吸血鬼








「窓からお邪魔するね腺崎くん」

「なっ、えっ!?誰だよお前!!通報するんむぐっ!??」

「ゴメンちょっと静かにしてて。ねぇ私が誰だかわからない?」

「むぐ…………ば、ばけもの……ヒィッ」

「あぁごめんねみっともないよね。飛んできたから翼しまい忘れちゃった」

「俺は夢を見ているのか……?ばけ、ものが俺に何の用なんだ……」

「もう、ばけものじゃないよう!――あ、でもやっぱばけものかも♪
どっちでもいいやーっ。気が付かない腺崎くんが悪いんだし」

「ま、待て!!待ってくれ!!その手のナイフは何だ!?
俺をどうするつもりだっ!?」

「私のことがわからぬ愚か者には天罰を下すぞーなんて」

「ヒィィィ!その目で俺を見ないでくれ…………さ、ささ寒い……心が凍りつきそうだ…………うぅ……」

「ほら早く早くぅー♪早く思い出さないとずっと睨みつけちゃうぞ?
それとも……このタナトスさんで刺すのもいいね!腺崎くんが私をぶっ挿したみたいにさぁ!
私をキズモノにしたみたいに、今度は私が腺崎くんをキズモノにしちゃうかもよ?」

「俺、がお前をキズモノ――はっ!伊脳っ!?お前伊脳なのか!?」

「やっと思い出したんだ腺崎くん。そうだよ、私はあの伊脳リョウコだよ」

「よく見れば顔も似ている……髪形だって同じだ…………体系は違うが……
伊脳お前どうしちまったんだ……?」

「それは自然とわかることだよ。ねぇ腺崎くん、私はキミに聞きたいことが二つほどあるんだ」

「聞きたいこと……?」

「そ、大事なこと。まず一つ目なんだけどね、腺崎くん。私の処女奪っておいて何か言うことないのかな。女子の初めてを奪うって結構重大なことなんだと思うんだけどさ、キミはそれをどう感じているのかな。腺崎くん自身の口から語られるまで私は帰らないよ」

「そ、そんなの俺の勝手だろう。ただ処女膜破って血がでただけ――」

「ねぇきみは自身はどう感じているのかな。それだけ、本当にそれだけなのかな。男子は痛くもないし気持ちいいだけだから何とも思わないと思うけどさ。女子は女子で大変なんだよ。
初めてを捧げるってことは人生において始めて異性を好きになったっていう証拠でもあるし、それがあるかないかで女としての価値がすごい変わると思うんだよね。
それだけ大事なものをさ、好きでもなんでもない男に勝手に奪われるこの気持ちはキミみたいな男には永遠わかりっこなさそうだから言うだけ無駄だと思うけど……どれほど重大なことかわかってる?ねぇ腺崎くん」

「ぅ……わかった、わかったから!!わかったからその目をやめてくれ……お願いだ…………」

「ふふっ♪ガチガチ震えちゃって子供みたい。そんなに寒いのかぁ、血の気も引いて真っ青だよ」

「うぅ…………凍る……冗談抜きで寒ぃ……」

「まぁでも、ばけものになっちゃった今ではもう処女膜だとか気にしても意味ないんだけどね♪このままだと腺崎くんはまたいたいけな女の子を悲しくさせちゃいそうだからちょっと説教をしたかったのさ。
いい?腺崎くん」

「は、はひ……もうこれからは二度と女性と性交をしようとは思いません……許して下さい」

「あっ、そういうわけじゃなくて、セックス自体はヤリまくっちゃって大丈夫だよ。ただ、次からは相思相愛でヤってねって言いたかったの」

「は、はぁ……」

「うんうん♪それじゃあ次にもう一個聞きたいこと。
腺崎くんはさ、死について考えたことある?ちゃんと答えてね」

「死か…………死は……俺は、死後の世界に行っても、多分地獄行きだと思う…………」

「ふふっ♪自覚はあるんだ。
死後の世界ねぇ…………その空想に思いを馳せることはとっても大事なことだね。
でもね、腺崎くん。死後の世界なんて死んだ者しかわからないんだよ。だから私は断言できる、死後なんてものはないんだって。
『人間は「自分の死後に、何が起ころうとしているのか」に思いをはせることが大事である。』
この言葉にもある通りさ、死んだ先のありもしない空想世界を思うより、死んだ後の現実世界のことについて考えるほうがよっぽど現実味に溢れていて意義のあることだと思うんだ。
それにさっきも言ったけど、死後の世界なんてまやかしは信じなくていいよ。実際に死んだ私が言うんだから間違いない」

「死んだ……?冗談はよせよ、死んだなら……こうやって生きてるわけないだろ」

「いいや、私はもう死んでるよ。死にながら動くただのばけもの。それが今の私。
もうそろそろ気がついてもいいんじゃないかな。この翼と目と牙を見ればとっくに人間じゃなくなってるって」

「……し、信じられねぇ……俺は夢を見ているんだそうだそうに違いない」

「夢のほうが都合がいいかもね。だってこれから腺崎くんは死ぬんだから抵抗
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