シャイで口数少ない骸骨と、

時計の針が7時を指していた。

この時間帯と言えば、大概の家庭では夕食、夕食を早めにとる過程であればテレビを見るなり学校の勉強でもするなりといった時間帯である。
まぁ、夫婦やカップルはその常識から外れてそれどころではないだろう。

実際の僕らの場合もそのカップルに当てはまるのだが、今の所は前者である。いまの所は。



「静琉、そろそろ宿題が終わりそうだから、もうちょっと待ってて」

机にある、一枚の紙に書き込まれている問題をにらみながら、僕は少し焦りの混じった声で言った。

「……ん」

その声に反応して、抑揚のない、静かな一語―――おかしな言い方だが、一言以上に短く、単語という概念を持たないので、便宜上こう言っておく―――が後ろから聞こえた。


その一語が聞こえた場所には、彼女がいる。

彼女は僕のベッドの上で最近流行りのライトノベルに読みふけているが、その一語のあとに『カクカク』と鳴らして答えた。

柔らかさが見てわかる、白黒の縞模様の下着を纏ったお尻がスカートから覗いているのに全く気付くことなくうつ伏せに寝そべっている様子から、とても寛いでいるように見える。あっ、こっちを見ている。

「・・・・・・がんばって」
「あ、あぁ」

ぽつりと言うなり、再びラノベの方へ目を向けて読みふけていた。
おもわず縞パンをまじまじと見てしまい、思わず声がうわずってしまったが、恐らく気づいてないか、気にしてないのだろう。

人間の少女や羞恥心の高い魔物娘なら、「どこ見てるのよ、このスケベっ!///」とスカートを押さえて怒鳴るだろうし、それ以外の魔物娘なら「あっ、私のパンツ見て興奮した?♪」といって見せびらかしたりするだろうけど、彼女の場合はどちらでもないのは種族故である。


彼女は健康的とはとても言えない、白い胴体と顔の右半分と色素の薄い白灰色の長い髪以外、やや青味がかった灰色の骨で出来ている魔物娘、いわゆるスケルトンである。

ただ、人体そのものの骨ではなく、一部分が人と異なる形状をしていたりしているが、服や下着を着るのにあたっては魔力の力で形状を変えるなり、骨を外すことができるので苦労することはないと言うらしい。
そんな彼女は白いドクロのプリントが大きく載った黒いロングTシャツに無地の黒いフリルスカートで脚の骨しか確認できない。

まぁ、脚の骨でも確認できれば、人間ではないというのは明らかであるけれども。

その種族―――アンデット族に漏れず、彼女は感情に乏しい種族なので、抑揚のない声や、反応が薄いのにも納得がいく。



そんな彼女の名は、神戸 静琉(こうべ しずる)。


彼女は、白骨化した死体から生まれた訳では無く、両親から産まれてきた子である。
そのため、生まれつき人間らしい感情を備えているが、それでもやはり野生のスケルトンと変わりなく普段からぼんやりとしている。

そんな彼女を僕は大好きだ。いつでも隣にいてあげたいし、いつでも彼女の事を想って自慰だってできる。

だが、そんな気力を今宿題に向けてぶつけてやっている。
少しでも早く、いつもチンコを扱く手に握っている、このシャーペンが手から離れるまで。



「・・・よしッ宿題終わったッ!」

「……第三部完」

その気力のおかげか、いつもよりかなり早く宿題が終わり、嬉しさのあまりテンションが上がってしまった。
そのテンションが彼女にも伝わったのか、嬉しそうに何かつぶやいていたのが聞こえた。



今宵から明日は休日。

ひたすらに青臭く甘酸っぱい学生カップルにとって、この日ほど嬉しい日は無いはずだ。
宿題さえ済ませれば、思いっきり遊ぶなり、いちゃつくなり、腰と腰をぶつけ合うなり、好きに出来るからだ。


けど、僕はすぐにがっつく様なことはせず、寝そべっている彼女の隣に同じように寝そべった。

「静琉、待たせてゴメンね」

謝りながら、僕はそっと彼女の頭を撫でた。

死者とは思えない、とても滑らかでさわり心地の良い、一本一本が整えられている白灰色の髪は僕の指を丁寧にお出迎えするかのようにそのさわり心地を提供してくれた。

「……待ってない」

相変わらず抑揚のない、小さなその声は、しかしながら僕の耳に甘く囁く。しかし、その甘い囁きはさながら甘味を控えた紅茶の様な、甘ったるくない上品さが感じられる。

彼女の口の端を見れば、誰が見てもわかるように吊りあがり、真っ白な頬に桃色のチークがほんのり塗られているその顔に、その程良い甘さと上品さが漂っていた。

「そっか」
いつもよりも機嫌がいい彼女を見ているとこっちも嬉しくなる、というか、にやける。

普段のへの口の仏頂面な彼女も可愛いっちゃ可愛い。
だが、時折見せる笑顔はそれ以上に可愛く、貴重なのだ。

そんな彼女の笑顔を見ながら、頭
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