレイク』(魔法による鍵を開ける魔法)は効かないし・・・どうやら、アレがいるらしいな・・・」
リーグスがプールに手をかざし、『ライト』の魔法で全体を光らせると、水色の液体の中で、プールの中心近くにある大きめの宝箱を見つけた。
(・・・ん?水色?)
リーグスが眉をしかめた。そう、プールの水が『水色』なのだ。無色透明ではない。と、すると・・・
(なにか溶かし込んであるのか?)
真っ先に考えられたのが、毒を溶かしてあるというトラップ。そこでリーグスは水を調べることにした。
リーグスは自分の髪を一本抜き取り、プールに落とした。自然と落ちて水面に髪の毛が浮くだけ。溶け出したりはしなかった。
「ふむ・・・中に入ったら溶ける、なんてことはなさそうだな」
リーグスは次に、自分の着ていたマントの端を、プールに浸した。水面にマントが浮き、じわじわと水が染みてゆく。
「衣服もクリア・・・なら、皮膚や血はどうかな・・・っ・・・ぷっ」
リーグスは、自分の手の甲を噛み切り、噛みちぎった皮膚と血をプールに吐き捨てた。皮膚と血も何も起こらず、皮膚は沈み、血は拡散していった。
(・・・なにもないのか?)
自分の思い過ごしかと思ったリーグスは、ゆっくりと足をつけてみた。
(なんだ、思ったより浅かった)
入ってみると、リーグスの膝下ほどしかない浅さだった。水を口に含む心配もないようだ。
(むぅ・・・トラップは別の場所か?)
水の中にスイッチがあり、それを踏んでしまうとトラップが発動するのかもしれない。そう思ったリーグスは、足元を注意深く、かつゆっくりとプールの中央まで歩いて行った・・・
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(・・・なんだ、なにもなかったぞ?)
リーグスの足はすでに鍵から5cmという場所についていた。リーグスは首を傾げてあちらこちらを見る。
(・・・水恐怖症の相手のみのトラップ?非効率すぎる気がするが・・・)
リーグスは、手を鍵に向けた。
「『キネレス』」
魔法を唱えると水の中にあった鍵がピクリと動き、リーグスがゆっくり手を上に引いていくと鍵もそれに従って動き、ちゃぽんという音ともに水面から脱して宙に浮いた。
「これで、ゲットだな」
宙に浮いた鍵を、リーグスが手に取った。
「あ〜ん。水に手を入れずに取るとか、卑怯ですぅ〜!」
間の抜けた声と共にリーグスの目の前の水面がせり上がり、リーグスの腰にしがみついた!
「なっ!?うっ。うわっ!!」
唐突にしがみつかれたリーグスはバランスを崩し、後ろ向きにプールに倒れてしまう。水の深さが浅いがために顔は水面につかなかったが、ハッと気づくと周りの水が次々せり上がってきた。
「あぅ〜、一時はどうなるかと思った〜」
「鍵を取るまで我慢して、結局逃げられちゃ〜、いやだよね〜」
「お姉ちゃん、ナイス〜・・・あれ?お姉ちゃん?お母さん?妹?ま、いいや〜」
(スライムの大群かっ!?水の色がおかしかったのは・・・)
そう。リーグスが思ったとおり、このプールの水が水色だったのは、スライムの体色に合わせてあったからなのだ。
「魔術師さん、ざ〜んね〜ん
#9829;」
「これから魔術師さんは〜
#9829;」
「私たちの旦那様になるのだ〜
#9829;」
スライムたちはニコニコ笑いながらリーグスを取り囲む。
「・・・悪いな、私はまだ、結婚する気は毛頭ない!」
リーグスがニヤリと笑うと、リーグスのマントに黄色い文字が浮かび上がった。
『ほぇ?』
「『スパークフィールド』!!!」
瞬間、マントから周りのスライムに強力な電撃が放たれた!!
『あばばばばばばばばばば!!??』
バチバチと広がる電撃に、スライムたちが漫画みたいな叫びをあげ、ぶくぶくと身体を鳴らしながら(?)ゆっくり倒れてしまった。
「・・・危なかった。防護用マントが取り上げられてなくてよかったな」
立ち上がったリーグスはそそくさとプールから上がり、扉に向かった。
「あぅ〜、待ってぇ、旦那様ぁ〜」
早くに回復したスライムがにゅるにゅるとリーグスの後を這ってきた。
「悪いが聞く耳を持たん」
リーグスは扉を開け、外に出た。
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『バタン』
扉を閉めて、リーグスは初めて
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