夕暮れがもうそろそろ沈み出す頃、俺は駅に向かう道を思いっきり走っていた。服装が乱れており周りの人が俺の方に視線を向ける。しかし、俺にとってはそんなのはどうでも良いのだ。
事の発端は数分前に戻る。
「・・・嘘だろ、これ」
仕事を終えて速攻に帰ってきた俺は、手に持っている紙を掴みながら呆然と立っていた。その紙には『実家に帰らせてい頂きます』との文字が綴られている。
「実家って、そうだ電話しよう」
慌てて携帯を取り出して彼女に連絡を入れる。・・が何回も出てくるのは留守番電話ばかりで不安と焦りが高まっていった。その間俺は朝の出来事を思い出していた。あれは俺が会社に行く前の事、エイプリルフールだから少しばかりいじめてみた。
「旦那様、今日はどのようなお食事をご用意致しますか?」
「・・・いや、今日は久しぶりに外で食べてくるよ」
「!!!」
「それに今日は遅くなるし、先に寝てなよ」
そう言って俺は家を出て行った。扉を思いっきり閉じたのも覚えている。いつもは頭を撫でるとかキスとかをするのだが今日に限ってあんなことをしてしまった。
息を切らしながらも駅に到着した頃には、辺りを闇が染まり街の光が輝き始めている。
「彼女の家はここからそんなに遠くないはずだ。今から行けばまだ色々間に合う」
「・・・旦那様?どちらかにお出掛けですか?」
意気込んで駅に歩もうとした時、聞き慣れた声が耳に入ってきた。その声の方を見るとそこには最愛の彼女が立っていた。そのあと俺は何も言わずに彼女を抱き締めたのは言わなくても解ることだ。
「実家に帰ったのは俺のため?」
「はい。私の料理の腕が悪いため旦那様が食事に飽きたんではと思ったので実家に戻って勉強しに行ったのです」
帰り途中、俺は朝の出来事を詫びるのと同時にあのメモの事を聞いてみた。その結果、思ってもいない答えが帰ってきたので罪悪感が俺の胸に突き刺さった。だってそうだろ。あんなこと言ったんだし、でも彼女はあまり気にしてはいないようだった。
「だけど今日がエイプリルフールだったのを忘れていましたよ。・・・そうだこのままどこかでご飯にしましょうよ。勿論、旦那様持ちですよね?」
そう言うと彼女は俺の腕に腕を回して一緒に歩いた。俺は小さくゴメンというが笑って許してくれた。
「旦那様。今日が冗談で済んでしまう日でも私の旦那様に対する愛は無くなることはありません。なので、安心して私を愛してくださいね
#10084;」
後日、俺は彼女の親に呼び出しを食らったのは言うまでもない
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