ここは魔界。
空は暗く、大地は荒れ果て、木々はなんとも禍々しいものばかりである。
だがそれは人間の視点なのであって、魔物からしてみれば美しいのだ。
そこに重装備を着て歩く者。弓や武器を担ぐ者。
ローブを羽織り杖を持つ者など多種多様の人間が・・・進軍していた。
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「目的地まであとどれくらいだ?」
「この位置ですと・・・あと一時間ほどですね」
「もうそれだけ近づいたか・・・よし!」
先頭にいる身の丈はかなり大きく、一際大きな鎧にマント。そして身の丈をゆうに超える大剣を背負った男がそう言うと、さらに前に出て兵士達の目に映る小高い丘に登り、こう叫ぶ。
「皆聞け!目的地まであと一時間だという!よって各自休憩を入れ、万全の体調で挑めるように!!」
そう叫ぶと彼はまたさっきまで居たところに戻った。
彼は王国騎士団団長のグレイ=ヴォルグ。
今、ここの休憩を入れている軍の団長でもある。なぜ王国騎士団が魔界にいるのかというと、理由は一つしかなく近々、魔王軍が王国に進軍する予定という情報が入ったからだ。
元々騎士団は王国を守る為にあるので、自分達から攻撃などは絶対にしない。だが、魔物が絡むとそういうこともいかなく、早期に事を解決しなければいけない。気を抜くと一晩で魔物によって王国は堕ちてしまうからだ。
今回は魔王軍が「進軍する予定」という確かな情報が入ったので進軍される前に魔王軍側に威嚇と警告をする為、魔界に入ったというわけである。
「996!997!998!」
グレイは食事を終え背中に背負っていた大剣を素振りしていた。
今回は戦う予定ではないのだが、かならず毎日、昼食後に素振り千回が彼の日課らしい。といっても、常に薄暗い魔界では昼か夜かわからないので、この素振りも昼食後なのかと聞かれると微妙である。
だが、この休憩場所は騎士団の兵士達が全員やっと入りきれるくらいの狭さなので、兵士達の居場所が無い。ましてや彼の大剣は大きすぎるので、非常に迷惑である。
「999!100・・・」
千回に達しようとしたその時、誰かの手により小石がグレイ目掛けて飛んでいく。
ゴスッ
「痛っ!」
グレイは頭に当たっただろう小石を拾いこう言う。
「・・・文句がある人はちゃんとお兄さんとお話しような?な?」
顔は笑顔だが凄まじい気迫。兵士達は自分じゃないという顔つきでざわつきだした。
「グレイ!またあなたは兵士達の邪魔をして!!何度言えばわかるのよもう・・・」
美しいほど黒く長いロングヘアーで凛とした顔立ち、細い体に腰には剣を挿している女性が一人いた。
彼女は何か物を投げたフォームをしておりグレイはすぐに理解した。
「あぁ・・・悪い悪い。もっと回数を減らせばよかったな。」
「そういう問題じゃないんだけど・・・」
「冗談だ。皆悪かったな。」
彼は大剣を置くとドスンと少し地が揺れたが、兵士達はグレイの素振りに開放されたのか安堵の顔つきだ。
彼女はソフィア=ウィン。
王国騎士団副団長を務めており、数少ない女性の騎士団員である。
女性だが副団長だけあって実力は本物だ。剣技とスピードならグレイより格上だろう。もっとも他の女性の騎士団員はほとんどが魔術師部隊なので実際、剣を使う女性は彼女くらいなのだが。
そしてなんとソフィアはグレイの彼女でもある!
ソフィアはグレイの隣に座る。
「もうすぐだね・・・」
「ああ。だが今回の任務はそんなに気合をいれなくてもいいぞ?魔王軍に警告をしたら俺達もすぐに帰還するつもりだからな。こんな湿っぽくて陰気なところは気分が悪い。」
「それもそうだね。私も同感。」
「まぁソフィアの腕前なら魔界にいても十分太刀打ちできるんじゃないか?」
「そうねぇ・・・ヴァンパイアくらいならどうにかなるかな。」
「ヴァンパイアか。戦ったことはあるのか?」
「あるわよ!副団長をなめないでほしいわ!」
「ふーむ・・・でもソフィアは魔界初めてだろ?まぁ一応アドバイスするならまず『逃げとけ』ってこったな。」
「え・・・そ、それじゃ騎士の名に恥よ!『後ろを振り向くな』よ!」
ソフィアの騎士道精神は団長のグレイのそれよりも高いのではないだろうか。
「魔界の魔物は地上の魔物よりひとまわり強い。それにヴァンパイアは速いわ怪力だわ魔力は高いわだぞ。逃げるのも困難だろうな。」
「そんな・・・どうにかならないの?」
「ソフィアの実力なら惜しいところまでいけると思うがな。捕まってヴァンパイアに魔物化されるのがオチだな。」
「うぅ・・・そこは冗談って言ってよ〜」
「まぁそうならないためにも俺がお前を守ってやるけどな。」
「グレイ・・・あ、ありがとう////」
などと
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