エピローグ

「996!997!998!」

 ここは魔界のマンション「メゾン・ド・ソロモン」の中腹36階と37階の間にある中央庭園。魔界の中でも特に凶暴性の少ない植物達が多くひしめいているところだ。時刻は人間界的な時刻で言う夕方4時くらいだろうか。何人かの魔物の姿がちらほらと見える。
 一人は庭園の様子をスケッチしていたり・・・散歩している一組がいたり・・・片は一方、昼間っからベンチで騎乗位になり激しく営んでいる一組がいたり。
 実に健全なにはともあれ、魔界はいつもどおり平和の時を刻んでいる。
 そこに一際大き大剣を振り回し素振りし注目を集めている男が一人。

「999!最後1000!」

 ブォン!!と最後に盛大な音を立てると、彼は大剣を側の木に肩掛けるように置いた。そうして彼は汗だくになりながら仰向けに思いっきり寝転がった。
 
すぅ・・・はぁ・・・すぅ・・・はぁ・・・

 ゆっくりと呼吸を整え、胸の鼓動も次第に小さくなってゆく。最後に汗が引いたところで彼は独り言を呟いた。

「あぁーーーーーーー!やっぱ素振り千回は辛ぇな。まぁだがサッパリするからいいか」

 仰向けから、上半身だけを起こした彼は両手を挙げぐっと伸びをする。そうして肩、首の関節をごりごりと鳴らした後、指を曲げまたも関節を鳴らそうとする。指の関節を鳴らそうとした時、ふと左手の腕時計が目に留まった・・・かと思うと彼は数秒硬直した後、指をぼきぼきっと鳴らした。

(うお・・・もう4時じゃないか。早くしねぇと帰ってきちまう)

 彼は立ち上がると、気に肩掛けていた大剣を手に持ち中央庭園を後にした。
 「えれべた」と言われる箱のようなものの中に入り、57と記されたボタンを一押しすると一気に上昇し上へ上へと登りつめた。階段で上がるよりも遥かに早く、また疲れることも無いという画期的なシステムだ。
 あっという間に57階まで着くと、チンという音がし扉が開き、彼は「えれべた」から降りると、毎日見慣れた扉の前に立った。そして扉を開く。







「ただいまーっと」

「おかえりーあなた。遅かったじゃない。あ、また素振りでもしてたんでしょ〜分かるんだから」

 リビングで本を読んでいた妻にそう言われ、面食らってしまった彼は特に何も反論はできなかったので何も言わないことにした。大剣を自室に置き、リビングの妻の隣に座る。

「いや〜つい夢中になっちまってよ。時間を忘れてつい・・・」

「ついつい言わないの。今日が何の日か忘れたわけじゃないよ・・・ねぇ?」

「おいおい人聞きの悪い。今日の日の為に魔王軍幹部の仕事を有休までとって休んだんだ、忘れるわけが無いじゃないか。当の本人よりも、俺の方が喜んでるしな」

「ふふっ・・・そうだよね。早く孫なんてのも見てみたいよね。って気が早いか」
 
 二人はテーブルに置いてあった紅茶を呑みながら雑談をしている。その光景はとても微笑ましい。新婚でもないのにもかかわらず、このように微笑ましく初々しいのは、実にこの二人が仲むつまじいのかを色濃く反映していた。

「と言うか・・・当の本人はまだなのか?」

「どうだろうね・・・夕方には帰るって朝言ってたけど」




ドタドタドタ・・・・・・!!
トテテテ・・・・・・




「ただいま〜〜!!」
「ただいま」

 噂をすれば何とやら、今日の主役が帰ってきたようだ。
 扉を閉じるや否やリビングにもうダッシュして来るナイスバディな金髪セミロングサキュバスと、遅れて入ってくるやや小柄でナイスバディな黒髪ロングヘアーサキュバスの二人が魔学校から帰ってきたのであった。

「ただいま!お父さんお母さん!!」
「ただいまパパママ」

「「おかえり二人とも」」

 この二人は言わなくとも分かるだろう。グレイとソフィアの愛の結晶すなわち、彼らの子供なのである。
 金髪セミロングの方は姉のミスティ=ヴォルグ。16歳。エネルギッシュな性格で学力はお世辞にもあるとは言えないが、運動と実践面ではほぼ完璧。齢16にして『魔物式4800手』をマスターしてしまった実歴を持つ。彼女は『まだ』人間の男と絶賛性交際中。ちなみに父にはまだこのことは言っていない。
 黒髪ロングヘアーの方は妹のマナ=ヴォルグ。13歳。物静かで姉とは対極の存在でありながら成績はほぼ完璧で、悪いところを探す方が難しい。齢13にして『魔道・魔術学検定4段』取得の才恵まれた頭脳を持つ。運動と実践面では姉には到底及ばないが、それでも一般的な魔物よりかは遥かに上といったところだろうか。彼氏募集中。
 強烈な個性丸出しのサキュバス二人組みだが、この親にしてこの子ありと言ったところだろうか。

「いや〜今日は部活休まないとね!なんてったって・・・」

「お姉ちゃんの誕生日だからね。私も
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