まぁ、仕方のないことだと思う。
俺たちは傭兵だ。
名誉でも人望でもなく、ただその腕のみを望まれていたのだ。なのにやることと言ったら背後からの不意打ち、闇討ち。決して多くの兵を倒せるような戦い方ではないし、敵の偉いやつらは強いやつらに囲まれていて俺たちには手におえない。大した成果もない傭兵を雇ってくれる奴なんてそういやしない。だから、
(こんなことになるとはな…)
魔物との戦いなんて、危険な橋を渡るはめになるのは、仕方のないことだ…
(やべーって、まじやべーって!!無理無理無理!魔物とか無理!)
ほかの屈強な傭兵たちに混ざって身を縮こまって思う。
(でもっ、でもっ!もうメシ買う金ねぇし…っクソ!)
今日傭兵たちで集まったのはそれぞれの役回りを決めるためだ。強いやつらや信頼されている奴らは本隊の騎士団と轡を並べて戦うこともあるという。まぁ俺には縁のない話か…
(頼む!囮とか最前線とか殿とかはやめてくれぇ…っ!)
ともあれ、今日の決定で戦死かメシか決まるわけだ。
(よ、よし、深呼吸だ…)
「おい」
(ひっひっふぅー、ひっひっふぅー)
「おい、そこのお前!」
(違う違う!!ヒッヒッヒッ、ヒッヒッヒッ、ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ)
「おい、そこのお前だ!」
「ヒッ!?」
「ったく何回呼ばせやがる…」
「あっ、は、はいっ!す、スイマセン…」
「ほい、お前は拷問担当だ」
「はっ!……は?」
「戦が終わるまで本陣で小間使い。勝利に終わったらお前があいつらを拷問して吐かせろ」
「はっ、はい!」
「よし、次ぃ!」
(よ、よかった…一番安全なんじゃね…?)
拷問なんぞやったことないがこれはなかなかの引きの良さ。これはいい予感がする
(魔物なんか、スゲー強エェらしいし…前線とか正気とは思えないな…)
ともあれ、まずは後方支援。安全な職場に文句などあろうはずがない。
〜戦場〜
「うおおおおおおおおおっ!」
「20mm先にガチムチ系の男くさい男発見!だれか!」
「よし!ここは私が!」
「いや!私だ!」
「いやいや、ここは俺に任せろぉぉ!」
〜後方〜
「あら〜、ジャガイモ剥くのうまいわねェ〜」
「あ、はい。そっすか?」
「ええ、うちの騎士団たちなんて修道女のこと小間使いか何かと勘違いしているんじゃないかしらねぇ〜」
『ちょっと〜!前線の男ども帰ってきたから洗濯物たくさん〜!だれか〜!』
「あら、じゃあ行ってきてもらえる?」
「あ、いいんですか?」
「いいわよ。さぁ、行った行った!!」
「は、はい!」
タッタッタッ
「……出家する前の最後の恋…思い出すわねぇ…」
ガタッ!ガタガタッ!!ガッ『ちょ…あっ…小指ぶつけた…』
「こら!あなたたち!働きなさい!」
「は、はい!マザー!」
〜終戦〜
「此度の戦、われわれの勝利であった!!」
『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉ!!』
歓声が本陣を覆い尽くす。まぁ敵の人数が少ないこともあったのだろうが、ともあれ勝利だ。
「では、今宵は存分に飲み食らえ!」
しかし俺は後方担当、ここでは給仕が仕事だ
「おい!さけ!酒!」
「あっ、はっはい!」
「うむ。…ところでおぬし…」
「はっ!なんでありましょうか!」
「なかなか良いケツを…」
「おぉ〜い、こっちにポテト〜」(50mくらいはなれたところから蚊の鳴くような声)
「はっ!!ただ今!!」
「おい。どうじゃワシと一晩…」
「ただいまぁぁぁぁ!!!!」
ふぅ、所詮ここも戦場か……
〜翌日〜
さて、昨日の残り物でもかなり豪勢に残っていたし、それ喰って仕事仕事〜
(おう、ここか…)
重苦しい鉄のドア
その向こうには捕獲された魔物がいる。それもかなり上位の存在だそうだ。
(怖ぇ〜、しかももし脱出されたら……)
何回引き裂かれることか、知れたものではない(と思っている)
でもこれが俺の仕事!がんばらないと
ガチャ
「貴様っ!この卑怯者!首も獲らずにいたぶり楽しむ鬼畜めっ!」
開けて早々罵られる。綺麗な声をしているうえに言葉の内容もまっすぐなので気品が残っているように感じられた。
「おいおい、もっと下手に出ろよ〜。拷問の仕事は情報を聞き出すことだけど聞き出した後でいたぶるのやめるかどうかは俺次第なんだぜ〜?」
実のところこれは嘘だ。実際は即座に処刑するためにすぐに情報を上にあげなければならない。どっちもろくなことはないが…
(しかし、完全に悪役だなぁ。なんか若干へこむわ)
自分に変な正義感があることに驚きながら思案する。ふむ…
(まぁ、まずは道具を使うようなえぐいのはやめて、ソフトな方から少しずつやっていこう)
最小の苦痛で終わらせてやりたいと感じていた彼はまず跡が残らない程度のビンタから始
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