午前7時40分。
工房オヤカタ。
受付でぼーっとしてるエドがいた。
カランカラン♪
その時、正面の扉が開いた。
「いらっしゃ・・・お、今日は早めの出勤だな」
入ってきたのは、フォンとシェリーだった。
「あはは・・・ちょっと早めに起きてさ」
「え、えぇ。べ、別に何にもないわよ!?」
(ちょ、シェリー。それじゃ逆に感づかれるよ?)
エドが言ったことに対し、フォンは普通に返事したが、シェリーは顔を赤くしながら、慌てて否定した。なんも言ってないのに。
「・・・はぁん?なるほどぉ?」
エドがニヤニヤと笑う。
「ちょ、なによその笑いは!?」
「べっつにぃ?ただぁ?朝っぱらからお楽しみですね、と思いまして?」
「っ!?!!?」
「あはは・・・」
エドがシェリーをいじる。シェリーは真っ赤に染まった顔をもっと赤くして、頭から湯気を出す。フォンはと言えば、フォローを出すわけでもなく、困ったように苦笑いして頬を書いた。
「おぅ、来たか坊主」
「おはようございます、親方」
「ぱ、パパ、おはよぅ・・・」
奥の工房から親方が顔を出した。
フォンは以前より礼儀正しく(どちらかというと緊張気味?)挨拶をする。
シェリーは、赤い顔を俯いて隠しながら、尻すぼみな声でおはようの挨拶。
「・・・またいじめたのか、エド?」
ギロリと親方がエドを睨む。
ところがエドは反省する素振りを見せず、逆にもっと口角を吊り上げた。
「だってぇ?朝からイチャイチャラブラブ、さらにはナニしちまうようなカップル、いじらなきゅ失礼っつぅもんすよ」
「・・・なぁにぃ?」
すると今度は親方はフォンを睨み、ドスドスと足音を立てて近づく。
「・・・フォン、お前・・・」
「あ、あはは・・・」
くわっと目を見開いた親方は、勢いよくフォンの頭を掴み!
わしわしわしわしわし・・・
「よしよし、頑張ってるようだな。早くこの老いぼれに初孫の顔を見せてくれ」
「ちょっとパパ!?はっ、恥ずかしいこと言わないでよ!」
激しく頭を撫でて、褒めた。
「あ、はい、がんばります!」
「フォンも同意しない!」
フォンはぐっと拳を握って気合を入れる。
シェリーは顔を真っ赤っかにして手をわたわた振りながら二人に叫んでいる。
その様子をニヤニヤ笑いながら見つめるエド。
『平和な』工房オヤカタはいつも、こんな感じだ。
「さぁて、坊主、今日も仕事だ」
「はい、親方。じゃ、シェリー。迎えはいつも通りでいいからね」
親方がフォンを連れて奥の工房に入っていく。
「うん、じゃあね。エド、あんたフォンをこき使うんじゃないわよ?」
「へいへい、いつもこき使ってねぇよ」
そうしてシェリーが帰ろうと、振り返った。
カランカラン♪
「兄貴ぃ、フォンにぃ来てr・・・」
ビシィッ!
メリッサが入って来た瞬間。
空気が凍りついてヒビが入った。
「・・・あちゃぁ・・・」
エドが似合わない困り顔をして、頭を抱えた。
平和が終わった瞬間だった。
「・・・おはよう、メリッサぁ?」
「・・・おはよう、シェリーさん?」
お互い仁王立ちになり(シェリーについても)、正面に『敵』を見定めた。
ハタから見れば、現在の時点でシェリーが勝っている。
しかし、シェリーにとっては、現時点でも諦めてないメリッサは認めたくないライバルであった。
さらに魔物として備わる嫉妬深さが拍車をかけ、仕事中ずっと一緒のメリッサに対する警戒度もマックスメーター振り切りっぱなしだった。
メリッサにとっては言わずもがな。ずっと好きだった人をポッと出のヒロインに取られたような幼馴染ポジションの彼女。
しかしそれで黙ってないような勝気性格。一度折れても強化されて立ち直る根性。これらを武器に、フォンを取り返そうとしている。
では、もはや何回目かもわからぬ、工房オヤカタ内戦争。
勃発。
「メリッサ、アンタよくもまぁ来れるわねぇ?フォンにトドメさされる前に通うのやめたらぁ?」
「あらぁシェリーさん、今日もフォンにぃと出勤ですか?フォンにぃも大変ねぇ、荷物連れて仕事場来ないといけないんだから」
「荷物?あぁそうね。アンタみたいに殺虫剤のに回りを飛び回るハエみたいなしつこい女は特に荷物よねぇ!」
「ハエぇ?ハチの間違いじゃないのぉ?どこぞのヘビみたいにしつこくいらない世話焼いて無理やり夫にしちゃうような危険から追い払うた、め、の!」
「アンタがハチ?ハニービーやらホーネット族に失礼よ。アンタみたいな粘着女なんかデビルバグ以下の扱いを受けるべきなのよ!!」
「だったらアンタはよかったわねぇ!フォンにぃに情けかけられて、デビルバグ以下の扱いを受けなくて!!あんたほど粘着質じゃないからねぇ、
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