大学生の夏休みとは怠惰である。
高校生までは校則に締め付けられ、遠くに行く手段もないし最終日になって泣きを見る膨大な量の課題は大学には無い。
部活やバイト、ボランティアといった有意義な活動に励む奴も居る…が大抵はほどほどに済まして暇な日常を食い潰す。
初めのうちは集中して講義を受講し座席もなるべく前列に座る。段々と友人関係ができてくるとなるべく友人と話せるように後ろに座ろうとするようになっていく。
人間とは本来怠惰な生き物であり、堕落していくことはいとも簡単なことだ。
大学生になった俺は大学が家から電車で片道半日の距離となったため実家を離れ、地方都市で下宿生活をすることになった。
俺はというと、そんな怠惰な生活をしている…と思いきや夏休みになり他に誰もいないサークル棟にいた。
生き物大好きな幼馴染み(男)に誘われ付き合いで入ったサークルの生物研究会で学祭の担当係に半ば強制的に抜擢されてしまい、夏休みに一人会室に引きこもっているわけだが…。
「あいつめ…面倒な役職押し付けて自分は彼女と昆虫採集かよ…」
幼馴染みは彼女と数日間、彼女の親が持っている山奥の別荘で昆虫採集(意味深)に勤しむらしい。
このサークル、何故か自分以外の男どもが揃いも揃ってリア充なのである。爆発しろよ。
しかしサークル活動での学祭などたかが知れているわけで、毎年のマンネリ化した生物展示以外新しい案が出るわけでもなく一向に進まない。
本来俺は付き合いで入会しただけの虫が少しだけ苦手な都会っ子なのである。
まあゲームもできるしクーラー代も浮くし悪くないかと思ってサボタージュを決め込もうとテレビに手を伸ばした。
ーーーーーー数分後ーーーーーー
カチャカチャ…カチャカチャ…
「センパイ、何サボってるんですか?」
「うわっ…えっ?」
唐突に背後から耳元で声をかけられた俺は驚いてコントローラーを落としてしまった。
振り返るとそこには小柄な文学少女チックな印象の女の子が立っていた。
洒落た白いボタンワンピースを着た彼女はジトーッとした目線でこちらを見てくる。
彼女は後輩の葦原めぐ、1学年下の後輩だ。
去年の春、理系学部なんてむさ苦しくて男臭い大学に何故か女子が大量に入ってきた。下の学年は男女比が1:9なんて学科もあるらしい。幼馴染の彼女さんもめぐもその中の一人だ。
夏休みになってから会室で会うことがやけに多い気がする。
「お疲れ様です、今日は一段と暑いですね…本当に溶けそうです…」
知らぬ間に入ってきたのだろう後輩はお菓子の入ったビニール袋を片手に会室に入ってくる。
「お疲れ、夏休みにもなって会室で缶詰めとか本当にアイツのこと恨みたい」
「どうせ先輩のことだから家でゲームしてるだけだしいいじゃないですか」
「先輩もお茶、飲みますか?」
「あー、ありがと。」
余談だが後輩ちゃんの淹れるお茶はとても美味しい。いい香りがするハーブが入っててリラックス効果があるのか毎回ちょっとリラックスしすぎて眠くなる。
「そういえば後輩ちゃんは何しに来たの?今日なんて誰も来ないよ?」
「私は今日6限が補講なんです。時間つぶしついでに冷房に当たりたいな
#12316;と思ってお茶とお菓子持参しちゃいました」
「なるほど。」
ハァ…こんなに暇な時間があるんだから彼女作って旅行にでも行きたい…
「ふぇ…いま先輩彼女って言いました…?先輩に彼女なんていましたっけ…?」
ん?心の声が口に出てたかな…
不意に後輩の声色がうわずった気がしたが気のせいだろうか。あとなんか距離近…うわめっちゃいい匂いする…女の子ってこんなに柔らかかったっけ…
後輩ちゃんは俺に彼女いない事知らないのか…。何故かこのサークルはみんな彼女持ちだし今更いないって言うのも恥ずかしいな…
「あー…最近告白されてね…」
「え…そ、そうなんですか…」
後輩ちゃんの声がちょっと低くなる。あれ、バレてるかな。
なんとなく後ろめたくて気まずい空気についついお茶が進んでしまう。
「先輩、お茶のおかわり淹れますね」
なんか妙に後輩ちゃんの声が妙に明るくなった気がする。さっきの変な空気は気のせいだったかな。
「ありがとう、なんか毎回頂いちゃって申し訳ない」
「いえいえ、いいんですよ!どんどん飲んじゃってください!」
しばらく喋りながら後輩ちゃんに勧められるままにお茶飲みすぎてしまった…なんだか身体が火照って酒に酔ったような感じがする、ちょっと息抜きに外の空気でも吸ってこよう
#8212;
#8212;
#8212;
#8212;
#8212;そう思って立とうとしたが足が動かず倒れてしまった。
「あれっ先輩大丈夫ですか?眠くなっちゃったなら言ってくださいよ
#12
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6 7]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想