ええ、俺たちは勝ちましたよ? 街は救われましたよ? ……物語みたいにそこでめでたしで終われればいいんだけどな。ホントに。
「で、いなくなったのは何人だって?」
「第1、第2部隊から7人、第3が2人、第4が2人に、第5が1人。全隊員52人のうち、戦中失踪者は合計12人だ」
「うわ、今月多いな……」
「三ヶ月ぶりに10人を越えたな」
俺と副団長は、二人で被害状況の確認作業をしている。
昨夜の戦いの後、兵たちはいる奴の確認だけして全員帰らせた。太陽はとっくに顔を出してるってのに、俺ら二人は不眠不休。
眠い、疲れた、逃げたい。戦いに勝って街を守ったのに亡命したい。仕事しなくていいならそれでいいや……。いや、むしろ亡命することによって団長としての俺という存在はこの世から消えて俺はそのしがらみから解放されてアハハハハハ
「おい、しっかりしろ」
「はっ」
副団長に揺り起こされて、俺は現実という地獄に引き戻された。
「ああどうして俺を連れ戻したんだバカお前もう仕事したくない逃げたい」
「いや、仕事終わったから起こしたんだが……」
「へ?」
どうやら無意識のうちに眠ってたらしい。しかもけっこう長い間。
見れば、机の上に散乱していた資料はきっちり整頓され、俺の目の前には何枚か重ねられた羊皮紙がある。パラパラとめくると、必要な内容を抽出、まとめた完璧な報告書だった。
「いやー、オルト君は実に優秀だなー。マジで感謝感謝」
「そう思うなら、もう少しこの人の休暇を増やしてもらいたいわね」
「うぉい!?」
背後からの声に驚いて振り返ると、仏頂面の女性が立っていた。肩くらいまでの朱髪に、そのまま貴族の舞踏会に行けそうなドレスを着ている。
彼女は副団長ことオルトの妻で、略称タトラ。本名は長くて覚えてない。容姿端麗、頭脳明晰、家事万能、スタイル抜群に血筋上等というアンタはいったいどこの何星人だ的なスペックの持ち主だ。
「で、なんでここに? ……あ、もしかして」
「ええ、私とオルトで作っておいてあげたわ。感謝しなさい」
「あーなるほど、この報告書は夫婦の協同作業だったワケ」
「そういうことだ。提出するのはお前の役目だからな」
後は頼んだと椅子から立ち、妻を連れだって帰って行く副団長。……俺もさっさと報告書出しに行くか。帰ってちゃんと寝たい。
※※
「ただいまぁ……」
結局、俺が家に帰れたのは昼過ぎになってだった。ただでさえそこそこでかい街なのに、ウチがあるのは壁に囲まれた「中街」じゃなく、その外。街の北側、森の中にある「裏街」だ。昨日からのハードワークに疲れきった身体でここまでたどり着くのがどれだけ大変かって話。
だいたい、久々に行方不明者が1人出たくらいでうるせーんだよ上の奴らは。戻ってくるかどうかは知らねーが、男としては幸せだろうからいいだろ別に。
あぁダメだ、思い出したらまたドッと疲れが……。誰か、俺に食事と睡眠を、栄養と休息を。特に休息。このままだと「疲れたよパトラッ(ry」は避けられませんよ。
「ようやく帰ってきたか。相変わらずそちらの軍隊は面倒だな」
玄関でうだうだしてると、眼光鋭いマイハニーが出迎えてくれた。料理でもしてたのか赤いエプロン姿で、タオルで手を拭きながら寄ってくる。
しかし毎日見てるけど、相変わらずウチのハニーはエプロンが似合いませんですね。これがはだエプだったら話は違うのかもだけど、何度頼んでもやってくれないし。
「おう……も、ムリ……寝る……」
「やれやれ、仕方ないな。ほら、肩を貸してやる」
「ありがと……」
嫁に支えられながら、どうにか寝室へ。ベッドに倒れ込み、あっという間に夢の世界とこんにちは。あ、ナイトメアさんはお断りです。『死因:浮気』とかカンベンなんで。
「そうだ。寝る前に、夕飯は何が――っておい、聞いてるか?」
眠りに落ちる前の一瞬、目に映ったのは、スミレ色の長い髪だった。
※※
俺が目を覚ますと、既に外は暗くなっていた。……と言いたいところだが、どうやら俺の疲労は予想を遥かに越えていたようだ。
窓の外が明るい。鶏の鳴き声が聞こえる。……そして、下の方から聞こえる水音と、ムスコから送られてくる快感。
ええ、嫁が朝勃ちしたムスコをくわえ込んでいましたよ。起きる前に何発か搾り出したみたいで、口の周りには精液がへばり付いてます。エロいです。ちんこ勃ち――もう勃ってますね。てかもう出してるしね。
「む、やっろおひらか(やっと起きたか)」
「くわえたまま喋んな、頼むから」
気持ちいいから。出ちゃうから。いやお前は出させるためにくわえてるんだろうけど。
「……(ズズー」
「っ、あぅ……おま、そんな吸ったらっ……!」
ビュクッ!
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