悪夢で始まったお話。





 静かな森。
秋は、赤い絨毯が敷き詰められていて、何だかとっても軟らかそう。
少し風は冷たいけれど、コートがあれば大丈夫。

一つ……昼寝でもしてみようかな?

チュンチュンと、鳥のさえずりが耳に心地良い。
僕は木にドーンともたれ掛かって、うつらうつらと、船を漕ぎはじめる。



 と、そこに…!!!



 突然空は暗雲に包まれ、雷鳴が轟く。
ゴゥゴゥと鳴り響く風に目をやれば、巨大な蝙蝠のような大怪鳥が天を舞う!
 何事かと頭を振れば、向こうの山がデデーン!
効果音と共にバックリ割れて、見上げるほどの大魔神が湖を割って大登場!!
デ〜デデデーデデ〜ン〜ン〜〜!!!




「ちょっと待て〜〜〜い!!!」



 僕の一日はこんな感じで始まる。



 XXX XXX XXX XXX XXX



 嫌な夢を見て目が覚めた。
背中が脂汗でベッタリしている。
目覚めて早々気分が……


「あ…起きた?」


……まあいっか


 目覚めて早速見えたのは、豊満な胸と僕の彼女さん。
そして窓際に置かれた、季節外れの青い紫陽花。あと豊満な胸。(←ここ重要)
ちょっと弱気で可愛らしくて、家事全般も出来ちゃう素敵な彼女。


 一日の始まりに彼女の顔が見えるのは気分が良い。
例えソレが悪夢の原因だって、良いもんは良い。
けどさ…


「もうちょっとマシな起こし方、ない?」

「あぅ…ごめんなさい」


 おっといけない、落ち込ませてしまった。
自身なさ気に俯いちゃった彼女は、ナイトメアのノーツ・リム。
しょげた顔も可愛いね、ノーツ?


「えと…お朝食、出来てマス……」

「うん。ありがと、ノーツ。
 着替えてから行くから、先にリビングに行ってて?」


 は〜い、と答えて部屋から出て行くノーツ。
ファサファサ揺れてる尻尾が実にいい。
やはりケモ娘は良い物だ。

…っと、さてさて支度しないと。


 XXX XXX XXX XXX XXX



「うん、ごちそうさま。
 今日も美味しかったよ?」

「おそまつさまです……けど、少し作りすぎちゃった」

「ん〜、なら『他の部屋』の人達にもお裾分けしよっか」

「うん…そだね」


 そういって、ちょっぴり嬉しそうに頬を染めるノーツ。
僕はデザートの焼き菓子を一つかじりながら、そんな様子を見つめてみた。
おや、視線に気づかれた。…あ、耳まで真っ赤になってる。


「え、えっと……なにかな?」

「おっと、いやいや。何でもないよ。
 別になんでも……ふふ」

「…?」


 適当にはぐらかしてやったら、小首を傾げられました。
目元の隠れた服の上からでも、キョトンとした表情がよく解る。


 ああ、まったく。
どーしてこんなに可愛いんでしょうかねぇ、この娘は。


 XXX XXX XXX XXX XXX



「それじゃ、僕は出掛けるよ?」

「あ、は〜い……いってらっしゃい。
 えっと、いつも通り部屋の掃除しておくね?」


 ノーツとは、別に同棲している訳じゃあ無い。
けど毎日のように家に来ては、こうして朝食を作ったりしてくれる。
そして僕の仕事の時間には、掃除洗濯までやってくれている訳だ。

 あと週に二度、三度はお泊り込みで……おっと、この先はダメだ。
こういうのを何と言ったか・・・通い妻、だっけ?
ええっと……うん。まあ、実に有り難いわけだ。

けど、働きすぎだよ?


「ここ、別にノーツの家じゃないんだからさ。
 そこまで しなくっても良いんだよ?」

「あう〜ぅ……」


 おっと、ちょっと落ち込ませちゃったか。
そういうつもりで言ったつもりじゃあ、無かったんだけどなぁ……
これは失敗。


「んっと……まぁ、僕は助かってるんだけどね?」


フォローの言葉を入れておこう。
……あ、少し明るい顔になった。

これで一安心、かな?


「じゃ、行ってきまーす」

「はい、気をつけて下さいね?」


 XXX XXX XXX XXX XXX


 さてさて、仕事です。
今日については特に何も無いようで、デスクワーク三昧。
暇ですねぇ……


「は〜あ、ノーツ何してるかなぁ……」

「こら! 仕事をしろ、仕事を!!」


 痛ッ!?
ぼやいていたら、殴られてしまった。
隊長。部下への暴力は良くないと思います。


「ただでさえ人手が足りんのだ! 貴様までサボるんじゃない!!」

「はい、はい。解ってますよ」

「もっと真面目になるのだ!」


 うへぇ……


 XXX XXX XXX XXX XXX



「ああ〜……疲れた」


 残業地獄ってこわいですねぇ。
二つの意味で。……あれ、「こわい」って疲れたって意味でよかったっけ?
まあソコは問題じゃなし。


「随分遅く
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