憧れのセンパイと

 日曜の昼下がり、プールサイドのベンチで休んでいる俺は目の前のレーンを泳ぐセンパイの姿をぼうっと眺めていた。ドルフィンキックで滑らかに水を切っていく姿は人魚のようだ。クロールで端まで泳ぐと鮮やかに体を半回転させ、またドルフィンキックを始める。余裕のあるゆったりとした泳ぎだが、周りで泳ぐ人を次々と抜かしていく。それも当然のことだ。センパイは元高校水泳部のエースだったのだ。趣味やら健康のためと中年以上の人も多いこの市民プールでセンパイと同レベルの人などそうはいない。一方で1学年下の俺も同じ水泳部だったが、センスがなかったようで素人に毛が生えた程度にしかならなかった。それでも3年間の活動のおかげでそれなりに筋肉質な体になったのには感謝している。でも、俺にはそれ以上に得たものがある。

「カズキ、いつまで休んでんだよ。体力落ちたんじゃないないのか?」

センパイがプールから上がり俺の横まで来ていた。水泳ゴーグルを上げながら涼しい顔で息をついている。

「帰宅部なんで、さすがになまりますよ」

俺とセンパイが通っている大学には水泳部がなく、今は二人とも帰宅部だ。

「なにぃ
#12316;?それは先輩として見過ごせないな。よし、また来週ここに来るぞ!っていうかもう毎週来るぞ!」

「えぇ
#12316;」

「えぇ
#12316;じゃない!」

腰に手を当ててセンパイがすごんだ。

「……」

「ん?どうなんだ?」

「プッ」

センパイの保護者みたいな態度に思わず吐き出した。

「フフッ」

センパイも笑みを浮かべる。切長の目を細めた優しい笑顔だ。

「もう行くか?」

「はい」


 二人でプールを出てシャワールームに来た。俺が手短にサッと浴びて出ると、隣で先輩はまだ浴びていた。サラサラとした綺麗な黒髪をかき揚げながらシャワーを浴びている姿は、男の俺でもホレボレするくらい絵になっている。色白の長身でスラリとした長い手脚は細身だけど引き締まって筋肉質だ。肌には体毛がなくて滑らかだ。胸毛もすね毛もしっかりある俺とは大違いである。ガゼルのような脚とはきっとこういうのを言うのだろうと一人思っていると、センパイがシャワーを終えて出てきた。水泳部時代に使っていたピッタリと密着する競泳水着にはやや膨らみがある。まあ、センパイも男だから当然なのだが、中性的なセンパイにアソコがついているのを見ると何か不思議な感じがするものだ。ちなみにセンパイはアソコもキレイだ。亀頭がピンク色でツヤがあるのだ。…いや、別に変な意味はない。ただ、そう見えただけの話だ。

センパイは俺が待っているのを見ると、相変わらず早いだのしっかり身体を流しておいた方がいいだのとプチ説教を垂れながら更衣室に向かっていった。



更衣室で体を拭くと、センパイは丸椅子に腰かけ体に保湿クリームを塗り始めた。肌が弱いらしくまめに塗っているそうだ。丹念に全身に塗り込み自分の体を確認すると、センパイが俺の方を見た。

「カズキ、悪いけど背中塗ってくれる?」

「いいっすよ」

「ありがとう」

センパイがクリームの丸い容器を手渡し背を向けた。

「厚めに塗ってくれる?」

「うっす」

俺は白いクリームをすくって手に取り、センパイの背の全体に点々とつけ、それを手の平で満べんなく伸ばした。背筋でできた溝にも筋肉に沿ってしっかり塗り込む。きめ細かいキレイな肌だが、よく見ると少し赤みがかった部分もある。

(こういう所はよく塗った方がいいのかな)

肌を観察して荒れてる部分が他にないか探していると

「何かさぁ
#12316;、さっきから手つきヤラしくない?」

センパイが眉をひそめて怪訝な顔でこちらを向いた。

「えっ!?そうっすか?」

「うん、何というか女の背中にオイル塗ってるエロ親父って感じ」

「なに言ってんすか!センパイにこき使われてる可愛い後輩に!」

「自分で可愛い言うなし!むさ苦しいエロビデオに出てきそうな顔してるくせに」

「そりゃあんまりっす!俺、もうやめます!」

俺はセンパイの背中から手を離し、顔をぷいっと横に向けた。

「ゴメンゴメン!冗談だって!!」

センパイが笑いながら謝る。

「いや、別に怒ってないですよ。でも、俺のことそんな風に思ってたんですか?」

「うーん、ちょっとだけね」

「ガーン!!ショックです…」

まさかの言葉に少なからず傷ついていたが、しかしクリームであやしく光っているセンパイの体を見ていると、本当にオイルが塗られた女性の体のように見えてきた。胸筋でわずかに膨らんでいる胸が女性の胸に見えなくもない。そんな風に思っていると不意に

「でも、確かにセンパイの体ってなんかエロいっすよね」

意図せず、ぼろっと言葉が出た。

「えっ….」

センパイがこ
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