私は街の小さな編集社に務める記者だ。男である。ペンネームはまだない。
私を含む一団である我々は今、ある密林の奥地に住むというアマゾネスの集落に来ている。
何故かと問われれば、今街ではとても人気の雑誌があるのだが、私がこれを出版する会社の記者というか編集者の一人だからだ。
その雑誌は、世界各地にひっそりと暮らしている人々の村や里に行って、そこで数日暮らした様子をバラエティーを交えて書く、いわゆる紀行のような物だ。普通に生きていれば知ることのできない情報を面白おかしく得られるという事で、若者を中心に大ヒットした。
大ヒットしたが、実は巻を重ねるごとに徐々に人気が低迷してきていたのだ。編集長曰く『刺激が足りないんじゃない?』との事だったが、取材に行く度にスタッフが三人は怪我もしくは死亡しているというのに、何を言っているのかと声を大にして言いたい。
しかし人気が下がって売上が減れば、いつ我々が解雇されるかも分からない以上、我々平社員はなんとしてもその雑誌の人気を持ち直させなければならない。
そこで同僚の一人が起死回生の策として考案したのが、アマゾネスの集落への取材だったのだ。
私は、危険だからせめてエルフの集落にしないかと何度も説得を試みたが、周りが異様に盛り上がってしまい今に至る。
〜〜〜
我々は、納屋のような場所にいた。いたというか、縄でぐるぐるに縛られ転がされている。苦労して樹海を抜けアマゾネスの集落にたどり着いた途端、私たちは揃って屈強な戦士たる彼女らに捕まったのだ。噂に聞いた『男狩り』というヤツだろう。
「どうだよ、縄はほどけそうか?」
「ダメだ。すげぇ固く結んである」
「縄自体も普通のもんじゃないっぽい。オレ達が持ってるナイフじゃ歯が立たねぇ!」
仲間達が脱出を試みているが、成果は芳しくないようだった。
そもそも、縄から解放されたとしてどうやって逃げるのだろう。外にはあのアマゾネス達がうじゃうじゃいるのだ。とてもじゃないが、あれから逃走するのは不可能だろう。
「つーか、アイツ等は俺たちをこんな所に閉じ込めてどうする気なんだ?」
誰かが言い、周りが、
「そりゃあ……労働力とか」
「もしかしたら殺されるかもしれねーぜ?」
「いや、アレだな」
「知っているのか雷電?」
「ああ。ズバリ、アレとは―」
雷電というペンネームを持つその男に、私を含め全員が注目。
一同の視線を浴びる男は、じっくりと溜めた後、ゆっくりと言った。
「―性奴隷だ」
「「「な、なんだってー!?」」」
スッポンも月まで吹っ飛ぶその衝撃の発言に、小さな納屋が震える。
「嫌だー! 死ぬまで奴隷は嫌だー!」
「オレだって嫌だよ! オレはもっとこう、お淑やかで上品な黒髪の美人と結婚したい!」
「それは無理だろ」
「うるせぇ!」
そして、
「……大騒ぎだな。男は皆こうなのか? それとも発情期か」
呆れた様子で納屋に入ってきたのは、一人のアマゾネスだった。確か我々が捕まった時、族長と呼ばれ指示を仰がれていた者だ。
族長は私たちを順繰りに見て、
「まぁいい。―お前らの処遇が決まった」
数人のアマゾネスがぞろぞろと入ってきて、私たちを担ぐと外に運んだ。
しばらく担がれ、集落の中心らしい広場に一列に並べられた。周囲を見回すと、身長や恐らく年齢もバラバラだが、例外なく高い技量を持つであろう戦士たちが我々を取り囲んでいた。もの珍しげな目でこちらを見ている。
「何が始まるんだ……?」
誰かが呟く。それは、私や他の全員の心中を代弁していた。
我々の後ろに立った族長が、覇気の籠った声で叫ぶ。
「勝者は前へ!」
すると取り巻きの中から、数人が歩み出た。その数人はもれなく喧嘩でもしたのかと言いたくなるほどボロボロで、中には血を流している者すらいた。
「勝ち抜いたのはお前らか。よし、好きな奴を選べ」
族長のその言葉に、私は状況を察した。
つまり、特定の人物が『狩った』者ではない私たちは一体誰の物になるのか、それを力で決めたのだろう。彼女らが怪我をしているのはそのためらしい。初めて聞く話だが、そもそもアマゾネスの集落に迷い込んで帰ってきた人がいないのだから当然か。
横一列に座る我々の前に、一人づつの勝者が立った。
私の前には、半ばから折れた片刃の剣を持つ短髪の少女がいた。体中傷だらけで、今は止まっているものの血が流れた痕があった。
少女は無言で私を見つめている。
「決まったようだな」
そんな族長の呟きが耳に入った。
族長は、どこか嬉しそうな響きで、
「ではこれより、簡易的ではあるが……」
そして大きく息を吸い込んで、
「我らが同胞とそうなる者達との、婚姻の儀を開始するッ!」
〜〜〜
季節が一つ変わっ
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