お百度参り

僕は、ちっちゃい子が好きだ…………性的な意味で。
ってああ! 石を投げないで!!

だってだって、ちっぱいも乳臭いやわらかーい肌も熱いくらいのぬくもりも、
無邪気な笑顔も素直に好意を表してくれるとこも、
一途で純粋なところも、
何も考えていなさそうで意外と考えてたりするとこも
みな素晴らしいじゃないか!

ぜーはーぜーはー……まあいい、本題に入ろう。
先日、友人のひとりが、稲荷さんが祭られている社に、お百度参りを敢行した。
雨の日も夏の暑い盛りも関係無しに、だ。
願いごとは、「嫁に来てくれ」ただひとつ。
大好きだった遊郭通いとか、ひとり遊びまで我慢しての願掛けだったと、先日本人から聞いた。
そして、お百度参りを達成した夜、奴はこんな夢を見たらしい。




「おい」
「ん? ……あ」
『…………』
「何故、神主の姿をしたキツネ頭の……大男なんだ……」
「んだよ、悪いか?」
「悪いわ! 俺は……『嫁に来てくれ』と、願を掛けたはずだったのに……」
「お前が来てた社の神使な、俺と相棒のつがいなんだわ。 こっちが俺の嫁」
「こんばんわ」
「あ、こんばんわ……って、巫女さん銀狐…だと…? ……しかも、その腹は……」
「うふふ、二人めなんです。 あと三月くらいでしょうか」
「…………で? これみよがしに寄り添われると、血涙で溺れ死にそうなんですが」
「あー、別に夫婦仲を自慢しに来たわけじゃねえぞ……一応な」
「一応かよ」
「そうそう、実は、うちの人の妹が……。
 あなたのお参りする姿の一途さに惹かれて、是非お嫁にもらってほしいって」
「……はい? このおっさんギツネの、妹さん?」
「誰がおっさんだコラ、俺はまだ百歳にもなってねーぞ」
「人間基準では二十歳前くらいなんですけどねぇ……」
「……しかし、この人の……いもう、と…………」
「何でそこで落ち込むんだよ、膝を突くな倒れ込むな、ざーとらしくうつぶせになるんじゃねえ。
 ……たく、あいつもこいつのどこにホレたんだか……オイ、ツラ見せてやれ、この馬鹿に」
「…………こんばんわ」
「……どうも。 って、隠れられた……」
「どう? かわいいでしょ、私の義妹。 血は繋がってませんけど、私と同じ銀狐なんですよ」
「はい……でも……。 このちっちゃさは犯罪なのでは……?」
「……わたしは、今年で還暦ですが」
「お、出て来た……じゃなくて。 人間から見ると、十歳くらいにしか見えんなぁ」
「わたしは、もう、あなたの子供を生める身体です……末永く、可愛がってくださいな」
「で、でも子供相手だと色々まむ゛ぅ!?」
「ま、諦めてもらってやってくれや。 ……妹を幸せにしなかったら祟るからな、兄として」
「……!」
「姪の顔を、できるだけ早く見せてくださいね。
 ……まあ、この口づけの一途さや、せがれ殿の元気の良さを見れば、
 心配はいらないようですけれど……ふふふ」




……そんなこんなで、そいつはロリっこ稲荷を嫁にもらった。
光の当たり具合で銀色に見える黒髪の、物静かな美少女だった。
おまけに、主婦としても、彼女は上玉だったらしい。
彼女が奴の家に来てから、見違えるほど家の中がきれいになってたし、
遊びに行った時にごちそうしてくれた稲荷寿司もおいしかったし、
何より時折奴に向ける発情した視線がけしからげふんげふん。

僕が奴の家を出た途端、幼げな甘い声や、荒い息遣いが聞こえて来た事は忘れたい。




数日後、僕も、同じ事をした。
もとい、稲荷が奉られている社に、お百度参り。
ひとり遊びをすっぱりやめて――女郎さん? 無理それ怖い――、ひたすらに、

「嫁に来てくれ」と。

残暑にも負けず、秋雨にも負けず、雪にも負けず。
ついでに「何をトチ狂ったんだろう、あのロリコン」などという、誹謗中傷にも負けず。
そして今朝、百度目のお参りが終わった。
ああ、寒いしねむい……




「…………」
「……こんばんわ」
「こんばんわ……えーと……どちらさまですか?
 あなたみたいに、垂れ目で泣き黒子できょぬーのお稲荷さまとは、
 お目にかかった覚えはないのですが」
「『お嫁に来てください』とお願いされて、早三月余り。
 嵐が来ようが雪が降ろうがお構いなしに、来てくださるなんて……。
 こんなに情熱的な殿方は、この百五十年、ついぞわたしの前には現れてくれませんでしたわ。
 よろこんで、あなたのものになりましょう。 んー……」
「ってすとーっぷ!
 頬を染めないで目をつぶらないで唇を尖らせないで手を僕の顔から離してくださいぃ!!」
「え? わたしじゃご不満?」
「……あなたに、妹さんはいらっしゃらないんですか?」
「姉ならおりますけれど……あなたが通っていた社の稲荷です。
 ちなみに、義兄との間に設けた、三人の娘も」
「な
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