まえおき

「おはようございまーす、シスター・グリシーナ」
「あっ……おはよ、ござい、ます……んっ! どう、しました、クロエラ、さま……ぁん!?」
「んー、お勤めの最中でしたか……まあ、それはおいといて…も、バチ当たんないですよね?
 あとぉ、いつもみたいに『義姉さん』でいいですよ?」
「は、はひ……ねえ、さ……ん、くっ!」

うぅ、そろそろノってきたとこだったのに、義姉さんのいけず……じゃなくて。

朝のお祈り(ひとりえっち)にいそしむ私の手を止めたのは、太平楽な義姉の声でした。
ふわっふわなセミロングの銀髪と、白いワンピースだけ見れば、
ねぼすけなお姉さんを起こしに来たかわいい妹なんですけどねぇ……。
多少気まずげに上半身を起こした私の姿を見て、おじさんクサい嘆声を漏らす様子には、
そんな気配は微塵もないのが困りものです。
「おほぉ、ぷるんぷるんとエエ乳してまんなぁ……♪」なんて、
天使が言ってイイ台詞じゃないと思います、たとえ生まれつきの駄天使だとしても。

白い痣のようなルーンが這い回る蒼いもち肌と、凹凸の乏しい小柄な体型、
おまけに腰から生えたカラスめいた翼に、頭上で浮遊するアメジストのような光輪。
そんな義姉は、ダークエンジェルというサキュバスの一種だそうです。
私と母を魔物にした……いえ、数人がかりとはいえ、
私達の住む町を魔界に変えた主犯格のひとりでもあります。
いや、主犯って言い方は酷過ぎる気がしなくもないですけど……それはさておき。

兄と一緒に、堕落した神への祈りを捧げ、サキュバス特有の朝食を済ませてきたのでしょう、
子供特有のハリとツヤを増したほっぺたがほんのり血の気を透かしていますし、
薄くぺったんこなハズのお腹が、まるで臨月を迎えたかのようにぽっこり膨らんでいますし。
まあ、それ以前に全身から懐かしさを感じさせる精のニオイを発散させているのですが。
ああ、羨ましい……かといって、兄とそういうことをしたいとはカケラも思いませんけどね。
血の繋がった肉親に対する情愛が劣情を抑えつける? いえいえ。
やっぱりえっちするなら華奢でちっちゃかわいい男の子がいいですうへへ……おっと。

私の性的嗜好とは真逆な――――それなりに整った容姿の兄が、
目の前にたたずむ蒼く幼い肢体から、ドレスも下着も剥ぎ取って、
赤黒い肉の凶器で後ろから貫き、獣のように快楽を貪り合っている
――――光景を思い出して、自分の嗜好を反芻していると、
義姉が私の尻尾をもの欲しそうな目でじーっと見つめているのに気づきました。
鎧窓の隙間から差してくる弱々しい朝の日差しを受けて、
私の唾液と秘蜜で濡れた青黒く細長い肉塊がてらてらとぬめるように照り返します。
それにしても、はしたない……義姉さん、(ピー)歳にもなって指を咥えるのはどうなんですか。
そういうおねだりの仕方は兄さん相手にしてください。

「いいなー、尻尾……わたしはずーっと指だけだったから」
「でも自分のお尻をこするだけなのは寂しいです……ところで、どうしたんですか義姉さん」
「ん、そろそろ、グリシーナさんにもお婿さんの宛てを紹介してあげましょうか、と。
 十日前、先発隊がよさそうな修道院を見つけたみたいなんですけどぉ、
 今朝そこに多人数転送用の魔法陣を設置してきたよってお知らせが♪」

なんですとー!!!!

思わず毛布を撥ね退けて、駆け出さんばかりの勢いでベッドを降りた私を止めたのは、
「えい♪」と楽しげな声とともに突き出された、義姉の両手の人差し指でした。
……嫁入り前の義妹の乳首をピンポイントで突かないでください!
腰砕けちゃったじゃないですかぁ!!

「ふぅ……相変わらずイイ感度ですね〜♪」
「うう……義姉さんのヘンタイ……もうお嫁にいけないです……よよよ……」
「女の子同士ですからノーカンですって。 手はさっき顔と一緒に洗ってきましたしね。
 そんな事より、朝のお祈り、済ませちゃいましょう?
 ほら、見ててあげますから、せーだいにイっちゃってくださいな♪」
「恥ずかしいですよぅ……それに、同性のひとりえっちなんて見たいものじゃないでしょう?」
「いえいえ、やっぱり自分が導いた信徒が敬虔なのは嬉しいですし誇らしいですよ。
 お義母様とお義父様も……でしたし…………きひひひひひひひ♪」

義姉さん、職務熱心なのは結構ですが、女の子としてその笑い方はないと思います。
もう慣れましたけど。

羞恥の言葉とは裏腹に、私の口はだらしなく笑み崩れていました。
まずはベッドの上に仰向けになって、立てた脚でM字を描くと、鼻から漏れる切なげな呻き。
腰に畳んでいた黒い翼を展開、二、三度羽ばたかせてから乳首を隠すように添えます。
手持ち無沙汰にふるふる揺れていた尻尾は、筆記体のSのようにうねらせて、

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