青い空、白い雲、そして青い海、とつなげたいところではあるが、残念ながらここは地上、そして広がるのは見渡す限りの草原である。東に森、西には低めの山が見え、風が吹けばその森や山から心地よい香りを運んでくる。
そしてその草原を歩く羽根付きの少女が一人。彼女の名をリデスという。
「ラーララーと君は言う、舌を回し〜なが〜ら〜♪」
のんきな歌声は風に乗り草原を駆ける、だがそれも少しの間だけだった。突然地中から伸びた腕が彼女の足を掴んだのだ。
「えっ・・・なっ・・・何!何!?」
腕を振り払おうと翼や足を振り回す。しかしそれは強靭なハーピーの暴れる足をしっかりと掴むほど強固だった。さらに二本目の腕が出現し地面をつく、その腕に力が入ったかと思えば一人の少年が這い出してきた。
「や・・・やだ・・・」
リデスは既に戦意はおろか逃げ出す意思さえ失い大地に転がる、少年に掴まれた足を除いては。その少年は鬼のような顔で彼女を睨みつけると、今まであれほど強く掴んでいた腕を簡単に放した。
突如として地中から現れ出でた少年は、背中に大きな剣を持ち軽装を身にまとっていた、しかし当然のことその服は泥にまみれている。
「チッ、ハーピーか」
自分が掴んだものが目的のものとは違うことに気付き、苛立ち呟く。そのまま踵を返しさっさと去ろうとする少年をリデスが呼び止めた。
「ちょ・・・ちょっと、このままこのまま放って置く気?」
少年は振り返りハーピーを見る、その顔には疑問が表れているも険しい表情は微塵も変わっていなかった。
「掴んだだけだ、どこも怪我はしてねえだろ」
「・・・こ、腰が抜けたのよ」
やや顔を赤くしリデスが答える。少年の顔がやや呆れたものに変わった。少年は彼女の羽を掴み乱暴に引っ張り上げた。そして立ち上がるとリデスは彼を質問攻めにする。
「あんた何者?なんで埋まってたの?」
「どうでもいいだろ」
少年は彼女の質問には一切答えず、今度こそ方向転換し進むことが出来た。しかし人というものは(今回は魔物であるが)そう簡単に振り切ることは出来ないもの。少年のあとをリデスがついていく。
「答えてよ、あんた誰?この辺りに住んでるの?」
「うるせえな、ついてくるんじゃねえよ」
しかしそれでも少年はまるで答えようとはしない。そうこうしているうちに東の森に着いてしまった。森の中からは幅の狭い川が流れ、入り口には掘っ立て小屋が住んでいた。
「あ、あれがあんたの住処でしょ?やっぱりこの辺に住んでるんじゃん」
予想通りとばかりに彼女が聞く。しかしもはや少年は受け答えることすらやめ、小屋の中に入ってしまった。案の定扉には鍵が掛けられている
「フン、そっちがその気なら全部知り尽くすまで居座ってやるんだから!」
彼女はそう宣言し小屋の壁に寄りかかった。草原からここに移動するまでに既に日は落ちてしまったため、リデスはそのまま眠りについた。
翌朝
小屋の扉が開かれ釣竿を持った少年が出て来るのを、待ち構えていたリデスが出迎える。
「なっ、お前まだいたのか!」
「あれだけ驚かせておいて謝りもしないのはそっちじゃない、せめて名前ぐらい教えてよ!」
どうやら相当しつこい性格のようである。しかしこの少年は負けず嫌いというか天邪鬼というか、とにかくそんなことを言われると相手が諦めるまで勝負に出てしまうのだった。彼女を無視し近くにある川に釣り糸を垂らす。しかし一向に魚はかからない。
「ねえ、なんとか言ってってば!あんた何者なのよ!あ、そういえば私はリデスっていうんだ!」
それもそのはず、少年の横でリデスが大声で喋り続けているのだ。そのせいで魚はかかるどころか釣り針にさえ近づかない。それでも少年は返事さえしなかった。だが彼女の行動はそれだけでは終わらない。足で水面をバシャバシャと蹴り始めたのだ。これでは釣れるほうが奇跡というもの。流石の少年も我慢の限界が来てしまった。
「わかったわかった、レヤ−ドだ!これでいいだろ!水を蹴るのをやめろ!」
「じゃあレヤード!お互い名前知ったんだから私達はもう友達ね!」
「・・・勝手に言ってろ」
呆れた少年が再度無視を決め込もうとしたその時、一本の矢が二人目掛けて直進してきた。
「・・・!」
「えっ」
ガバっとレヤードがリデスに覆いかぶさり矢を避ける。着弾地点からして、それは自身を狙ったものだと判断した。
「ちくしょう、どこからだ・・・」
レヤードが辺りを見回す、しかし射手の姿は見えない、それに矢も飛んでこない。
仕留めそこなったのを確認すると同時に逃げたのだろう。そして、彼の下でリデスは恐怖に震えていた。彼女はそこから這い出ると、レヤードに向き直った。それを見た彼がリデスに言う。
「分かっただろ、俺に近づくんじゃねえ・・・怪我するぞ」
リデスは落胆した、友達ができたと思ったら、その
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