ここは魔界。
空は暗く、大地は荒れ果て、木々はなんとも禍々しいものばかりである。
だがそれは人間の視点なのであって、魔物からしてみれば美しいのだ。
そこに重装備を着て歩く者。弓や武器を担ぐ者。
ローブを羽織り杖を持つ者など多種多様の人間が・・・いない。
たった二人で魔界に残された男と女。何も当てもなく取り残された二人は何を思い、何をするのか・・・
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グレイとソフィアはたった二人ぼっちで立ち尽くしていた。かけがえのない仲間と別れた後で、今の彼らの気持ちは重く沈んみ、これから何をするという気にもなれず、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
「ふぅ・・・本当にこれでよかったんだよな・・・」
「・・・そうだね・・・言い訳はしたくないけど、この方法でしか無事に帰らせる自信はなかったわ。長期遠征で倒れる人が出るのも嫌だしね。
それでも・・・彼らの未来のことを考えたら、これが一番最善の方法だったと思うよ」
ソフィアの言うとおりで、即席ゲートを開く方法が地上へ帰る一番最善の方法だったのは言うまでもない。
「あいつらな・・・あいつらはホンットにバカだ。大バカ野郎共だよ。たいして強くもなく、かといって頭もそんなに良くない。騎士団には超不向きなやつらだ。
でもよ・・・でも・・・バカなあいつらだったけど、俺の大切な部下だったことには変わりないんだよな。バカなやつはなりふり構わず全力で頑張ることが出来る。俺があいつらを選抜してなかったら、今頃どこにも行く当てがなくてすぐ追い払われてるだろうよ。
俺は絶対にあいつらのことは忘れない。忘れさえしなければ、あいつらはいつでも心の中に存在しているから・・・」
「わたしも決して・・・決して忘れないわ。彼らは部下である以前にかけがえのないわたし達の仲間だもの」
二人はこのまま立ち止まっていても何も始まらないと思い、とりあえず目の前の道を歩くことにした。何もあてがなく何の目的もないので、今はただひたすら気の赴くままに歩こうと二人は同意する。
時たま、下級魔物が二人の前を通りかかるが、二人を襲おうとする者はいなかった。たかが下級魔物であっても、元団長、副団長の実力は容易に把握でき、襲う気にさせなかったのだ。
二人はお互いに寄り添いながらしばらく無言で歩く。ソフィアがふと何かを思い出しグレイに質問をした。
「そういえばちょっと気になったんだけど、グレイがスノウに渡したあの紙切れって一体何なの?スノウの為になるって言ってたけど・・・」
「あぁあれか。あれはな・・・俺がもしも何かがあったときの為に書いておいた、王様とスノウ宛の大事な手紙だ。まぁまさか本当にこんなことになるとは思ってもいなかったがな。書いておいてよかったぞ」
彼は笑いながら話していたが、彼が本当に心から笑っているときの顔とは少し違う顔だった。ソフィアはそれに気がつき胸が痛くなるが、あえて彼には言わない。
「王様宛にね・・・それで何が書いてるの?」
「まずは任務の結果報告だな。あいつらが王様に面会して報告してもらうのが一番ありがたいんだが、流石に上司が部下に頼み事ってわけにもいかないだろう?それに、あいつらも王様と面会してまともに話せるわけなさそうだからな。
それと、俺達二人の辞表だ。こんな状況になった以上、仕事なんて出来るわけがないからな。
最後に・・・」
そう言うとグレイは言葉を詰まらせる。聞いてはいけないことを聞いてしまったのか、とても言いにくいものなのかとソフィアは言いようのない不安に駆られる。
が、よく見るとグレイの顔はさぞ嬉しそうで、早く聞いてくれないかと言わんばかりに輝いていた。
それを見てふとソフィアは彼の癖を思い出した。グレイは自分のことは滅多に話そうとはしない。だが、珍しく自分の自慢や本当に嬉しかったことを話そうとするとき、必ずと言っていいほど相手に再度質問させるように仕向けるのだ。今回もまたその通りであることにソフィアは気がついた。むろんグレイ本人は自分の癖には全く気がついていない様子だが。
「グレイったら・・・最後に何を書いたの?」
「まぁよく聞いてくれ。俺達が騎士団からいなくなったら当然団長と副団長の座が空いてしまう。必然的に残された者たちで団長に成り上がろうとするが、まぁそれは騎士団としてお互い切磋琢磨していいことだ。だが、どこかのアホな野郎が権力を使って団長になろうとすると、かなり面倒になってしまうのはお前もよく知っているだろう?
それを防ぐために俺は、時期団長の座をスノウにさせてもらう願いを王様宛てに出したってわけだ」
「時期団長をスノウに・・・?
わたしも大賛成♪彼
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