蠅典『蟲翅魅ノ晩餐』

『わた……わたしは…………わ、わ私は間違っていたのだ……
 そうだ正気を失っていたんだそうにちがいな  
 何もかも全て、初めか 間違っていたんだ……
 ど、どどどうしよう。とんでもないこ  してしまった……もう手遅
 あれは何だ。何なのだ。何だ  うのだ。あの化け物は。
 あの蝿は。あの蛆の波は!!何なのだ!!
 私はあんな物を呼び寄せたかったわけじゃない。
 ただ、そう、幸せだ。皆の幸  願って呪文を唱えた だ。
 そしたら…………あんな化け物が召喚  るなんて……おおおお恐ろしい…………体が震えて  らない……
 地獄の底から這い上がるかのような極悪の瘴気、汚物を吐き散らかす身体、従える蝿の化身、蛆の大群……思い出すだけで吐き気が催してくる……
 あの化け物は一   のだ!?
 まさか最終章は化け物の召喚呪  ったとは思……
 こんなことになるなんて……わ、私は悪くない。悪くないぞ。知らなかったのだから悪くない。悪くない……うぅ……
 儀式の場に居合わせた大半の者は蛆と蝿の大群に飲み込まれ、二度と戻ってはこなかった。帰ってくるのは叫び声と嬌声のみであった。恐らく地上の者はもう全員…………』



『運良く逃れられた我々数名は教会の地下にあると言われている避難通路へと足を進めている。
 ジェイド司祭曰く、エクロ  教会が建築された頃は戦時中であり、もしものとき    難通路が作られたらしい。その話を聞くのは初めてだった。ジェイド司祭も使用した とはないという。
 マリーも無事であったが、マリーの彼氏は足がないのでなすすべなく……
 しかし我々にはマリーを慰めてやる気力も体力も尽き果てていた。召喚の儀式で皆の力をほとんど消耗してしまったからだ。もう我々はろくに術も使  いし、体力も残ってはいない。
 今はただ逃げるしかなかった』


『連中の進行は思った以上に速い。早く地下通路を見つけ奥へと逃げなければ我々は全     うだろう。
 私は。私達は完全に間違っていたのだ。
 主神は悪魔などではなかった。神は何もしていなかった。ただ見ていただけなんだ。
 間違っていたのは私たちだ……いや、私そのものが間違っていたのだ……
 興味本位で解読を始めたあの書物が魔の書物と知っておりながら……己の探究心に負け解読し続けた……もうそれは立派に聖職者の道から外れた行為だったことになぜ気が付かなかったのだ…………
 もういやだ…………地位も名声も全て捨てても構わない。ただひたすらに生き延びたい……皆と一緒に再び地上の  

        』


『昨日は日記を書いている途中にいきなり奴らの襲撃があった。
 五十名ほどいた者たちは過半数が奴らに飲み込まれ帰って来ること   った。
 マリー……まりぃは…………ごめん……
 蠅の化身に襲われそうになった私をマリーは庇ってくれた。この身盾にしてでも大神官である私を守りたかったのだろう……
 結果としてマリーは…………くそ……一瞬にしてレベル5   到達 救助は不可能と判断し……私は逃げた。逃げるしかなかった……
 何が大神官だ。何が…………人を導く賢人だ。私が導いていたのは堕落への道の他ならないも   ないか。私が一番の諸悪の根源だったのだ……
 私が  』


『頭が熱い。先刻の強襲で奴らに傷をつけられてしまたみたいだった。
 蠅の化身の魔法を弾き返すこともできぬほど私は疲 しきってしまったみたいだ。蛆の弾丸が皮膚をかすめて傷をつけた。
 いたくはない。けど、とてつもなく疼く。
 なにかが体の中から出ていっているような、そんな感覚がする』


『私は悪くない?ふざけうな、悪いのは初めから私だっ   。
 私がせいてんの解読をし ければこんなこと起こるはずもなか た だ。わたしが道を誤っ なければここまで堕落するこ もなかったんだ。
 私が…………』


『いまさら神に救いを乞うたとこ ですでに意 はない。
 けれど未だに神に救いを乞  いるとは、私はつくづ 聖職者だたみたいだ。
 しかしいまはもうせいしょく なんてものではな 。大しんかんでもない。ただのヒトだ。
 わたしはただの罪人となんらかわ  ない。神を批判し、ぼうとくして、悪魔だとののし  てしまた。後戻りはできない。
 皆にはわることした』


『あたまが熱い。からだあつい。
 私の身体が魔におかされ  のがわか 。わたしもあの蠅の化身みた   しまうだろか。こわいよ……
 うずく。かゆい。たりない。お腹すいた。聖典はおいてきたのでたべものも出せない。
 みんなおなかすいて   
 じぇーむずはリサとやって  ミックはエイミーとやっ  みだれ て
 みんなおかし   なってきた
 ああ、わた もミハイルたべた  』


『また襲撃きた。
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