「さて、ここからどうすべきか…」
大陸南部、砂漠地帯。昼は50度を超える猛暑が続き、逆に夜は0度以下の極寒となるこの地には、未だ数多くの財宝が眠っている。
そもそもこの辺り一帯は、旧魔王時代からの遺跡が数多く点在している。かつて砂漠地帯で栄華を誇ったファラオ達が、己の遺体を眠らせる場所として作り上げた墓所たちのなれの果てだ。
長い時の果てに遺跡の多くは砂に埋もれ、その形を崩している。形を残す遺跡群も副葬品目当ての盗掘者や冒険者達が蔓延り、金目のものは片っ端から盗み出されてしまっている。
しかし、かつての王達の栄華の残滓は年月や盗掘者による蹂躙を良しとしない。砂に埋もれつつも未だ手のつけられていない富を内包した遺跡や、強固な防衛システムにより不埒な盗掘者を撃退し続けてきた遺跡は未だ数多く存在する。
そして、彼――サミュエルが侵入しているのも、そう言った遺跡の一つであった。
「正面にマミーが2、後ろの通路にも1か。倒せない数じゃないとは言え、音は出したくないんだがなあ…」
通路の窪みに隠れながら、サミュエルは一人小声で愚痴る。内部に残る罠や見張りの数からして、この遺跡がまだ手のつけられていないものである確率は非常に高い。そして、遺跡の規模からしてここのファラオは生前相当の権勢を誇っていたはず。であれば、納められている埋葬品の数や質もその権勢に見合った物のはずだ。
情報屋に大枚はたいて買った情報だ。絶対に宝を持ち帰ってやる。そんな期待を抱きながら行く手に立ちふさがる罠やマミーの警戒を潜り抜けて、遂に見つからずに宝物庫の目の前まで達する事が出来た。しかし、世の中そう上手くはいかないらしい。
――ある程度予想はしていたが、やはり宝物庫の前には見張りがいた。全身に包帯を巻き、虚ろな目で目の前を見つめるマミーが二体。見つからないよう慌てて隠れたはいいが、今度は後ろからもう一体のマミーが近付いてくる始末。このまま隠れていてもすぐに見つかるし、生憎彼の武器は閉所での隠密行動向きではなかった。
「宝物庫はすぐ先だ…飛び出しざまに正面の二体、振り返って一体。マミーと番人が辿り着く前に片を付ける――よし!」
覚悟は決まった。後は実行に移すのみ。
腰に手をかけつつ、窪みから飛び出す。それまでぼーっと前を見つめるだけだった三体のマミーは、突如現れた侵入者を目にするや否や彼を捕まえようと前進する。
しかし、その動きは遅すぎた。マミーにしては素早い動きで彼へ駆けて行くものの、その距離約6メートル。
飛び出しざまに、彼はホルスターから銃を抜き撃つ。右手には銃身とストックが短くカットされた水平二連銃、左手には火打ち式の前装式単発銃。どちらも一発ずつしか撃てないが、殺傷力と言う点では既成の武器を大きく凌駕する。一撃必殺の、頼れる相棒。
――立て続けに、轟音が響く。右手に持った二連装銃が連続で火を噴き、宝物庫を守るマミー達の頭に大きな風穴を開ける。同時に左手に持った単発銃の引き金を絞り、通路から来るマミーを撃ち倒す。僅か二秒で、三つの屍体は物言わぬ躯と化した。
「……すまんね」
銃を下ろし、サミュエルは唇を噛み締める。彼自身、別に反魔物派と言うわけではない。生まれ育ちは教団の庇護下にある都市だが、冒険者として街を出て、旅をしていく最中で魔物がどういった存在であるかは身に染みて分かっていた。それでも尚自身の目的の為に殺した彼女たちの死に顔は、決して善人とは言えない彼にも一抹の罪悪感を抱かせるものだった。
とは言え、感傷に浸ってもいられない。黒色火薬特有の馬鹿デカい銃声は、恐らく遺跡中に響き渡ったはずだ。厄介なミイラや番人達がこれ以上現れる前に、とっとと宝物庫の中身を回収してずらかりたい所である。
「一々悩んでもいられない、ってね。さーて、お楽しみのお時間だ」
宝物庫の前まで走り、扉に向けて解錠魔法をかける。魔法は苦手な部類に入るのだが、解錠や罠はずし等の探索系魔法だけは必死で覚えた甲斐があった。最も、これらの魔法が使えなければトレジャーハンターとしてとてもやっていけないのではあるが。
石同士がこすれあい、砂を落としながらゆっくりと扉が開く。中には照明がなく、真っ暗闇だった。
明りの魔法をつけ、中に踏み込む。踏み込んで…彼は、自分の目を疑った。
魔法の光が壁や床に反射し、部屋はきらきらと輝いている。いや、これは床ではない。――黄金だ。
「これが」
金、銀、貴金属、魔法鋼。
「これらが、これ全部が」
色とりどりの宝石を散りばめた装飾品。宝箱に収まりきらず、溢れだしている金貨。きれいに並べられ、背の高さほどに積まれた金塊。
「俺の」
魔法鋼で鍛えられた武具に、膨大な魔
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