ようこそ、出狐狸亭へ。

最近になって、友人がやけにご機嫌だ。

どうしたのか問いつめると、「おいしい麺屋を見つけた」ということらしい。
ご機嫌になるほど美味しいかったのだろうか。

味にうるさいオレにとって何となく気になり、そいつに店先を教えてもらおうとすると、変な質問が返ったきた。

曰く、「恋人はいるか?」と。

余りに関係ない質問なので「はっ?」と気の抜けた声が出てしまい、もう一度店先を訊いてみたが、同じ質問が返ってきた。

質問を質問で返すなと親に言われているだろうが。

しかし、彼女いない歴=DTなオレなので「いない」と短くいった。
するとそいつは満足そうに頷き、その店先をやっと教えてもらった。

腹が減るどころか、腹が立ってきたが、そいつは「まぁまぁ落ち着け」と宥められた。


何とか落ち着くと、そいつも店に行く前はオレと同じ気持ちだったらしく、騙されたと思って行ってみたようだ。 
しかし、行ってみた後では誰もが満足して帰ったと、ソースは俺と胸を張って言いやがった。

とりあえずアームロックをかけてやると友人はガアァァと野獣のような悲鳴をあげた。



しかし、そんなに良い店なのかと思い、休日に友人に言われた店へ足を運んでみることにした。



某駅から徒歩5分。


程なくして、例の店の前に到着。

「出狐狸亭」と白くポップな字体で書かれた紺色の暖簾がはたはたとはためいていた。(読みがなが小さく書かれてあり、デキたていと読むようだ)

外見から見れば、出来て間もないと言う感じの、それなりに大きな店だと感じる。

○○支店と書いてある辺り、それなり規模のあるチェーン店だろうか?そうなれば味の方が悪い意味で少し気になる。


しかし、味を確かめるには実際の食べてみなくてはわからないのでいざ入店。



「いらっしゃいませー!」


早速威勢のいい女性の声が店内に少し響いたが、すぐに店内のガヤガヤとした雑踏でかき消された。

なるほど、見ればなかなかに繁盛しており、店内で席が空くのを待つ人が数人。
客層からみると、どうも食べ物にお金をかけたくないが満腹感を感じたい男性が良く利用するといった、いわゆる吉野●をような感じだ。


もしくは、ここの店員を見に来るために来たような…何だか不安になってきたぞ。


「少しお待ちになりますが・・・よろしいでしょうか?」


ネガティブ思考に陥ったオレの前に声が聞こえた。

見上げると、和服に割烹着の10〜20代と思われる、幼さがまだ目立つ刑部狸の店員がこちらを伺っている。
シンプルながらもとても似合っており、一種の可愛らしさが溢れている。

うん、これはこれで「美味しい」。


時間のほう大丈夫だから待っておくよ、と軽く言うと、ご協力ありがとうございます、と深々と頭を下げた拍子にしっぽがピコピコと横に振っていた。
何これかわいい。

しかし、店員というわけで、頭を下げた後、せわしなく店内を駆け回っていた。
すこし時間がかかるようなので、オレはその子の働く姿に目を追いかけていた。最近の狸は昔ほど狡猾では無くなって丸くなっているという話をよく聞くが、これも計算されつくした演技かもしれないともとれる。
まぁ、例え演技でも可愛いものは可愛い。


十数分経った頃、ようやく席が空いたらしい。


「オマタセシマシター、コチラヘドウゾー!」


どう見ても○学生にしか見えない狐火の案内により、空いた席に座った。
小○生がここに働いて大丈夫かと思ったが、店員のほぼ全員が魔物娘らしく、どう見ても小学○にしか見えなくても年齢的には大丈夫らしい。


しかし、いつまでも店員を見つめるわけにも行かないのでとりあえず注文欄を見てみる。

まず1P目。

うん、「普通の品書き」と書かれている辺り、メニューの方も標準的である。

わりかし種類が豊富で、うどん、そば以外にも、寿司や丼物も用意されており、値段の方もリーズナブル・・・いや、食事のみと書かれている方はその半額だ。

食事以外の何があるのだろうか。


そんな疑問をすぐに理解できたのは・・・・・・2P目以降だった。

1Pと似たメニュー構成で、極めてありふ・・・・・・れていない、目を疑うような品書きが書かれていた。

ボテそば、はらみうどん、妊娠そばetc。

誤字か何かだと思いたいが、近くに通りかかった妖狐の店員からは「妊娠そばがオススメですよー♪」と満面の笑顔で言ってきやがった。
食べる前に衝撃を受けたのはこの店が初めてだ。


・・・・・・嫌な予感がプンプンしたが、いっそのこと頼んでみるか。

何を血迷ったのだと叱責する理性の声を振り切り、意を決して「妊娠狸そば(お値段驚きの500YEN)」を注文した。



少しして、先ほどの妖狐のお姉さんが「お待たせいたしました
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