種山平は、車で山中を走っていた。ガテン系の仕事に就いている彼は今、他県への出張を終えて帰宅している最中だ。
出張で通り慣れてしまった道を走っていると「温泉宿 竜逢の湯」と書かれた看板が見えてくる。普段なら種山も気にせずにそのまま走り抜けていたが、出張の疲れに苛まれている
四十代の心身には「温泉」の二文字が非常に魅力的に映った。
「……明日明後日仕事休みだし、行ってみるか」
ハンドルを切って、宿の方へと車を走らせていく。そのまましばらく進むと、小さいが小綺麗な旅館が見えてきた。駐車場には車もそれなりに泊まっている。
種山も駐車場の適当なところに車を停めて、着替えなどが入っている鞄をもって宿へと入っていった。
「いらっしゃいませ」
種山が旅館に入ると、和服を着て狐耳を生やした美人の仲居が迎えてくれる。
「すみません、予約もしてない飛び込みなんですけど、温泉だけ入ることってできます?」
「はい、温泉だけのご利用も可能です。今ならお客様も少ないので、大浴場を御一人で使えますよ」
「あ、じゃあそれで」
「はい。少々お待ちください」
狐耳の仲居が内線でどこかに連絡を入れる。少し待っていると、大きな傘を抱えた仲居がやってきた。
「傘音さん、お客様を案内してさし上げて」
「は、はい……!」
傘音と呼ばれたその仲居は、狐耳の仲居よりも身長が高く胸も大きく和服の胸元から谷間がばっちり見えていた。
無造作に伸びている前髪のせいで目元は見えないが、それでもはっきりと美人とわかる顔立ちをしている。
「受付さんもですけど、ここの仲居さんたちみんな美人揃いですね。特にこの子、めっちゃ好み」
「あら、ありがとうございます」
「へ、え!?」
慣れた様子で種山の言葉を受け流す狐耳の仲居と違い、傘音は顔を赤らめていた。
「おっと、こんなおっさんに言われても嬉しくないわな。謝るから、セクハラで訴えるのは勘弁してくれ」
「いえ、この子はお客様のような方が好みなのでとても嬉しいと思いますよ」
「あ、あの……!?」
「はは、社交辞令でも嬉しいわ」
本当なんですけどね、という言葉は種山の耳には届かなかった。ふう、と息を吐いた後、狐耳の仲居が傘音に声をかける。
「ほら、傘音さん。案内して」
「は、はい。あの、こ、こちらです……あ、えっと、その、お名前は」
「種山です。そちらさんは?」
「唐傘おばけの、湯山傘音、と申します」
エントランスで狐耳の仲居と別れて、案内されるまま種山は旅館の廊下を歩く。傘音が歩くたび、和服越しでもわかる肉付きのいい尻が目の前で揺れていた。
歩きながら目の前で揺れる尻を堪能している種山に、傘音が尋ねる。
「あ、あのっ、種山様」
「うん?」
「あの、私が好みって、その、本当ですか?」
「ああ、湯山さんみたいに身長の高い女の子好みだな。……あ、やっぱり不快だったよな、すまん」
「い、いえ……、あの、嬉しいです……」
話しているうちに傘音の足が止まり、気づくと温泉の暖簾の前に着いていた。
眼福タイムは終わりか、と思いながら種山が暖簾をくぐろうとすると、意を決したように傘音が声をかける。
「あ、あの、種山様」
「ん?」
「その、当旅館は、お客様に三助のサービスをしておりまして。その、私でよろしければ、お背中お流しします……」
「おぁ、なら頼むわ。アンタみたいな美人に体洗ってもらえるなんて、ありがたい」
「で、では準備をしてきますので、お先に入っていてください……」
願ってもいないサービスに気分を昂らせながら、種山は暖簾をくぐり服を脱いで全裸となり、温泉に入った。
まだ明るいからか、受付で聞いた通り種山以外に利用者はいない。
「あー……、いい湯だ」
そう言って、種山は温泉に肩まで浸かって身を投げ出して堪能する。少しの間そうしていると、温泉の扉が開いた。
「あ、あの、お待たせしました……」
濡れてもいいように白い湯衣を着た傘音が、傘を持ったまま訪れた。湯衣が湯気で濡れて体に張り付き、彼女の肉感的な肢体がより強調されている。
「おぉ、んじゃあ、任せるわ」
「は、はい……」
温泉から出た種山は、洗い場の椅子に座ると腰にタオルを巻いて手を置いた。
傘音は傘を脇に置くと膝立ちになって、泡立てたタオルを種山の背中に当てて洗い始める。
「汗臭くてすまんな。出張帰りで」
「い、いえ、素敵な臭いだと思います……!」
「え」
「あっ……」
背中を洗っていた傘音の手が止まってしまった。
「汗の臭いが好きなのか?」
「は、はい……、あの、私、傘の時、大きすぎるって捨てられてしまって……、女将さんに拾ってもらって、人の姿を手に入れたんですけど、
やっぱり大きくて……まわりの子はみんな小さくて可愛
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