私ことランス=ロットが住むこの国が中立国を名乗るようになって早五年、首都はおろか地方にまで魔物が自由に出入りし、人間と同様に外を歩いて魔物を見ぬ日は無いとまで言われるようになった。
かつて神を頂点とし、魔物を悪とするこの国がどうしてここまで変わり果てたのか。
理由は至極単純である。この国は勢力を拡大する魔物達と戦い、そして敗戦国となったのだ。人間と魔物の実力差は圧倒的、元々が勝ち目のない戦争だった。
だが王室や教会はそれだけでは終わらなかった。転んでもただでは起きない。敗戦による法改正の協議会に参加し、彼らは高らかとこう宣言した。
「我が国は今後一切魔物を敵と見なすことを止め、法からもその旨を全て削除致します」
協議はこの宣言と共に終了し、魔物達はほくほく顔で帰っていった。目的は殆どその一つだけだったのだから、当然ともいえる。
しかし、そもそもこの国の法において魔物に関することは、教典に従いそれを敵とする旨が記されているだけである。今まではそれで十分だったのだ。これを削除した今、法律に魔物の文字は一切存在しなくなった。これは何を意味するだろうか。
国が積極的に魔物を敵視することはないが、保護することも無い。つまり、目の敵にこそされないが、国民が勝手に彼女らに危害を加えてもそれは一切罰せられもしないということだ。上の奴ら、こういうときの言い逃れにはとんでもなく頭が回る。魔物を納得させたばかりか、自分は取り締まりも何にもせずに楽が出来るのだからな。
さて、いまやこの国では魔物に対してやりたい放題。煮ようが焼こうが好きにできるというわけだ。しかしその全ては自己責任の上に成り立っている。魔物に反撃されればそれまで、向こうだってこっちに何をしようが勝手なのだ。法律に魔物の文字は無い。ありもしないものに怪我や損害を受けたって、保障のしようがないではないか。
一部の熱心な狂信者達はこれ幸いと虐殺を繰り返しているらしいが、それでは縄張りを奪い取った獣とやってることが変わらない。面白半分で動物を殺す幼い子供とほぼ同レベル。全く嘆かわしく軽蔑すべき話だ。
私はそのような無益な行動は起こさない。奴らを殺してなんになるというのだ。それよりももっと良い方法を思いついたぞ。すぐに私は計画をもとに行動を起こした。善は急げ、もっとも道徳的に考えれば褒められたことではないだろうが、どうせ相手は魔物だ。そこは気にしないでも良いだろう。
私は街中を適当に歩き回る。いつにも増して人魔が入り乱れ、活気が満ちているようだった。これなら計画はすぐに果たせるだろう。私の狙いは、魔物を捕まえて奴隷にすることだ。古い教典に盲目的に従ってただ虐げるよりも、よほど有益ではないか。
ふと、私の目の前を白い羽毛のようなものが横切った。目で追ってその姿を確認すると頭から生えた赤い羽根と、トカゲのような尻尾が見える。あれは確か、コカトリスといったか。その姿を見ている内に、同時にふわりとある香りを感じた。それはあくまで優しく私の鼻にたどり着きはするが、それがもたらす刺激は非常に強いものであった。目の前の女を手に入れたい、犯したい、自分の物にしてしまいたいという感情が源泉の如く湧いて出た。よし、あいつにしよう。私は理性を半ば捨ててコカトリスに向かい走り出す。予想通り彼女は一目散に逃げ出した。しかし私は現役の戦士、戦争が終わったとはいえ、毎日厳しい訓練を行っているのだ。同じ兵ならともかく、ただの魔物に足で劣るなどあるはずがない。私は多少息が切れたものの、比較的素早くコカトリスを捕まえた。体を掴んで押し倒すと、彼女は嘘のようにおとなしくなった。それどころか目を潤ませ、顔も紅潮している。このまま犯しつくしたい衝動に駆られるが、周囲の視線で我に返った。コカトリスを立たせて、逃げられないようにしっかりと抱き寄せながら我が家に連れて帰る。しかしその心配はなさそうだった。なぜなら彼女は道中で私に擦り寄り、しかも私は隙を突かれて彼女に唇を奪われたのだから。
―目撃者の証言―
「あれはロットさんじゃないか、遂に嫁をとることにしたか。あーあ、あんなに熱々で」
「しかもコカトリスとは。あれを捕まえられる奴は兵士でもごく僅か。流石は王国一の兵士といわれるだけはある」
私はとりあえず寝室のベッドにコカトリスを寝かせた。もちろん咄嗟に逃げ出されないようドアに鍵は掛けてあるが、どうも杞憂らしい感じがした。私が一旦彼女から離れようとしても、彼女に抱き締められてそれは敵わなかったからだ。しかもまた唇を奪われた。二度目の不意打ちに私は少し腹が立ち、彼女の口元を割って舌を押し入れた。
「ん!・・・んむ
#9829;」
静寂の中に唾液による水音と、彼女の喉から漏れる艶やかな声が寝室に響いた。それを聞いて私はとうとう堪えきれなく
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