右を見ても、左を見ても、刺激的なデザインの水着に身を包んだ、魅力的な体つきの女性や魔物娘ばかりいる浜辺。
誰が名付けたのか、「セックスビーチ」と直球すぎる呼ばれ方をされているリゾートビーチに、水見(みずみ)夏(なつ)は訪れていた。
「ここが……本当に、すっごい……」
驚愕しながらも、夏は、周囲の光景に目を奪われていた。股間はすでに硬くなっており、海パンの下から存在を主張している。
「お、っと……」
股間を押さえる夏。勃起したまま動き回るわけにもいかず、刺激的な絶景に後ろ髪を引かれながらも、なるべく人の少ない方向へと歩き出す。
数分ほど歩き続けると、ビーチで遊ぶ行楽客や、彼女たちが立てたパラソル、海の家といった施設もなくなり、人気が極端にない場所に出た。
ふう、と息を吐き、夏は浜辺に座り込む。
「……さすがに刺激が強すぎた……」
脱力して、そのまま浜辺へ寝転がる。勃起も治まっていた。
目を閉じると、先ほどまでの絶景が夏の脳裏に浮かびあがってしまう。
「……思い出すだけでも勃起しそう……」
苦笑いを浮かべた夏は体を起こすと、硬くなろうとしていた堪え性のない自らの股間を押さえつけた。
「あら?」
自分以外の声が聞こえ、反射的に夏はそちらを見る。そして、浜辺で絶景を見た時以上に、目を瞠ってしまう。
青い髪はサイドテールでひとまとめにされており、浜辺で見たスイカほどに大きな胸と、細い腰、肉感的なお尻を、胸元が大きく開いた白のワンピースタイプの水着に身を包んだ女性がいた。
煽情的なデザインの水着と、それに包まれた今にもはちきれてしまいそうな魅惑的な胸に、夏は息と生唾を呑み込む。
「こっち側に男の子がいるのは珍しいわね」
「あ、え、は、はははじめまして!?」
あまりにも好みすぎる容姿をした女性の登場に、夏は呆気にとられた勢いのまま、話しかけてしまった。直後、夏は羞恥で顔を真っ赤にして俯いた。
女性は、夏の挙動に一瞬きょとんとしていたが、すぐに微笑みを浮かべると、夏に言葉を返す。
「ええ、初めまして」
「あ、は、ひゃい!」
呂律が回らず、返事を噛んでしまう夏。女性は気にした様子もなく、にこにこと笑っていた。
「うふふ、あっちの浜辺からこっちに流れてきたのかしら?」
「は、はい……!」
「そう。あ、よかったら、座る?」
浜辺に敷いたシートに座って、自らの隣を指す女性に誘われるがまま移動しながら、夏は彼女の言葉に頷く。
「あっちに施設が集中してるから、こっちのビーチにはあまり人が来ないの。どちらかといえば、近くに別荘や自宅を持っている層向けね」
「あ、そう、なんですか……」
「ええ。あ、でもプライベートビーチというわけでもないから、大丈夫よ」
女性はにこやかに笑いながら、少しずつ距離を詰めてくる。戸惑いながらも、夏は逃げることもできず、ただただ顔を赤くしていた。
「えっと、あの、じゃあお姉さんも……あ、名前、あの、俺は水見夏っていいます……」
「夏君ね。私は湊(みなと)潮里(しおり)。この近くに別荘があるの」
名前を呼ばれて、夏は思わず潮里のほうを見る。
いつの間にか、密着といっていいほどに近づいていた潮里にじっと見つめられ、夏は動けなくなった。
「それで、夏君はどうして、この浜辺にきたの?」
「えっと、それは、その……」
「この浜辺が、セックスビーチ、って呼ばれてるの、知ってて来たのよね?」
潮里の頭と尻から、角と尻尾が生えた。その姿は、彼女が魔物娘、サキュバスであることを示している。
「ねぇ、夏君。よかったら、」
「あ、あああの、湊さん!」
舌なめずりをしながら笑いかけてくる潮里の言葉を遮るように、夏が叫んだ。
思わず目を丸くして、動きを止めてしまう潮里。立ち上がる夏。
「あの、よければ、俺とエッチしませんか!」
顔を真っ赤にして、ところどころで噛みながらも、そう言って、夏は手をさし出した。
「……あ、あああの、ですね、俺、その、今まで女性に声かけれたことなくてですね、なので、その、自分を変えたくてデスネ、なので、ナンパするっていうのが今年の夏の目標でして、エロいこともしたいんですけど、成功にしろ失敗にしろ、自分を変えるきっかけになるかと思いましてあの」
「……ふ」
聞かれてもいないのに語り始めた夏の弁明を聞いて、潮里が、ぷ、と噴き出して笑い始める。
「ふふ、そう、なるほど、そうなの!」
「あ、は、はい……」
「そっかぁ、受け身で流されちゃう系の可愛い子かと思ったけど、そう、意外と積極的なのね!」
「は、はい……?」
突然笑い出した潮里に、夏は戸惑いながらも相槌を返していた。
そしてひとしきり笑った後、潮里は、まっすぐに夏を見つめる。
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