最初は評価に不満を持ったさ。
まだ未熟な生徒である俺にバフォメットの魔法を止めろって?無茶いうなってんだ。
『罰として・・・用事を手伝うこと』
だから話も馬耳東風のつもりで聞き流してたんだが、罰として出されたことに耳を疑った。
『一週間の休みを潰されて不満か?言っておくが、怠慢は成績評価に響くと心得ておけ』
だから聞き返したのさ。あぁ聞き返したさ。罰が罰に聞こえなかったんだからな。
『なに?聞いてなかった?全く・・・わかった、もう一度言うぞ』
だから、あの教師の言葉に、今度は感謝しか持たなかったさ。
『緋夜 天月。罰として、クロエに任せた用事を手伝うこと。来週は休暇週間である。しっかりみっちり打ち込むこと。以上』
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[魔熱の森林]
(Level 30)
魔界のとある地域、薄暗く日の光が十分に差し込まないにも関わらず、一年を通して湿度が高く、じめじめした暑さを持つ森林地帯が、この魔熱の森林である。
「暑いね〜、天月くぅん・・・」
その森林の中で足元おぼつかず歩くクロエが、汗を拭きながら呻くように言った。
「大丈夫ですか、会長。足元、注意してください」
薄暗い足元を照らすランタンを持って先を行く天月は、始終クロエを気にかけ、注意しながら歩いていた。その顔に汗は少なく、爽やかな微笑をたたえていた。
「天月くん、あんまり汗かいてないね」
「ジパングでは『心頭滅却すれば火もまた涼し』と言いまして、己が精神を鍛えれば、暑さも気にならなくなるんですよ」
「へぇ〜・・・私は無理ぃ・・・」
クロエが汗を拭き、ついでに服の襟元をぱたぱたと引っ張って仰いだ。
瞬間、天月の眉毛がピクリと動いた。
(会長ぉぉぉぉぉいぃぃぃぃぃぃえぇぇぇあぁぁぁっ!!!汗かいてただでさえ会長の魅力が上がっているのに暑いからって襟元を引っ張ったら拙者との身長差から先輩の下着がチラ見えしているんですがなんですかそれは天然なんですかそれともまさか拙者を誘ってるんですかていうか黒の下着とか妖艶すぎやしませんか拙者先輩はもっと明るい色の可愛らしい下着かと思っておりました否今の下着の方が愛らしいというか拙者の理性を一刀両断するには素ん晴らしい破壊力を持っておりましてそんな下着で迫られたら拙者武士としてのすべてを脱ぎ捨てて暴漢のように貴女を貪り尽くし・・・いかんいかんいかん!!!冷静になれ緋夜天月!!ここは心頭滅却、心を無にして我を抑え込むのだ・・・ッッッ!!!)
(天月、心の声。この間2秒)
天月は痙攣する眉毛をなんとか抑え込み、クロエに手を差し伸べた。
「さぁ、先輩、行きましょう。目的地はまだ先ですよ?」
「・・・天月くん?ちょっと、休も?のぼせて、鼻血出てるよ?」
ハッとした天月が自分の鼻を触って手のひらを見ると、見事に自分の鼻血で手が染まっていた。
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「大丈夫?天月くん?」
「・・・情けない」
二人は大木に背を預けており、天月は鼻を抑え、クロエは天月を手短かにあった大きな葉っぱで扇いでいた。
「のぼせてしまうくらい、我慢しなくていいんだよ?」
「・・・はい」
(九割九分九厘、原因は会長なんですが)
やっと鼻血が止まってきたころ、ふとクロエがソワソワしだし、立ち上がった。
「天月くん。ちょ、ちょ〜っと私、あっち行ってくるから、休んでて?」
「え?いや、ついていきま・・・」
「だめ!休んでて!絶対だよ!絶対だからね!!!」
いきなり声を荒げて走っていってしまったクロエにポカンとしながら、天月は座ったままだった。
「・・・な、なんなんだ?」
首を傾げた天月だったが・・・
「・・・きゃ〜・・・」
「会長ッ!?」
しばらくして微かに聞こえた叫び声に天月はすぐさま駆け出した。
声のした方向へ走ると、クロエが尻餅をつき、ベルゼブブに迫られていた。
「いいじゃない、ちょっとくらいさぁ〜同じ魔物じゃんか〜」
「いっ、いやだよ!」
「なにしてやがんだこの蝿畜生がっ!」
女性に対しあるまじき発言とともに、天月はベルゼブブに飛び膝蹴りをかました!
「んげぶっ!?うげっ、彼氏つき!?」
「肯定したいが涙を飲みつつまだ彼氏ではないと言っておく!!」
「チィッ、久しぶりの上質な食事だと思ったのに!」
捨て台詞を残し、ベルゼブブは羽を使って素早く去ってしまった。すると天月はふぅと一息吐いてからクロエに向き直った。
「会長、お怪我はありまs」
その時。
天月は、クロエの背後から来たので、気づいてなかったのだ。
「・・・せ、ん、か・・・」(天月)
「・・・・・・あ、あぅ・・・」(クロエ)
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