・G月R日
『これは想像以上の大災害だ。今私が何の怪我もなく無事生きているのはよほど運が良かったためであろう。
町はほぼ半壊、火事は未だに治まらず住宅街を燃やし続けている。しまいには雨も降り始め雷雨とが激しく鳴り響いていた。
教会は避難場所に指定されていたので、避難民が続々と流れ込んでくる。収容するスペースは十分にあるので問題は無いが……それにしてもこれほどの大人数とは……エクロンの住民のほとんどが教会に非難しに来ているのではないだろうか。
雨風は体力を奪う。恐らくまだ瓦礫の下敷きで身動きのとれない人々が埋まっているのだろう。早く助けなければ……手遅れになってしまう前に』
・G月S日
『くそっ……!!私はここまで無力なのか……
地震から二日経つと教会に流れてくる人々は生きている者たちだけではなくなってきた。
焼死。圧死。中には原形を留めていないものまであった。
我々教団役員が懸命に救助作業をしているが圧倒的に人員不足だ。このままでは更に犠牲者は増えてしまう……
ただでさえ人員が不足しているのにもかかわらずこの災害……どう考えても我々だけでは対処できるわけがなかった。
今日開かれた緊急会議で隣国へ救援要請を出す事が決まった。ここから馬を走らせても往復でおよそひと月はかかるだろう。長い道のりになる。
ジェイド司祭は体力の長けている者たちを選出し、ミハイルら数人が救援要請の伝令役に任命された。確かに兵士数人程度ならば人々の救助作業はあまり支障にはならず、派遣に行く側も少数精鋭で行く方が行動しやすい。
しかし……ミハイル、なんだよね。
ミハイルとは少しの間会えなくなるのか……
くっ……なにが大神官だ!!私がもっとしっかりしていれば……力があれば…………』
・G月T日
『ああ、行ってしまった……
ミハイル。つい先日やっと私は自分の気持ちに素直になり愛しの人を見つけたというのに、こんなにもすぐに離れ離れになってしまうなんて。これを悲劇といわずしてなんと言えるだろう。
胸が張り裂けそうだよ。寂しいよ。
地震が起きる夜、私は貴方に全てをささげてもいいと思っていたのに。結局は地震のせいで契りを行なう事が出来なかった。
貴方を欲していたのに!!これほど好きなのに!!
これで一生会えなくなると言うわけじゃない。ひと月の辛抱だ。
けれどそのひと月が永遠にも感じられるほど長いよ……待つことなんてできない。
会いたい。今すぐ貴方の腕に抱かれたい。
寂しい……
こんな時は聖典を読んで気を紛らわそう。これを読んでいると……とてもいい気持ちになれる……』
・G月W日
『現実はなぜこうも無情なのか。
マリーの彼氏とジェイド司祭の妻と娘が運ばれてきた。
マリーの彼氏は何とか一命を取り留めているが足は砕けてしまっていた。ジェイド司祭の妻は娘をかばい重症、娘も栄養失調で命が危ない状況だった。
マリーも。ジェイド司祭も。恐らく救援作業なんて放り投げて愛しい者を助けに行きたかった違いない。けれどそんなことをしている間にも次々と怪我人は流れてくるのだ。助けに行く余裕なんてなかった。
シスターは常に怪我人を救護し笑顔で人と接しなければならない。けれどその笑顔の裏で大粒の涙を流していることを私は知っている。
ジェイド司祭は教団役員の指揮を取り締まるために常にリーダーシップを発揮していなければならない。けれどその厳格さの裏で不安に押しつぶされそうな彼を私は知っている。
主神よ、これがあなたの望む世界なのですか。阿鼻叫喚たる現世の地獄を味わわせたいのですか。彼らには背負うべき業などないはずです。幸せになる権利があるのです。なぜここまでひどい仕打ちを受けなければならないのですか。
主神よ!!返事をしてください……神よ……』
・H月A日
『雨が降り続いている。かれこれ二週間は降っているのではないだろうか。このままではまだ収穫時期を迎えていない作物が全て腐ってしまう。そうなれば来年は飢饉を迎えてしまうだろう。
しかし大地震が起きたばかりで疲弊しきっている時期に農作業などできるわけがなかった。まるで計算されつくしていると思えるほどの天候と災害のタイミング……
本当にこれら災害は神が引き起こしているのではないか。そう思い始める者がいるほど我々教団役員も疲弊しきってきていた。普段ならばその思想を思った瞬間厳罰を下されるのだが……もはやそんなことをやっている余裕なんてない。そもそも一番裁かれるべきは私なのに。
マリーの彼氏の元へと訪れると、目を真っ赤にしたマリーと両足がなくなっているマリーの彼氏が横たえていた。
私に出来る事といえば大神官として主神の教えを説き気をなだめ、回復聖術で痛みを和らげること、マリーを慰めてあ
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