ある教会騎士と周囲の人々。晩秋


 朝食に、昨日のスープを温めている間、少し筆を取ってみた。


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 XXX 秋の二月目、小望月の日 朝 XXX


 今日の起床は私が先。二日前はリサだった。ひょんな事から魔物を養い始め、既に二週。魔物と寝蔵を共にするという、教会騎士としては異常な事態にも、近頃は少しずつ慣れが見え始めている。
 なにせコレといったナニが無い。コルナーの言う通り、アリスという魔物……いや。リサは、魔物というには随分と「らしくない」。ただの人間の娘と、なんら変わりはないように思える。何度もこうして日記につづってきた事だが、重ねて言うべき事実でもある。

 だが、一切の変化がない訳では無い。(仮)と末尾に付くが、リサの保護者役は私だ。つまりは家族が一人増えたという事で、こうして日記を前にする事も増えた。…これは少し、楽しい。
 もっとも、「家族」と言うには少しばかり、よそよそしい。私も長く独り身の生活で、あまり踏み込んで子供と接した経験もほとんどない。「慣れた」というのも、魔物と同居という異常状態に対してだけだ。それと、どうやらリサは遠慮がちな性格のようである。ここ数日で分かった数少ないことの一つだ。
もう少し、親しみをもって接っせればと思うのだが……はぁ


おっと、そろそろ時間だ。


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「あれ、騎士様? そろそろお出かけの時間じゃあ……」

「今日は休みだ。今日は一日家にいられるわけだな。 言ってなかったか?」

「えっ…と?」

「何か、したい事はあるか?今日くらいは付き合えるぞ」

「じ、じゃあ…その……」

「?」

「教会に行ってみたい、んです…け、ど……」

「はあ!?」

「ひうっ! す、すみません!」

「あ、いや…いい。すまん。
だがいきなり何だ? どうして教会になど行きたがる?」

「それは、その…教会の建物って綺麗で…その……」

「はぁ……」

「ダメ…ですか?」

「いや。私も元々ミサに顔を出す必要があった……今から、一緒に行こうか」

「! はい!!」














「おや。遅かったですね、ニーザル隊長。……子連れですか?」

    「ひひゃう!?」
「子連れ言うな」

「……リサちゃんさー、姿現しただけで叫ぶのはひヒドくない?
 お兄チャン傷ついちゃうヨー」

  「あ、その…すみません」
「九割方はお前のせいだろう」

「はい、ごもっとも。さっすが隊長、分かってらっしゃる」

「素直に頷くな。少しは否定できるよう努力しろ」

「はい、はい。で、どうしてリサちゃんがここに?」

 「え、えっとぉ…」
「教会の建物を見たいんだそうだ」

「へー、なるほどソレで。 ふーん。ほー?へー!」


「……なんだ、コルナー。何か言いたいことがあるなら口に出して言え」

「いえいえ、べっつにー?
 頼まれてすぐ連れてきたんだー、とか。隊長も丸くなったなー、とか。
 どこかの西洋妖怪の総大将のアレみたいな事なんて考えてませんよ?」

「・・・?」「お前なぁ…」

「ああ、リサちゃんは知らなくっていいですよ?
 あと隊長、そろそろミサが始まる時間です」

「む。そうだった」

「はい、そーゆー訳で敬虔さがウリの隊長はとっとと行ってらっしゃいな。
 その間に僕がリサちゃんを色々と案内しておきますから」


「………」
 「え……」


「ヤだな〜、ヘンな事なんかしませんって♪ (ボソッ)したって忘れるでしょうし」

「「………………」」


「大丈夫ですって。僕に任せて万事解決です♪
 あと隊長、そろそろ本格的に時間が無いですよ」

「……仕方ない。不本意だが、頼む」

「いえ〜い♪そーれじゃ、行きましょかい、リサちゃん?」

 「え、あ・・・はい」
      「うん、いい返事です!」


「………はぁ」














「と、いうわけで。本日リサちゃんの案内を引き受けました。
 モル・カント聖教騎士団トネルト支部、副隊長のコルナー・マストーラです。
 趣味は騎士団。仕事は人を面白いように仕立てること。
 まあ、初対面じゃないけど自己紹介してなかったからね♪」


「え……と…」

「あー。こらこら、笑うところです。
 あと面倒な人とか思わない。合ってるけど言っちゃダメ」

「いえ、その…思ってませんが」

「では結構。素直でよろしい。子供は素直が一番です。
 そんなよい子のリサちゃんには、お兄さん、プレゼントあげちゃいます」

「え、えと……え?」

「あーもう。そんなに警戒しないでくださいって……さて。
 えー、確かこの辺りに入れて・・・うん、あったあった♪
 はい、コレですよー。な
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