洋食「ひめ」のキッチン。今日は定休日で店は開いていないが、五人の美女美少女たちが大量のチョコレートと調理器具を前に和やかに話す微笑ましい空間になっている。
「一柑ちゃん一柑ちゃん、私おっぱい型のチョコにする!」
「でかすぎるでしょうがアンタ今何カップだっけ!?」
「B130のQカップ!」
「いくらあの筋肉バカでも食いきれるかあ!」
「私も、自分の胸部を型取ったチョコを作ろうと思っております」
「私は、臀部を型取ったチョコを」
「アンタらのも十分でかいでしょうが、というかあのバカの影響受けすぎでしょネタに走るな!」
「ガトーショコラにするつもりだったけど、私の1/1フィギュアにしようかな」
「だからネタに走るな普通に渡しなさい!」
訂正。四人の怒涛のボケを一人が怒涛のツッコミでさばき続けるボケ飽和空間になっていた。
「真面目にやりなさい、真面目に」
「えー、でもいっちゃんきっと喜ぶと思うんだけど」
「わざわざチョコでおっぱい作らなくてもいつでもどこでもアンタのおっぱいはあいつのもので好き放題してるんでしょうが」
「うん、今日もねー、出かける前にねー」
「しれっと惚気ないで!」
「その観点でいえばマスターも私のおっぱい大好きなはずです。一回のセックスで、平均して三時間はずっと触っておられます」
「セックス事情語らなくていいから」
「ですが、最近のマスターはアナルの開発にご執心です。なのでここはお尻を」
「やめなさい!」
「奏翔は苦いの好きだから、ビターチョコでフィギュア作ろうと思ってる」
「あいつ珈琲にも砂糖いれないものね、じゃなくてフィギュア作ろうとするな!」
ツッコミながらも器用に手を動かしている茶髪の美少女は、ここ「ひめ」の店長の娘である媛(ひめ)一柑(いちか)だ。
一柑は器用に包丁でチョコレートを刻みながら、後ろで話しているホルスタウロスとゴーレムとオートマトンの友人たちを見た。
「アンタたち、自分のおっぱいやらおしりやらを型取ったチョコ作る気なら私もう手伝わないからね」
「はーい、お母さん。ごめんなさい」
「ごめんなさい、ママ」
「申しわけありません、一柑ママ」
「誠心誠意謝罪いたします、一柑ママ」
「誰がお母さんかっ、というか妙なネタぶちこんだの白湯よねあいつひっぱたく!」
心の底から叫びつつ、チョコを一心不乱に刻んでボウルに入れて湯煎し始める一柑を見て、何事もなかったかのように仕切り直して四人は手を動かし始める。
「じゃあ私はチョコケーキにしよ、ホールケーキ」
「オーブン最近新しいのにしたから使い方変わってるわ、教えるから待ってて」
「じゃあ他の準備進めておくね。ブラウ、ルチルも手伝ってー」
豊乃が慣れた手つきで卵を割り始め、ブラウと呼ばれた青い髪のゴーレムの美女とルチルと呼ばれた金髪のオートマトンの美女はその横に並び、割られた卵を泡立て始めた。
「私たちはチョコブラウニーを作ろうかと思います」
「ブラウはイチゴ、私はオレンジを加えてみようかと」
「果物類は冷蔵庫入ってるから。橙羽」
「うん、切っておくね」
冷蔵庫から果物を取り出して扉を器用に尻尾で閉じたオレンジ髪の美少女は、ワイバーンの夕飛(ゆうひ)橙羽(とうは)。
一柑の隣に移動して、橙羽も慣れた手つきで果物を切り始めた。
「ところで、一柑はどんなチョコあげるの?」
ズダァン、と一柑が持っていた包丁が勢いよくまな板に叩きつけられた。板チョコも真っ二つになる。
「誰が、あいつに渡すかあ!」
「誰も蜜とは言ってないよ」
「言ってないよー」
「言っておりません」
「同じく」
「そういうニュアンスで言ってるでしょうが!」
「うん」
「うんって!」
顔を真っ赤にして怒涛の勢いでがなり立てる一柑の声を聞いても、橙羽はどこ吹く風で果物を切っていた。
他の面子も特に気にした様子もなく、それどころか豊乃はどこか呆れたような口調で言う。
「だいたい、毎年なんだかんだ言いながらあげてるでしょ。今更否定しなくていいよ何年の付き合いだと思ってるのさ」
「……16、7年くらい?」
「たぶんそれくらいかなあ」
少し考えこんだ一柑の言葉に同意する豊乃。橙羽も頷いた。
「私もそれくらい?」
「私たちは10年ほどでしょうか」
「ええ」
ブラウとルチルが言う。
ここにいる面々は、みな10年以上の付き合いのある幼馴染だ。付き合いは長く、お互いのことはわかっている。隠し事はできないし意味がなかった。
「で、何渡すの?」
「……別に。チョコクッキーとかなら食べやすいでしょ」
観念したように言った一柑の顔を、橙羽がとこか心配そうにのぞき込む。
「いいの?」
「いいの!」
それよりも、と話を切り替える一柑。幼馴染たちは、そんな彼女の様
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