15日昼『いともたやすく行われる出来の悪いイベント』


「・・・う〜ん・・・」

ベルンは、寮を出て、街へと繰り出していた。


『あの堕天使はリーフ先生が管理するから、君は自由に休むといいよ』


昨日、校長にそう言われて安心したわけではないが、なにかあったらという心のどこかで思っていて中々行かなかった街に出てきたのだ。しかし、やはりまだカオスのことが頭に残っていた。

(・・・やっぱり、リーフ先生んとこに行ったほうがいいかなぁ・・・でもぶっちゃけ、あんまり関わりたくないんだよなぁ)

うんうん唸りながらうろうろしていたベルン。その時、ベルンに声がかかった。

「やぁ、ベルンくん。お久しぶりです」

「ん・・・お、ネフィアか。ホント久しぶりだな」

戦闘用ゴーレム(魔物娘ではない)に買い物袋の荷物を持たせたネフィアが、いつも通りのニコニコ顔で声をかけてきたのだが、ベルンの眉の寄った顔に首を傾げた。

「どうしたんですが?なにか、お悩みでも?」

「え・・・わ、わかるか?」

「顔が全部語ってくれてますよ。僕がお役に立てるなら、相談に乗りますよ?」

「あー、いや、大丈夫だ」

流石に生徒相手にアレの相談はよそう、そう思ったベルンは、話題を無理やり変えることにした。

「そ、そういや、ネフィアはどうしたんだ?買い物か?」

「まぁ、そんなとこです。といっても、買う目的は決まってなくて、いいものが見つかれば、という感じですが」

「そうなのか・・・俺もとりあえず、フラッと出てきただけだからなぁ」

「そうなんですか?てっきり、誰かと待ち合わせでもしてるのかと。ベルンくんは魔物にモテモテですから」

「・・・俺は結構苦労してんだけどな」

「ハハッ。確かに苦労してそうですよね。本当に・・・」

その時、ふとベルンはネフィアの発言に、違和感を感じた。しかし、何に感じたのかも分からず、追求はしなかった。

というか。
そんなことすることができぬほど激しい痛みが、ベルンの顔面を襲った。


「あだだだだだだだだだだだだだだだ!?」


まるで顔面を万力でつぶされるような痛みにベルンはたまらず絶叫し、ネフィアだけでなく周りの人々がギョッとベルンを見た。

「べ、ベルンくん!?」

「いででででででっ!?アイツ!?一体なにして!?いぃでででででででぇっ!!!」

あまりにもキツい痛みにベルンはドタバタと暴れだし、周りの人々もザワザワと騒ぎ始めた。

「か、彼は一体どうしたんだ?」
「す、すごい痛がってるけど・・・」
「おい誰か医者はいないか!?」

「べ、ベルンくん!落ち着いて!ちょっとした騒ぎになってますよ!!」

「んなこと言われたっでいだだだだ!?余計強くなっ・・・」

瞬間、ベルンはどこかがビシリと鳴ったような空耳を聞き、痛みに白目を剥き、バッタリと倒れこんでしまった・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(・・・・・・)

どこからか、声が聞こえる

(・・・・・ぶ)

ベルンが目を開けると

(・・・大丈夫)

目の前に、誰かがいた

(貴方は、まだ死にません)

誰かは分からない。見たこともない

(私が、貴方を護りますから)

彼女は、ベルンの頭を撫でた


(いずれ彼ととも・・・『断罪』を・・・)


彼女は、ニコリと笑った

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「あら、気がついた?」


ベルンが目を覚ますと、目の前に見たことのある、一本の角を生やした女性がいた。

「・・・へ?貴女は・・・」

「また会えたわね。君は怪我しやすいのかしら?」

それは、先週の冒険講習で会ったユニコーンであった。ベルンがキョロキョロと見回すと、どこかの部屋のベッドに寝かされていたようだった。

「え、えと、事情が理解できないんですが・・・」

「君が倒れて騒ぎになって、私が通りかかって、居住区の私の部屋に連れてきたの。あ、お友達は用事を思い出したって帰ったわ」

「・・・すいませんでした」

ベルンがベッドから起き上がり謝ると、ユニコーンはニコリと笑ったまま、指を振った。

「じゃあ、ひとつ。お礼をしてもらおうかしら。私を、リクラスト学園の、保健室まで連れてってくれない?」

「へ?なんで・・・」

「君たちが帰った後、えーと、校長先生が来てくださってね?『貴女の治癒能力を我が生徒の為に使ってくれまいか!』って言われたの。あの森、いずれは魔界になっちゃうだろうから、こっちに引っ越すついでに、OKしたの。家賃なしで、お給金も出してくれるって、破格の条件をつけてくれたのよ、校長先生
hearts;」

ユニコーンが校長の真似混じりに説明すると、ベルンは校長の行動力にポカンとしてしまう。
そして、ユニコーンはスッと手を差し出した。

「私、『コニア』っていうの。よろしく
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