流浪のギャンブラーは、ある賭場の噂を聞き、その賭場へ招待されるという噂の酒場にやってきていた。
その賭場とは、オークの群れが形成する賭場。オーク達は酒場の男にどこからか集めてきた財宝と「少しの対価」を賭け合わないかと持ちかける。
その「少しの対価」とは男達の所有権。男側が負けてしまうと、オークに所有権を奪われ、死ぬまで犯され続けるのだと言う。
今まで命知らずの男やオークの尻に敷かれたい男が挑むも全て返り討ちにあい、オークの群れを賑やかにさせ続けてしまっていた。
彼はそのオークの集落の近隣にある人間の村の長より依頼をもらっていた。
曰く「オーク達が増長して自分の村に危害を加える前に打ち負かしてほしい」と。
「面白いじゃないか」
流浪のギャンブラー「レッド」はそう一人で呟き、酒を煽っていた。
「そこのお兄さん、ギャンブルに興味ありませんか?」
柄にも合わない丁寧な姿勢でレッドに接触してきたのは一匹のハイオークであった。「話を持ちかけるのは普通のオーク種だったはず」とレッドは訝しむ。
「オークの賭場の噂を聞いてね、ここで飲んでればやってくるかと思ってな」
レッドは単刀直入にそう切り出す。お互いの利害が一致しているのだ。面倒な話なんか不要であると考えていた。
「話が早いな。こりゃあ難敵かもな」
ハイオークは丁寧な姿勢を消し去り、真面目に言い放つ。
(今までの男とは全くオーラが違う…間違い無く手慣れ…しかし、「私達」のイカサマやテクニックの前では奴も無力だろう!必ず、その済ました顔をアヘアヘ言わせてやるからな!)
ハイオークはそう考え、目の前の男をどう調理しようか考えながら、男にルールを説明し始めた。
「ルールは単純、ポーカーで、お互い5万点ある持ち点をゼロにした方の勝ち。ルールはホールデム。最低掛け金は800。私が賭けるのは財宝、君が賭けるのは『少しの対価』。って事でここにサインをお願いできるかな」
「足りないな」
その瞬間、ハイオークの目に動揺が見られた。
「一体何が足りないってんだい?!」
ここまで、幾分紳士的だったハイオークが、素の粗暴な姿を隠さず問い詰めて来る。
「足りないな。ここの契約書に小さく『男の所有権』って書いてあるじゃないか」
レッドはあくまで冷静に、そう問い詰める。
「俺は今後の人生を賭けるというのに、お前は負けても金しか失わず、今後の人生は何も失わない。それでは足りない」
「足りないって言ったって、私は財宝を賭けるんだぞ!お前は金を一切失う事無くこの賭けができるんだ!当然の対価だろう!」
ハイオークはそう抗弁する。確かに、釣り合いを考えるならば男側には何も賭ける物がない以上、「所有権」という重いものを賭けるのは必然である。しかし、
「金ならある」
レッドはそう言い放ち、目の前に袋をどっさり置く。中には金貨や装飾品が沢山入っていて、中身を確認したハイオークもこれには驚きを隠せなかった。
「今まで俺がギャンブルで稼いだ財産だ。これとお前の財宝、そしてお互いの所有権を賭けるって事で良いな」
ハイオークは動揺する。確かに、自分が負ける要素は殆ど無い。しかし万に一つだけ、負けてしまったとするならば。自分は目の前のギャンブラーの所有物となり、一生彼に奉仕をしないといけない。
「これでいいな、駄目だと言うんなら、俺は別の賭場に行くだけだ。人には奴隷になるのを強いておいて自分が奴隷になる気概の無い人間と賭けても面白くないし、どうせその程度なんだろうからな」
「わ、わかった。それで飲もう。後で後悔して、ギャンギャン泣いたって許してやんねえからな!」
ハイオークはリスクを計算する前に、売られた喧嘩を買ってしまう。最も、目の前の人間を運命の人だと認識している以上は、勝負を避ける選択肢等無いに等しかった。
2人は、契約書に「負けた陣営は人物、魔物の所有権と財産を勝った陣営に差し出す」という一文を追加して、お互いそこにサインを交わした。
運命の日。レッドが指定された場所、山奥の集落に入る。そこには、藁葺きの家や木の家等に暮らす沢山のオーク夫婦が事に勤しんでいた。
オークに蹂躙される男達。響き渡る嬌声。それらを見てもレッドは、
「まあ、ギャンブルだ。負けて命まで取られないだけマシだろう」
と構えていた。
木で作られた「オークの賭場」と書かれた家にレッドは入る。酒場で話していたハイオークと、彼女よりは背の低いもう一人のハイオークが出迎える。
「さあ、奥に入って早速始めようじゃないか」
酒場で話していたハイオークがレッドを奥に誘導する。木でできたテーブルと椅子があり、その隣には同じく木製のベッドがあった。
テーブルには
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