捕まり突いて貫かれ

木漏れ日がまばらに差す、森の中。
若い冒険者が四人、荒い息を吐きながら、血を流して倒れていた。
彼らが負わされたのはかすり傷であったが、穂先に麻痺毒がたっぷりと染み込んだ、
ホーネット謹製の槍によるものだったので、四人とも仰向けにひっくり返ったまま、
不安げに槍の持ち主達を見上げるしかなかった。
さておき、リーダー格とおぼしき長身のホーネットは、四人の虜囚に向かって宣言する。
ぞんざいな口調ながら、栗色のざんばら髪とキツい目つきに見合う、芯の通った声音だった。

「あたしらンとこは、分家したてで男日照りなんだ……だから、ダメだっつっても連れてくからな」
「俺達をどうすんだよ? 奴隷にでもするんか?」

宣言に反応して、身体のとある部位を萎縮させつつも、冒険者達の一人が問い掛ける。
心持ち口の端を吊り上げながら、リーダー格のホーネットは伝法な口調のままに答えた。

「あたしらのヒ…じゃねえな、身の回りの世話をして貰う。 ま、奴隷扱いはしねーから安心しな。
 …………っと……こン中で、女を抱いた事がねー奴はいるか?」

おどけるように軽く跳ね上がった語尾につられたように、
その場に倒れる四人のうち、小柄な二人――ホーネットに問い掛けた戦士風の少年と、
神経質そうな魔術師風の少年――は、赤い液体を目から溢れさせた。
血涙をだばだばと流す童貞小僧二匹と、やや不満げな赤面をさらす狩人風の同上一匹、
先日娼館で筆卸ししたばかりの、仏頂面なデカい戦士風一匹を順繰りに眺めた長身の妖女は、

「……ま、なんだ、クヨクヨすんな。 いいことあっから」

苦笑いながら、他のホーネット達ともども、倒れ伏す彼らを抱え上げた。




「あ、お姉(ねえ)もみんなもおかえりー」
「ただいま……人前でお姉はよせやい」

森の奥深く、巣に戻った一同を迎えたのは、
薄手のドレスを身に纏い、栗色の長髪をシニョンに結い上げたホーネットの柔和な笑顔だった。
大きく膨らんだ腹と額のティアラ、そして自分達を拘束するホーネットのうち、
小柄な三人と似通った垂れ気味の目つきを確認し、魔術師風の少年は小さく呟いた。

「女王蜂か……」
「うん、だからお行儀よくしててよね?」
「あなた達の毒で手足が痺れてるから、それどころじゃないんだけど……はい、ごめんなさい」

それに反応して、彼を跪かせているポニーテールのホーネットは、
精一杯いかめしい表情で睨みを利かせてみせた。
……ただし、彼女の幼く愛らしい顔立ちには、荷が重い行為だったようだが。
それでも、脇の少年は、顔を赤らめて黙り込んだので、満足げな表情で鼻を鳴らすと、
彼女は女王と瓜二つな顔立ちで、髪を三つ編みにしたホーネットと、
ひときわ小柄で短髪の、やや目の細いホーネットの二人と声を揃えて、

『おかーさん、ただいまー』

と、元気よく帰還の挨拶をした。
彼女らの外見は十代半ばほどだったが、表情や言動はまるっきり幼子のそれであり、
長身のホーネットの口許が思わず綻ぶ。
自分の肩を抑えつつ笑う長身の女性と、
柔和な笑みのままにあらためて「おかえり」と応える女王をしばし見比べ、
五人とも同年代に見える事を確かめると、小柄な少年は、やや混乱したように首を捻った。

「おねえ? おかーさん?」
「はい、そちらの背の高い人はわたしの姉ですし、他の三人はわたしの娘ですから」

と、少年の疑問に気さくに応える妹に、姉は笑みを引っ込めて苦言を呈す。

「なあ、お前さんも女王だろ……もう少しこう、威厳っつーかさ……」
「いいじゃない、アットホームで親しみ易くて」
「イヤ、そりゃア、わりィこっちゃねーんだけどよ……何つーか……。
 喋り方に、頭の軽さが滲み出てねーか?」
「えー? その辺はお姉も変わんないじゃない。 チンピラみたいだよ?」
「なんだとォ!」
「あの……お尋ねしてもよろしいですか? …………って、女王様に伝えてくれないかな?」

年長のホーネット二人の素人漫談をさえぎるように、
魔術師風の少年が、脇のホーネットに小声で頼んだ。
悪戯っぽい笑顔で姉と睨み合っていた女王は、
娘の一人に「おかーさん、この子が聞きたい事があるんだって」
と呼び掛けられ、表情を復元させつつそれを促す。

「どうぞ?」
「ぼ…自分達は、これからどうなるんでしょうか」
「そこの四人のうち、誰かのお婿さんですね。 どの子がお好み?」
『……はいィ?』
「あたしは選ぶなよ? 最初に言ったじゃねえか、男日照りだとか、奴隷扱いはしねえって」
「む、婿って……どうするよ?」

げんなりとぼやく年長のホーネットを尻目に、
小柄な少年は隣で膝をつかされている大柄な僚友に小声で訊ねてみた…………が。

「ついに素人童貞喪失か……魔物相手だけど、かわいいからいいや」
「経験無いん
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