空を埋め尽くす木々の枝、木漏れ日の降り注ぐ緩やかな坂道は昨日とはうって変わって穏やかな気候だった。
行商人アイリスは荷馬車の横並びから進めるのを手伝っていた。
もちろん自分の体重分負担を無くすのが目的だが、馬車を引く愛馬コモンズには丸一日寂しい思いをさせてしまったのでそれの返しというのも理由の一つだったりする。
「まぁーだーかぁー」
そんな中、業者台に寝そべる娘カグラはこっちの苦労も知らんぷりでとぼけたことを聞いてきた。
「そんなに早くべリアルへ行きたいならなぁ、お前も、手伝ったらどうなんだ、あぁ?」
「嫌よそんなこと、さぁ頑張れ、頑張れー」
こちらには顔も向けずに言う。
さっきから馬車が揺れるたびに素っ頓狂な声をあげてる癖に……生意気言ってくれる。
「せめて、降りるてくれるくらいの、優しさを見せてくれたって、いいんじゃないか?」
「んー…私魔物だからね、あいにくと優しさとは無縁でいたいのよ」
「……よく言うぜ、全く」
それはそうとアイリスは丸一日を無駄にしている、はやく目的地まで行きたいのはアイリスも同じだ。
まったく……本来なら3時間ほどの道のりだっていうのに、どーしてこんなことに。
「ふんっ、おやまぁ汗だくじゃないのさ」
顔だけひょっこりと出して今さらな事を言ってくれるじゃないか。
「ぬかせっ、はぁ、事故とはいえ一日潰してるからな、少しでも、取り戻さないと」
「そう言いなさんな、せっかくのイケメンが台無しだぜ?」
ずるっ
と、足をもつれさせてしまった。
突然なんてことを言いやがるんだこの小娘は……足をばたつかせて『初心だなw』などとけたけた笑ってやがるし……。
「なーにずっこけてるんだ?はやく押せよー」
「くぅっ」
ついた泥を払い、元いた馬車横へ並ぶ。
「お前だって……わがまま言わず黙っていれば……かゎぃぃ…んだから……」
お返しにと言い返そうとするも、語尾が尻すぼみになってしまった。
それによってカグラはよりけらけらと大笑い、そこでようやくアイリスはカグラの暇つぶしにからかわれていただけなのだと気付いた。恥ずかしさで頭が下がってしまう……ほんの数時間の付き合いだが、明らかに年下に見えるのにこちらがいいように振りまわされている気がする……。
「ほんに面白い奴だなお前さんは♪」
「ふんっ、そんなことよりだ、カグラお前そのまま村へ入るつもりか?こっちとしてはあまり魔物と一緒に旅してるなんて話が広まると困るんだが?」
「あぁ、そーだすっかり忘れていたわ」
少しばかり良心が痛む言い返しだったが、カグラは全く気にした風もなく続ける。
「うん、面白いものを見えせてやろうじゃないか」
「……?」
そう言うと懐から一枚の……葉っぱ?を取り出して、よく見ててとそれを頭の上に載せた。
「ドロンっ」ボワン
「! げほっ、げほっ…おい、なにが……」
カグラの声とともに溢れた煙に少し身を引いた。彼女の全身を包む程度の煙は風に流されて消える。
「これぞ我らが秘伝、人化の術〜♪どうよ!」
おぉ…と声を漏らす。得意げな顔をしているカグラの頭ではさっきまであったはずの丸い耳が、お尻では尻尾が消えていた。
「これなら文句ないだろぅ……っておい、なにやってんだ!」
「いや…凄いな、ホントに消えているのか?」
一体どういう原理なのだろうか。
若さゆえの好奇心に取りつかれたアイリスは業者台に乗り込みカグラの頭をわしゃわしゃと撫でまわすし覗き込む。アイリスの顔が近付くほどカグラの顔は赤くなっていき、それが8cmを切ったところで……。
「近い!」ゴッ
…………
「さて、ようやく到着だな」
「ごくろうさま」
またそっけなくなっちまった…。
そんなあからさまに態度変えられたらこっちが悪いみたいじゃないか、いきなり頭突きかまされた俺の方が明らかに被害者…だよな……?
「で?お前はこれからどうするんだ、それ売るんだろ?どっかに露店でも出すのか」
「そんな目立つことするわけないだろ、売るっていってもこの村での客は一人だけだよ」
「…?どういうこった」
「知り合いとこの村で待ち合わせているのさ、誰かさんの所為で一日ずれちまったけどね」
うっ…そう言われると少しばかり罪悪感が……。
「ならここで一旦別行動か?」
「んー、いやついてくよ。約束が24時間ずれたとして、まだ結構時間は余ってるし」
「そうかい、じゃぁまず地主さんのお宅までいってみるか」
途中、農作業に勤しむ村人に道を聞き数分馬車を走らせ地主のもとへ向かう。
そして到着したのは林檎の木の生茂る斜面の下に位置する、大きくは無いが風情のある一軒家だった。
呼び鈴を鳴らし、出迎えてくれたのは口が隠れるほどの白ひげが特徴で優しそうな眼差しをした初老の男。ボ
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