とある夫婦の昔話

とある廃鉱山。
とある理由から閉山されたここに、身長190はあろうかというガタイのいい一人の若者がピッケル片手に現れた。

「・・・よし、今日も頑張るか」

『立ち入りを禁ず』と書かれた立て札を無視し、元々入り口であったであろうトロッコの線路が続く横穴にカンテラ片手に入っていく。

「昨日は奥の右の坑道行って、突き当たりで掘ったんだよな・・・よし、今日は左の坑道行ってもっと奥まで行くか」

若者はふんっと踏ん張って意気込みを入れると、どんどん坑道の奥へ行った。

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彼がここに来たのは一度二度ではない。もう幾度となくここに来ており、毎回ピッケルを振るって採掘を行っていた。

「ふんっ!ふんっ!」

『ガキン!ガキン!』

「むぅ・・・中々でないな」

若者は採掘によって地面に落ちた石をひとつひとつ調べるが、どうやら目当てのものが出なかったようでため息を吐いた。

「くっ・・・もっと奥に行かないといけないか?・・・しかし、あんまり行くと『怪物』に会うかもしれないしな・・・」

若者は立ち上がって奥に続く闇の先を見て悩みはじめた。

『怪物』とは、この鉱山の閉鎖理由である。

しばらく前、鉱夫のひとりが闇の中で光る無数の目を見たと言ってパニックになった。さらに目がなんだと意気揚々と奥に真意を確かめに行った鉱夫が行ったっきり帰ってこず、様子を見に行くとカチンコチンに固まっていたのだという。これによって、鉱山には恐ろしい怪物が住むとされて閉山となったのだ。

ちなみに、若者はこの話を鉱山近くの村で聞いた。彼はその村の住人ではない。遠くからはるばる訪れた冒険者であった。

「うぐぐ・・・しかし・・・やるしかない!行くぞ!」

若者は、腹を括って奥に進んで行った・・・


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『・・・カキーン・・・カキーン・・・』


鉱山の奥の奥。
遠くから聞こえるピッケルの音に、暗い闇の中、もぞもぞと動く者がいた。

「・・・ぅるさいなぁ・・・せっかく寝てたのに・・・また鉱夫どもが採掘を始めたのかしら・・・」

闇の中、『ふたつの光』と『無数の小さな光』が瞬き、ずりずりと何かを引きずる音をたててピッケルの音のする方へと向かって行った。


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「・・・はぁ、一休みするか・・・」

ピッケルを置いて、いい具合に腰掛けれるほどの高さの石に座った若者が汗を拭く。

「くそ、一朝一夕では出ないとは思ってたが・・・一ヶ月かけても出ないとはな・・・間に合うかな・・・」

その時。

「・・・?なんだ、音?」

『・・・・・・』

「・・・気のせい・・・か?」

しかし若者は相当用心深かったのか、わざとカンテラを置いたまま、音がした気がしたのとは反対方向の通路の闇の中、岩の影に隠れた。

(・・・いや、やっぱり何か来るな・・・)

岩に隠れたまま地面に耳を当てると、わずかに音が聞こえた。

『・・・ずる・・・ずる・・・』

(なにかを引きずる音・・・まさか、『怪物』か!?)

若者はそーっと岩からわずかに顔を出し、カンテラより向こうの闇を見つめた。




『無数の小さな光』が見えた。




(っ!?)

その光は闇の向こうから徐々に近づき、やがてカンテラの光で明るくなった範囲へと入ってきた。



「・・・あら?誰もいない?」



光と思っていたのは、目だった。
キリッと引き締まった吊り目に、無数の蛇たちの目。それらが光を反射していたのだと若者は理解した。

彼女はメドゥーサだった。
顔は先ほど言った吊り目に薄い唇。少し小顔に仕上がっており、髪は薄いブルーのロング、髪の蛇たちに限っては若干濃くなっている。
少々男勝りな美人だった。

(・・・でか・・・)

しかし、若者が視線を奪われたのはその美貌の下、服に半分隠れた胸だった。服が小さいのか、はたまた中身がでかいのか(おそらく後者)、そのふたつの球体は上はしっかり隠れていたが、いわゆる『南半球』は露出していた。

「むぅ・・・でもピッケルはあるわね?また来るのかしら・・・よっ」

『むにゅぅ』

(うぉっ・・・)

メドゥーサが床に落ちていたピッケルを取る際、尻尾で取らずに前かがみになって取ったため、下向きになった乳が腕に圧迫されて形を変える。若者が、つい前のめりになりそうになった。

(・・・はっ!?いかんいかん!俺にはあの人がいるじゃないかっ!)

若者はまた岩に隠れてぶんぶんと頭を振った。


その時。


『シュ?シャ〜〜〜ッ!』

「ん?どうしたの?」

メドゥーサの頭の蛇が鳴く。その先には、若者が隠れた岩があった。

「・・・ふ〜ん・・・そりゃ!」


『ブゥン!ガキンッ!』
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