『旅の恥はかき捨て』とはジパングでよく言われた言葉であるが、ジパング出身の生徒会役員、天月は、今、その言葉の信憑性を疑っていた。
「クロエせんぱ〜い・・・」
「ぷーんっ!」
昨日の探索から帰って来てからも、クロエの機嫌は全くといってよくなってなかった。まぁ、事故とはいえあんな恥をかいたのだ。簡単には許してくれないであろう。
しかし・・・
「しくしくしくしくしく・・・」
それまで天月の精神が持つかが問題である。
「・・・ふっ」
部屋の中で山のような書類(スピードが遅くて前日分が処理できてないだけ)に囲まれたサリスが、虚しくむせび泣く天月を鼻で笑った。
ちなみに天月たちは生徒会室におり、サリスの作業を手伝っていた。
「サリスもさっさとやるの!」
「・・・クロエがやれば、すぐ終わるのに・・・」
「サリスの罰だからダメ!」
「(′・ω・)」
しかし少なからずサリスに対するクロエの態度も厳しくなっているあたり、結構怒っていることが伺え、これは本当に下手するとなかなか仲直りできないかもしれなかった。
「失礼するぞ・・・」
その時、部屋に少々やつれたリーフが入ってきた。クロエがびくんと反応し、リーフの顔を見るなりサッと顔を青くした。
「りっ、リーフ先生!どうされたんですか!?すごく顔色が悪いですよ!?」
「・・・ストレスによる不眠だ。しばらく私は四六時中不機嫌になるから注意しろ。どれくらいというと自分の罰をクロエに手伝わせていたという疑いを調べもせずに確定させてサリスの罰を二割増しにするくらいにだ」
リーフの細目の先がサリスに向き、サリスは『やってしまった・・・』と言わんばかりの慌てた顔をし、珍しく汗を垂らしていた。
「・・・クロエ、あと、天月。悪いが、お前らにこの新入生の『お守り』を任せたい」
「・・・おもり?」
天月が首を傾げると、リーフの後ろで黙っていた、ダークエンジェルがニヤニヤしながらリーフの肩に肘をついた。(もちろん、羽で飛びながら)
「オイオイ、リーフ先生よォ。自分の手に負えねェからって生徒に任せんのはイケないと思うんですがねェ?」
「・・・貴様の管理を私一人でやるのはあまりにもハードワークだ・・・こういうのは逆に無知な者に任せる方がいい・・・」
「要は敵前逃亡ってわけだ!ギャハハハハハハハ!」
「・・・また胃が痛くなってきた・・・」
まるで悪党みたいな笑い方をするダークエンジェル、カオス相手に、リーフはこめかみとお腹を押さえる。そしてカオスを無視して、クロエと天月に要件を告げた。
「しばらくコイツを見張るように。なにかやったらとりあえず制止しろ。問答無用で殴りかかったりするんじゃないぞ。いいか、絶対手を出したりするんじゃないぞ」
「は、はい!わかりまひた!」
「・・・御意」
クロエと天月が了承すると、リーフは部屋を出て行った。その後ろ姿にヒラヒラと手を振りながら、カオスはニヤニヤ笑っていた。
「ギャハハハ。なんかしっかりしてそうだったが、案外脆かったなァ。とりあえずイジリ要員、一人確保だなw」
「え、えぇ〜と、あの〜・・・」
「・・・ん〜?」
ゲラゲラ笑っているカオスに声をかけたクロエは、にっこり笑って手を差し出した。
「わ、私、3回生のクロエ・シャガーナっていいます。生徒会長、やらしてもらってます。新入生でしたよね?ようこそ、リクラスト学園へ!」
クロエは優しく、満面の笑みで、握手のためにカオスに手を差し出した。
(・・・可愛い
#9829;)
(会長マジ天使ッ!!!)
いつも通り、サリスと天月はハートを射抜かれたわけだったが・・・
「・・・先輩、威厳ないっすねェw」
「・・・へ?」
『ビキィッ!』
カオスのヘラヘラ笑い混じりの発言に、クロエはキョトンとし、後ろ二人の額に青筋が音を立てて刻まれた。
「つーか先輩だったんすかって感じですねェw最初視界に入った時はなんでガキがここにいるのかわかんなかったっすよォwしかしまぁなんというかァ、先輩が生徒会長やってるっつーのは意外ですねェ。こんな下等劣種の魔物なのに。ギャハハハハハハハ!」
もう読者にはありありと予想できるだろうが、息を吐くかのごとく言われるカオスの悪口に、クロエはもう目をうるうるさせ、差し出した手がぷるぷる震えて今にもわんわん泣き出しそうだった。
「オマケに・・・」
「そこまでにしろ糞鴉」
「おォ?」
その時、クロエをずいっと押しのけ、刀を鞘から抜いた天月がクロエの前に立った。
「サリス殿・・・会長を頼みますよ・・・久しぶりに・・・怒髪天を、衝いてしまったでござる」
「・・・言ってる意味はわかんないけど・・・許す」
「え・・・あの・・・」
涙声でクロエが制止
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