(うわー、すごく幸せそうな顔だなぁ。って当たり前だけど)
目の前にまぶしく照らされるのは、スポットライトに当てられた新郎新婦。
見ている俺自身までもが幸せである。
それもそのはず、純白のタキシードを纏った、きりっとした笑顔が特徴の新郎は俺の大学時代の後輩の水那月だ。
今では俺と同じく社会人として、とある中流企業で頑張っていると言う話をよく聞く。
そんな彼は身長が低く、物静かだが、顔がそこそこよく、とても真面目で気配りが上手な、いい性格をしてる奴だ。
その性格の良さを見つけることができたらしく、真っ白いタキシードを着こなしている彼の隣は目に優しい紫陽花色のウェディングドレスを身につけた新婦のセイレーンが涙を溜めながらも彼に微笑んでいた。
陽気で派手好きなセイレーンに似合わず、今は清純さが全面に出ており、これはこれでかわいく、美しい。
そう、彼らは今結婚式を挙げているのだ。
親しい人の結婚式を見るのも、祝福するのもごくごく当たり前のことで、一代イベントという話でもあるが。
「うわぁ、見てるこっちがうらやましいなぁ」
ふと、隣で愚痴っぽい呟きが聞こえた。
「・・・あゆ、それは愚痴か」
「ちがうって、本当に羨ましいんだってば」
赤いパーティドレスを着た、少し濃い化粧を施している「人間」のあゆは心外だと言わんばかりに頬を膨らませて怒った。
見た目に違わず、風俗というお仕事をこなしている(知ったのはつい今日の話だ)彼女だが、これでも高校時代ではグループでだべっていた仲良しグループの一人なのだ。
そして、目の前にいる新郎もその仲良しメンバーの中に入っている。
新婦の方は面識がないのだが、あゆはどうやら別のところで知り合ったバンド仲間だという話だ。全く世間は狭いものだと痛感する。
魔物娘が当たり前のように人と共に日常を過ごす今の社会において、彼女のような人間の女性が風俗で働くと言うことはなかなか貴重であるらしく、金稼ぎがいいという話だ。
だが、そのお金は彼女の人間としてのあらゆる「日常にあるもの」を犠牲にして得られるものであり、結婚もその犠牲としている為、あきらめているようでもある。
「あのね、ユノンちゃんと違ってあたしは結婚なんかとてもじゃ叶わないから・・・すごく羨ましいわけよ」
そう彼女はため息をつき、ユノンという名の、新婦のセイレーンを見ながら冷えた水を一口飲んだ。
彼女自身、そろそろ普通の生活をしようと、風俗嬢を辞める一歩手前まできているが、職業柄上、浪費癖が治らないらしく、辞めるに辞められないと言う話らしい。
その上、結婚しようにも風俗嬢という肩書きを持っているため、相手が見つからないと言う。
「八太守、あんたもあの方と結婚してるでしょ。私も魔物娘になった方がいいのかねー」
あゆはいまの雰囲気と相反するほど落ち込んでしまっていた。
「あー・・・、なんかすまないな」
あゆの様子を見て、なんだか複雑な気持ちになった。
八太守(はたかみ)こと俺は水那月よりも早い、既婚者だ。
俺が結婚したときもあゆは来てくれて祝福してくれたが、その当時は彼女がどんな仕事をしてたのか把握できてなかったため、今更ながら申し訳なく感じる。
「ううん、気にしないで。まぁ、これはあたしが選んだみちだから―――」
「―――それでは新郎新婦に誓いの宣言を行いますので、皆様お静かにお願いします」
おっと、いつのまにやら進行が進んでいたらしく、司会者が注意を促していた。
その声に気が付いたのか、気にしていなかった、ざわめきや談笑の声が急に無くなり、時間が止まったかのような静けさが場を支配していた。
「―――水那月殿。これから先ナニがあっても、貴方は伴侶を愛し、寄り添い、激しく営み、堕落していくことを誓いますか」
神父、もとい、神母を担っているダークプリーストが慈しむように誓いの確認をとった。
いくつかおかしい部分はあるが。
「堕落以外、誓います」
まじめな顔で堕落することは誓わなかった後輩を見て、思わず笑いそうになったのは内緒だ。あっ、ダークプリーストが小さく舌を打ちやがってる。
「・・・ユノン殿、貴女は夫のみを愛し、夫のためにあらゆる事を尽くし、夫を堕落させることを誓いますか」
・・・おい、懲りてないばかりか、今度は新婦に誓わせるつもりか。
「はいっ・・・全て、誓いますっ!夫のためならっ♪」
高らかにオナニーして歌うように、彼女は誓った。
流石魔物娘。ブレてねーぜ。
水那月、激しくドンマイ。
「そ、それではあぁっ!新郎新婦はぁっ、誓いに倣ってぇっ、あぁんっ、愛のキスをおぉぉんっ!
#10084;」
神母は股を弄くりながら宣言し、イッた。
セイレーンの魔声に当てられたとはいえ、台無しである。
しかし、その魔声に当
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