九日目、夜『ロックの夜と、ベルンの夢』



[メロウ寮、721号室]

火曜日、ロックは授業を休んでしまった。
なぜならば。


(・・・か、身体が動かねぇ・・・)


彼の体調が芳しくない、というより、死にかけていたのだ。
ソファーで仰向けになって休んでるロックが、脇に挟んであった体温計を取り出した。

「・・・36.4?こんなだりぃのに・・・」

指にさえ力が入らないのか、枕元のミニテーブルに置くことさえせず体温計をポロリと落とす。カツンと金属質な落下音がした。

「・・・おい、ロリ、無事か・・・?」

「・・・喧しい。喋るのも億劫じゃ。黙れ・・・」

さらにバルフォスまでぐったりしていた。彼女と比べて大きすぎるダブルベッドの真ん中で、バルフォスがうつ伏せで両手両足を投げ出して倒れていた。
ふたりとも激しい疲労と倦怠感を訴えており、朝から何もせず、部屋で休んでいたのだ。
そして、ふたりはこれの原因がなにか、薄々気づいてはいた。が、お互い認めたくなかったのだ。

「・・・おい、ロリ・・・」

「・・・なんじゃ、小僧・・・」

「・・・しんどい・・・」

「・・・我もじゃ、ド阿呆・・・」

そう、これの原因は紛れもなく・・・



(・・・もしかしなくても、魔力不足だよなぁ・・・)
(・・・どう考えても、魔力不足しかないのぅ・・・)



二人とも、口には出さないが、心の中では分かっていた。
しかし、お互い『セックスしよう』などと、口が裂けても言えなかった。
その時、部屋の扉がノックされた。

「こんにちわ〜♪保健室からの出張ダークプリーストで〜す♪」

ニコニコ笑いながら入って来たのは、あの保健室の変態プリーストだった。
入った途端、いきなりベッドの横に行き、ベッドに救急箱を置いて中身を開けた。

「お、おぉ・・・て、天使が現れた・・・?」

「・・・なんじゃ貴様・・・我らに何の用じゃ・・・」

ロックはソファから必死に手を伸ばしてダークプリーストに触れようとし、バルフォスはギロリとダークプリーストを睨んだ。すると、ダークプリーストはぷんぷんと怒り始めた。

「もうっ、ダメですよぅ?ふたりとも、エッチなんて気持ちいいこと嫌がってちゃあ!」

するとふたりともビクリと震えた。
さらにダークプリーストは救急箱・・・と、思われていた箱からフラスコを多数取り出し、色んな色の薬?を新しいフラスコ2つにそれぞれ入れて混ぜ始めた。

「校長先生とファ先生から事情を聞いたんです。もう、倒れるまで我慢したらダメですよ!第一、エッチのなにが嫌なんですか!?エッチというのは堕落神様の与えもうた素晴らしき産物で(うんぬんかんぬん)・・・」

ダークプリーストが語り始める横で、ロックもバルフォスもぐったりしていた。

(いくらなんでも、ロリとはやりたかねぇんだよ・・・)
(人間のオスなんかとやりたくはないわい・・・)

そう思っていると、ダークプリーストの手元でポンッと小さな爆発音がした。

「できました♪さぁ、バルフォスちゃん、どうぞ♪」

「・・・なんじゃ、それは・・・?」

「魔力補給剤ですよ。飲んでください♪あ、ロックくんはこっちですよ」

ダークプリーストがふたりに作った薬?を渡した。

「・・・なんか、ロリの薬と色違う気がするんすけど?」

「人間用と魔物用で違うんですよ♪では、お大事に〜♪」

なぜかダークプリーストはニコニコ笑ったままそそくさと部屋を出て行ってしまった。ロックはあぁ、と虚しそうな声を出してションボリしたが、バルフォスはふぅと疲れたようにため息を吐いた。

「やれやれ・・・これで少しでもマシになればいいわい」

「と、とりあえず飲むか・・・」

ふたりは、ほぼ同時に薬を飲んだ。


『ゴクン』


『ドクンッ・・・』


「うぐっ・・・?」

突如、バルフォスは身体に異変を覚えた。
身体が少し軽くなったのはいいとして、急に身体が熱くなり、身体がモジモジし始めた。

「あ、あぅ・・・くっ・・・」
(あ、熱い・・・身体が、いや、これは・・・っ)

バルフォスが息を荒くして悶えていると、ロックがむくりとソファから起き上がった。

「くっ・・・お、おい、人間。あのダークプリースト、薬に一服、盛って行ったよう・・・お、おい?」

「・・・・・・」

バルフォスは気づいた。ロックの目が怪しく光り、息を荒げていたことに。



『人間用と魔物用で違うんですよ♪』



あの違うは、『色』だけではなかったのである。

「お、おい!貴様!幼体には興味ないのだろうが!?お、落ち着・・・うわっ!?」

ロックがベッドで後ずさったバルフォスの上に覆いかぶさった。ロックの鼻息は荒く、目はギラギラしており、明らかに興奮の色に染まっていた。

「や、やめんか阿保!馴れ馴れしく我に・・・んむ
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