マルクの復讐

若い技術者マルクは最近泥棒に悩まされていた。帰宅すると、彼が気に入っているカップや仕事に使うペンなどが家から消えている。いつもマルクは、最初は失くしたのかと思い、まず自分が無意識に置きそうな場所を探すが、発見には至らず、探す範囲が次第に家中に広がっていく内に、「盗まれたのやも」という考えが頭をよぎるようになる。しかし、それはあくまで疑念の域を出なかった。カップもペンも、マルク個人が気に入っているというだけで、別段珍しいものでもなんでもなく、近所の店で簡単に手に入る。そして値段も高価な訳ではない。そんなものをわざわざ盗む者がいるとはどうも思えなかった。だからマルクの疑念が確信に変わったのはつい最近のことだった。無理もあるまい。そうでなければ、自分は椅子まで失くす世紀の大馬鹿者ということになる。それからまもなく、マルクはその泥棒の腕が凄まじいことを思い知らされた。ある日、彼が書斎で読書をしながら紅茶を飲んでいる時だった。読み終えた本を本棚に戻し、次の本を取り出しているその間に、買い直したカップが紅茶ごと消え失せていた。ハッとして見上げると、そういえば窓を開けっ放しにしていた。マルクはもはや恐れさえ抱きそうだった。彼が机を立って戻る長くても数十秒間に、泥棒は物音一つ立てず仕事を終えたのだ。

腹を煮え立たせたマルクはどうにか泥棒をとっ捕まえて屈服させようと画策していた。凄まじい腕の持ち主の癖に、獲物がカップだのペンだの椅子だのというのは、どうもバカにされているような気がしてならないのだ。しかし、一筋縄では捕獲に至ることは無理だろう。実際自分のすぐそばで犯行が行われたにも関わらず、マルクはその姿すら見れずにいる。今は家中の窓や扉を閉めて鍵を掛けているが、これは気休めにしかならない。そもそも相手は留守中を狙っていたのだから、その気になればすぐに開錠されてしまうということだ。あの手この手を考えてみたが、名案と言えるものは思い浮かばず、とりあえず監視カメラを仕掛けるのみに留まった。翌日、マルクが帰宅すると、早速書斎からペンが消えていた。マルクはしかめ面をして、書斎を録画していた監視カメラの映像を確認した。それを見たマルクは思わず叫び声をあげた。
「な、なんということだ」
映っていたのは悪名高きブラックハーピーであった。ハーピー種の中でもやや凶暴なその種族は、積極的に人間を襲い、盗みを働くものも多いという噂は、マルクも耳にしていた。犯人がそのブラックハーピーというのは実に都合の悪い事実だった。相手は翼を持ち陸海空を制するのだ。地上を走るのが精一杯の人間では文字通りに次元が違う、追いつくなど不可能に違いない。ならばとマルクは考える。追いつけないのであれば、そもそも逃げられなければいい。つまり罠を張るのだ。しかし、生半可な罠にかかってくれる相手ではないだろう。ブラックハーピーの弱点を的確に突くような、そんな罠が最適だ。マルクは必死で文献を漁りその弱点を探す。そして遂に、憎き泥棒を成敗する方法を探り当てた。
「ブラックハーピーとはいえ魔物、性衝動には逆らえないはず。奴を無理矢理に強く発情させれば逃げることは叶うまい」
マルクはすぐにその仕掛けの製作に取り掛かった。ある特殊な電磁波を発生させる装置で、魔物がそれを受ければたちまち発情期のような強い性欲が身体を支配するものだった。これとセンサーを連動させ、マルクは家のいたるところに設置した。

一週間後、マルクは計画の実行に移った。仕掛けのスイッチを入れ、以前と同じように家中の窓や扉を施錠し、自分は物置に閉じこもった。あくまで自分は外出していると装うためだ。気配を消し窮屈さにじっと耐え忍んでいると、持っている小型のブザーが鳴り、何者かがセンサーに引っかかったことを知らせた。表示された場所は寝室だった。マルクが物置を飛び出して寝室の扉を開け放つと、思わず笑みがこぼれた。ブラックハーピーが、驚いたようにマルクを見ていた。
「ひっ!」
「やい、この野郎!散々人の持ち物を漁りやがって。どうだ動けまい。あの装置がお前の性欲を何十倍にも沸き立たせているのだ」
マルクはすかさずブラックハーピーを抱き上げ、ベッドに寝かせた。さあどうしてくれよう。そうだ、せっかく発情しているのだから、少しからかってやろう。マルクは小さな胸を包む布を引き剥がすと、その天辺を指先で弾く。
「んっ・・・!」
ブラックハーピーは思わず声をあげた。マルクはニヤリと顔を歪め、同じ場所を指先でさらに弄ぶ。彼女から漏れる声が大きくなり、快感と欲望が満たされぬ渇きに耐えるように、その身体をよじらせる。マルクはますます面白くなり、指での愛撫をやめてその胸を口に含んだ。硬直した突起を甘噛みし、舌で転がす。頭上からはさらに大きくなった彼女の鳴き声と荒い息遣いが
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33