笑いを散りばめたインキュバスの校長の話、先生の紹介やら学校の基本的な規則やらの説明が終わったあと、俺、『ベルン・トリニティ』は新入生が詰め込まれていた体育館から出て歩きながら伸びをしていた。
・・・誰だ、今、姓が女みてぇつったやつは。
「くっ・・・あーぁ、疲れた・・・」
ぞろぞろと他の生徒たちが出てくる中、ひとりの男が俺の肩に腕をまわした。
「いよぉう!お疲れーっ!」
「お前疲れたのか?」
幼馴染の『ロック・サンドラ』だった。今回は自由席だったので、隣で座っていたのだが、こいつは途中からガッツリ寝ていた。出てくる時に起こさなかったが、気配で起きたらしいな。チッ。
「なんだよぅ。疲れたから寝たんだよ。てか、お前だって起こしてくれたらよかったのに」
「お前、俺が起こしたら不機嫌になるだろ。『野郎に起こされるシチュエーションなんて望んじゃいねーっ!』とか言って」
「んー・・・うん」
「肯定しやがったよ・・・とりあえず、俺らの組分け、見にいくぞ」
「おう!」
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体育館から離れ、校舎の廊下に張り出された組分け表を二人で眺める。
「ロック・・・ロック・・・お!『1ーA』だってよ」
「マジかよ・・・俺も『1ーA』だ」
えげつねぇ・・・これで小中高、さらにこの学校で13年間同じクラスだよ・・・
「ま、俺とお前は親友の絆で結ばれてるってわけだな!」
「キモッ」
「速攻でその反応!?」
さて、さっさと教室に移動するか。割り当て教室は・・・
「ちょ!無視はやめて!お前に無視されたら、俺みたいなお調子者はすぐハミゴだよぉ!」
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「それにしてもよぉ」
ロックが教室に向かう途中に話し始めた。
「俺たち、片田舎から出てきたから、魔物が多いこの環境に慣れるまで大変だろうな」
「・・・それもそうだな」
片田舎だからってわけでもないだろうが、うちの故郷には魔物が少なかった。たまに行商ゴブリンとかを見たくらいだ。
今や周りを見回せば同じように教室を探してたり、カップルでいちゃついたり、同じ種族や違う種族と話をしたりしている魔物がうじゃうじゃいる。落ち着かないってわけじゃないが、違和感は拭えない。ま、ここで寮生活だし、すぐ慣れるだろ。
「・・・すげぇな。可愛い娘が選り取り見取りだ」
「真っ先に思いつくのはそれかよ・・・」
「お前は可哀想だよなぁ。そのコワモテのせいで女の子寄り付きにくいから」
「黙れ」
顔を見られただけで子供に泣かれる目つきの悪さを願って産まれたわけじゃないやい。
「っと、ここじゃねぇか?」
ふと目に付いた教室の入り口上に『1ーA』というプレートが貼ってあった。
「お、じゃ、入ろうぜ」
「おう」
俺は教室の扉を開けた。
『ガラガラッ』
『ザワザワ・・・・・・ザワザワ』
俺が扉を開けると、中にいた生徒たちが一瞬みんなこっちを見たが、教師でないことを確認するとまた各々のやっていたことに戻った。
・・・一部の人は俺の顔にビクついていたが。
「お、自由席だってよ」
ロックの声に黒板を見ると、『自由席。勝手に座ってください♪』と可愛い字で書かれていた。
「お、お。この文字、女の人の字じゃねぇか?うっひょー♪うちの担任、女かよ♪どんな人かな!な!?」
「知らないしウザいし黙れ」
俺は特に思うこともなく、教卓の目の前の右の席に腰を下ろし、鞄を置いた。
「げ、お前、真ん前かよ?寝れないぜ?」
「俺は真面目に冒険者になりたいからな。授業を寝る気はない。というか、お前もてっきり前だと思った」
「は?なんで?」
「担任が女なら近くでまじまじと見たいとか言い出s」
「俺、お前の左隣な。ゆずらねぇから」
・・・俺はすでに席を取ってるんだが・・・
「ねぇ。キミ。隣いい?」
ふと、右側から声をかけられた。振り返ると、にっこり笑ったサキュバスが立っていた。
ブルーの髪、短めの角。やわらかい目つきに小さめの口。顔だけの見た目ならそんなにはっきりとサキュバスとは思えない童顔に近い顔だった。
ただ、この学校に制服はないため、服は胸や腹部がぱっくり開いた結構派手な服。さらに生足や腕を出している。オマケに翼や尻尾。これらを見れば完全にサキュバスだった。
「・・・どうぞ?」
「ありがとう♪」
サキュバスの彼女は俺の隣の席に座って鞄を机に置くと、前を向かずに身体ごと俺の方を向いた。
「私、『クラリア・リーベ』。キミは?」
「俺?あぁ、ベルン。ベルン・トリニティ」
「トリニティ?女の子みたいな姓だね」
・・・ほらね。いつも初対面で笑われるんだ。めんどくせぇ。
「あ、ごめん。怒らせちゃ
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