10日目『ベルン、こいつは化け物か!?』

[ガーゴイル寮 312号室]


「・・・んん?」


ベルンが目を覚ますと、自分が自室のベッドで寝ていることに気がついた。真っ先に考えたのは『どうしてここにいるのか』だった。

「・・・昨日、襲われたあと、どうしたんだっけか?」

体を起こし、首を捻るがまったく思い出せない。三人にボコられて自分が倒れてからの記憶がなかった。

「・・・ま、いいか。とりあえず着替えよう」

しかしあまり気にも止めず、ベルンはそそくさと服を着替え、いつも通りに部屋を出て食堂へ向かった。

すぐに、ベルンはこの疑問を忘れてしまった・・・


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[巨大食堂、もふもふ亭]


食堂に着いたベルンは、ふと『思い出した』。

「・・・あ、茜先輩にお金払わないと」

ベルンはまっすぐ茜が店番をする蕎麦屋に向かった。

「茜先輩、おはようございます」

「ん?あ、おはようさん。今日はなに食べるん?」

茜がそう言うと、ベルンは自分の財布を取り出しながら言った。

「えと・・・タヌキソバと、あと、これ、昨日のお代です」

「お、あんがとさん。狸蕎麦ひとつー」

茜がベルンの注文を奥にいる母親に言った後、茜はベルンに尋ねた。

「そういやあんさん、昨日はどうしたん?えらい不機嫌やったけど」

「え?」

「ほら、うちがお代求めた時よ。あんた、うちをこ〜んなキッツい目で睨みながら、不機嫌そうに言うたやん」

茜が目尻を指で釣り上げながら、おそらくベルンの真似をしながらそう言うと、ベルンはちらと記憶がないことを思い出したが、『適当にごまかした』。

「あぁ、ちょっと、虫の居所が悪かったんですよ。ごめんなさい」

「ん〜、ま、えぇけどな〜。はい、狸蕎麦おまち!おぉきにな〜」

茜から手元のトレイに蕎麦を置いたベルンは、トレイを持って席に向かい、首をかしげた。

(・・・なんで記憶がないんだ?というか、なんでさっきサラリと誤魔化したんだろ?)

まるで、台詞が決まっていたお芝居のワンシーンようにするりと出た言い訳。それに疑問を抱いたベルンだったが、とある席に腰掛ける人物を見てギョッとした。

「・・・ろ、ろ、ロック!?」

席に座っていたロックはぽかんと口を開け、その口からは白いなにかが抜け出ようとしていた。

「おい!どうしたんだよ!?ロック!ロック!!」

ベルンが揺すると、ロックはハッとしたように身体をビクつかせ、口から出てたものを引っ込ませてベルンを見た。

「・・・あ、あぁ、ベルンか・・・」

「一体どうしたんだよ?お前、魂が抜けたみたいになってたぞ?」

「・・・あぁ、うん・・・ちょっと、色々あってな・・・」

ロックはがっくりと首を垂れ、ずぅ〜んと空気を重くした。わけもわからず慌てるベルンの後ろから、声がかかった。

「なんじゃ、まーだ沈んでおるのか、『主』」

「あ、バルフォス」

「黙れこのロリババァ!◯ね!誰が主だ訂正しろッ!!!」

バルフォスの一言にロックが態度を一変させ、唾を飛ばしてまくし立てた。ちなみにバルフォスは自分のトレイにロックの唾がかからないよサッとかわしていた。

「・・・主?」

「昨日、不可抗力での。主と我は一夜の契りを結b」

「おがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「・・・まぁ、夜伽をしたわけじゃ」

「詳しく言うんじゃねぇぇぇよぉぉぉっ!!!」

ロックが頭をガンガンと机に打ちつける横で、ベルンはひくひくと口を引きつらせた。

「そ、そうか・・・ロック・・・」

「やめろベルン!見るな!『こいつ本当は真性の変態だったんだな』みたいな目をするなぁぁぁっ!!」

「いやっ!ほら、契約上の弊害じゃねぇか!気にするな!ほら、あれだって!飼い犬に手を噛まれるみたいな・・・」

「こんなマイナスレッテルしかつかねぇ飼い犬いらねぇよぉぉぉぉぉぉっ!!」

ロックのヘッドバンドが机を叩き割りそうなことになりはじめていた。

「・・・ま、坊主には関係ないからの。気にするでない」

「・・・バルフォスは気にしてないのか?」

「もう過ぎたことにギャーギャー騒ぐことはせぬ。ま、人間とやることに抵抗はあったが、元から我は両刀だったからの。一度やってしまえばもう諦めがつくわい」

(・・・なんかポツリと変な告白があった気が・・・)

「ぬがぁぁぁぁぁぁっ!!」

暴れるロックを側におき、ベルンは朝飯をすませた。


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[学校・廊下]

本日のベルンの授業は2・4コマ。ロックらと別れ、ベルンはふらふらとひとりで廊下を歩いていた。

(暇だな・・・どうすっかな・・・)

うろついていたベルンだったが、ふと廊下の先にいる女性を見て、足を止めた。

「げっ・・・」

「・・・」

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