episode1.5:間幕@

「あ”ー……疲れた〜」

バフンと行商人アイリス・フォンローゼンは今日一日の用事を済ませ、あらかじめ予約しておいた宿に帰ってきて直ぐ、ベッドへ身を沈めた。背中を包み込むふかふか感がたまらなく心地よい……このまま目を閉じればすぐにでも夢の世界へ旅立てるだろう。

「なんて声だしてんだ……ほら、上着ぐらい脱いだらどうなんだ」

入口横に目を向ければカグラが腰回りの紐をほどいて、上着を衣紋掛けへ袖を通していた。変わった様式の服だ、少なくともこの地域では見たことない。
高級そうだな……と考えてしまうのは商人としての性だろうか
それにしても以外に几帳面なやつだ。アイリスは自分の所持物に関してはかなり無頓着な性格なので、脱いだ上着などは椅子の背もたれなんかに投げっ放しにすることなどざらにある。
自分だけくつろいでいるのもナンなのでアイリスも上着を脱ぎフックへ掛けておくことにした。

「そういやその変装、まだ解かないのか?」
「あぁ、そう言えばそうだった、もう出掛ける予定は無いよな?だったら耳と尻尾出しちゃうぞ」

外を見ても日は完全に落ちている。食事なんかは後で主人にパンとスープでも貰いに行けばいいから……。

「どうぞ」

そう言ってちょっと離れる。あの煙たいのは嫌だからな。
カグラはどこからか葉っぱを一枚取り出し頭に載せた。
それからドロンを可愛らしく言うと今朝ぶりに見た丸い耳とふさふさした尻尾はぴょこっと出現した。

「んー、やっぱこっちのほうがイイネー」

と、ぐーっと背を伸ばしながら言う。人間に化けている時も耳と尻尾以外の容姿は変わりない。だけどなぜだろうか、今のありのままの姿の方が魅力的に思えるのだ。
人外の…魔性の魅力?ってやつなんだろうか……。そんな事を数瞬見とれながら考えていた。

「……そうだな」

そんな自分が少しばかり恥ずかしくなって目が合う前に視線を逸らす。

「あら、アイリスにこの良さがわかるのかしら?」
「はっ、これでも商人の端くれだぜ?毛皮の鑑定だって出来ないわけじゃないの…さ……」

しまった、と思った時にはもう遅い。気恥ずかしさからつい強気に言い返してしまった、まだ一日の付き合いだが口ではカグラに勝てないことは分かっていたのに……それも恐ろしいのは軽い煽りではなくそれに反応した時の言い返し、その反応が大きければ大きいほど、帰ってくるダメージは乗倍に大きくなるのだ。

「ほぅ……」

にたぁ…と、まさに悪人の微笑みがアイリスを捕えた。

「言ってくれるじゃないのさ……」

狭い部屋だ、じりじりと壁際まで追いつめられてしまった。黄金色に輝く瞳がアイリスを下から突き刺してくる

「じゃぁ、アイリスは一体、私にいくらの価値を付けてくれるのかしら?」

遂にはその小さな体を密着させてきた。
腹部のあたりになにやら柔らかい物が……あ、こいつ着やせするタイプなんだななどと頭の隅で考えつつ

「わかったよ、俺が悪かったから……勘弁してくれ……」

肩に手をやりカグラを遠ざける。なんだかんだ言って純情なアイリスには、少し刺激が強すぎたようだ、頬が若干熱を持っているのを感じていた。

「そんな顔しなさんな、私がいじめてるみたいじゃないか♪」

カグラは御満悦の様子。
この調子じゃ先が思いやられる…、早めに慣れないとなと思いつつ、もうしばらくはこのまま振りまわされるんだろうなと解ってる自分に、アイリスは呆れてしまうのだった。

「そ、そんなことよりだ、飯にしようぜ、ちょっと行って貰ってくるから……」
「ストップだよ、アイリス」
「え?」

止められてしまった……このタイミングでの意図の読めないストップ、かぐらも数瞬前とは違い少し神妙な顔つきになっている。

「君は今何を貰いに行こうとしたんだ?」
「なにって……食事、こんな宿でもパンやスープくらいは作ってあるだろ」

ここまで言って、アイリスはカグラの耳が目に入った。
あぁ、もしかしたら……
昼間は手持ちの肉や果物を食べていたが、あれは魔物にとって主食とする物ではないのかもしれない。

「そうか、これは俺が悪いな、すまなかった」
「いいのだよ、私もお腹すいてるし、まぁ…パンもスープも食べられる物だけども……」
「……?」

こほんと一つ咳払いをして、カグラはすこし赤面している。
怒らせてしまっただろうか……?いやそういった様子ではない、どちらかと言えばどこか恥ずかしそうにしているような気がする。

「こんな御馳走が目の前にあるってのに……わざわざパンってのも……」
「なんだ、よく聞こえないんだが」

俯き気味にぼそぼそと言っている。
そして意を決したのか、面を上げてこう言った。

「アイリス、君に魔物の主食を教えてあげよう」
「は、はい…」
「それはな……」
「……」
「アイ
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