「いや〜クリームシチュー、美味しかったですねぇ…」
「まさか魔物産のミルクだったとは……はぁ、先が思いやられる……」
「まぁまぁ、とっても美味しかったしいいじゃないですか
#12316;!ちょっと元気になるだけですから!」
「それが僕にとっては一番危険で困るんだけど……」
夕食後、自室に戻った2人はまだ眠るには早いということもあり、セトネの仕事道具でもあるカードで遊戯に興じながら夜の雑談に花を咲かせていた。
大きな街の外れに位置するこの宿屋付近は大通り近辺とは打って変わって静寂に包まれ、星が煌めき月光が仄かに夜闇を照らし出している。サリィが気を利かせてくれたのだろうか、どこか甘い香りのする香が気分を落ち着けてくれる。これ以上ない最高のロケーションにセトネは心躍るが、それとは真逆に、ソリードの心境は決して好天的ではなかった。
「……やっぱり不安なんですか?これからのこと。」
「まぁ、ね。というか不安な要素には君だって入ってるんだけど。」
「嫌ですねぇ、私は無理やり襲ったりしませんって。ソリードさんに嫌われて一番困るのは私自身なんですよ?今ソリードさんに見捨てられたら、私だって魔力が取り戻せないんですから。」
「ふーん……まぁ、現状僕もセトネさん以外アテなんてないんだけど。どうしようかなこれから……って何その役、強くない?」
「ふっふ
#12316;ん、私にかかればこれくらい朝飯前ですよ!なんたって私はマジシャンですから!」
自慢げに踏ん反り返るセトネを尻目に、ソリードは手早くカードをシャッフルし直し、次のゲームを始める。ちなみにここまでセトネが10勝、ソリードが8勝。僅かに負けている。
「そういえば最初に会ったときも言ってたっけ。マジシャンね……丁度こういう大きな街で披露すれば、結構稼げるんじゃないか?」
「確かにそうですね
#12316;、でも私、あまりお金には興味なくて。興味があるのは素敵な旦那様ですから!」
「……魔物娘って皆そうなの?はい、今度は僕の勝ち。」
「むむっ……この私相手に互角の戦いをするなんて、ソリードさんやっぱり只者じゃないですね……それで質問の答えですけど、だいたいの魔物娘は旦那様が最優先ですよ。まあ特殊なパターンもありますけどねぇ、人間と愛し合う為に産まれたようなものですし、私達って。」
「人間と愛し合う、ねぇ……なんで?魔物は魔物同士でくっついても、別にいいんじゃないの?」
「デリケートな話題にズケズケと突っ込んできますね……まぁそれには色々と事情があるんですよ、詳しく知りたいなら、リリムさんにでも聞いてください。」
「リリム?それってセトネさんの知り合い?」
「いやいや、そうじゃないです。種族名ですよ、魔王様の娘達のことです。大きな親魔物領には大抵統治の為にいらっしゃるから、きっとこのアムールにもいると思いますよ?」
「成程ね……魔王の娘か、いろんな意味で凄そう。」
「実際すごいらしいですよ、男はリリムの姿を見ただけで射精してしまうとか。」
「それじゃ会えないじゃん……嫌だよ流石に公衆の面前でそういうことするの。」
「まぁこの街でそんな事したらあっという間に取り囲まれて乱交パーティーが始まっちゃうでしょうからね
#12316;……」
ソリードが欠伸を噛み殺しながら客室にある大きな柱時計を見やると、話に夢中になっていたせいか既に時計の針は9の文字盤を過ぎ、10の位置に短針が差し掛かる頃になっていた。ついつい話し込みすぎたようだ。
「もう10時か……そろそろ寝る準備始めようか。」
「あっ、もうそんな時間ですか?いっぱい歩いたからお風呂入りたいですねぇ……ソリードさぁん、よければ……」
「駄目。」
「せめて内容くらい聞いて下さいよ
#12316;!」
「はいはい、じゃセトネさんお先にどうぞ。」
「ははぁ、私が入ったあとで残り香を存分に堪能しようっていう魂胆ですか
#12316;?私には丸わかりですよ、残念でした
#12316;!」
「はいはい、いいから早く入って。」
「ちょ、ちょっと
#12316;!そんな乱暴に押し込めないで下さいよ
#12316;!」
自慢げに踏ん反り返るセトネを脱衣所に押し込み、ソリードはベッドに座り込む。暫くするとお風呂場からふんふ
#12316;んと機嫌よく鼻歌が漏れ聞こえてくる。結局諦めて大人しく入ることにしたようだ。
一つ屋根の下、魅惑の肢体を持つ美女が裸で自らの身体に泡を這わせている……つい意識してしまうと、ソリードの男性の象徴がその存在を主張し始めてしまう。きっとこの街の雰囲気がそうさせてしまうのだ。なにせ周りにはどれも一級品の見目麗しい女性ばかり。しかもその女性達がこぞって自分という異性を好み、狙っているのだ。男性としてはまるで天国のような世界だろう。
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