貧乏傭兵と炎精霊 3 前編


 暗い暗い。真白い霞みがそこらに煙る
 白い白い。どこもかしこもただ白い
 暗くて白い。暗くて白い。白は青


 何んにも見えぬ、何んにも判らぬ
 暗い暗い。白い白い。白は青くて青々と



 真白い霞みは何処何処までも
 真暗い霞みが何処何処までも
 霞みが満ちる。満つるて詰まる


 霞みが満ちる、何んにも見えぬ
 満つるて詰まる、何んにも判らぬ



 暗い暗い。真白が詰まって綿のよう
 白い白い。真綿ふわふわ纏わり付くな
 真白よ真白。纏わり付くな。青い真白が身に絡む


 真白、真白い。ただただ暗い。ただ青い
 青い真白、ふわふわと。クリィム色がふわふわと
 纏わり付くなよ、付くなったら



 クリィムならば甘いんだろか?
 一つ啜って試してみよう

 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 嗚呼、甘い


 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 こんな甘味は知らなんだ


 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 嗚呼、甘イ

 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり
 ぴちゃぴちゃくちゅり、しゅるくちゅり……






    ・

    ・

    ・








 きみは誰?

 …ひく…えっぐ……イグ…、イグニ…スです……ひっく…


 どうして泣いてるの?

 …っく…ひっぐ……ひと…り、…ぼっちに……なっちゃった…


 じゃあ、僕と同じだね


 あなた……も?

 そう、僕もずっと もうずっと一人なんだ


 …どう…して笑えるの? さびしく…ないの?

 さびしいよ…だから、いっしょに行こう


 いっしょ…?

 そう いっしょなら、さみしくないから!


 あ……


 ね、いっしょに行こう?

 …あ、あの……


 どうしたの?

 …なま、え……名前をつけ…て、ください……


 名前?

 は、はい……そうして…くれたら、ついて行きます…から……


 じゃあ、きみの名前は〜



   フィーリ









    ・

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            /
     ・ ・ ・  インペリアルクロス!!
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    ・

    ・





 目が覚めた。
何か、夢を見ていた気がする。
どんな風だったのかも思い出せない夢。
覚えているのは、ただ漠然と「奇妙だった」という事だけだ。



 空が高い。
いつの間にか晴れている。
星がきれい

 ついさっきまでの曇り空が嘘のよう。
西の方では、もう厚い雲の暗幕は、影も形も見当たらない。
ささやかな光が満ちている。



 星は…どこか遠くで輝く太陽だそうだ。
太陽も、本当はとっても大きくて強い、私と同じ炎の化生らしい。
昔、ご主人が教えてくれた。 本当かどうかは知らない。





 夜空は小さなキャンバス。
雲の開いた西空で、星の巡りが絵を描く。
星の連なり型成して、神の時代を演じて踊る。

 緞帳は開け、星達は踊る。
星の光が照明で、連なる事で役者となって。
夜の濃紺は彼等のステージ。星の演ずる無声劇。
古の過去に語られた、英雄達の叙事詩の方片。

 今日の講演も鮮やかだ。










 星達は…きっと寂しいんだと思う。

 真っ暗な中、一人ぼっちが怖いんだ。

 だからきっと星座を作る。
 だからきっと巡り踊る。

 そうすれば独りじゃ無くなるから。
 そうしていれば、なんだか楽しい気分になれるから。

 だからきっと、巡り連なり光るんだ。


 『わたしたちは ここにいる』って……






(なあんて、ただの妄想でしかないけどね)

 本当はどうなのかなんて判らない。
星も多分、そんな事を考えてる訳じゃあ無いと思う。
だからコレは、ただの妄想。ただの一人遊びだ。


    けど私は――
   私はどうだった…?



 XXX XXX XXX XXX XXX



  空は高い。
 高くて遠い。


 ここは屋外だ。
それも街道のすぐ近く。
私とご主人は、気付いたらこんな所にいた。
あのドラゴンを倒した後、青い燐光の魔法陣に包まれて……転位されたんだと思う。

 そして多分、少し気絶していた。
空の様子はどうみても真夜中だ。


 場所は…暗くて良く解らない。
けど多分、元いた街のすぐ近くだろう。
街に入るときに散々待たされていたせいで、あの城壁はよく覚えていた。
今はどうやら、扉を固く閉じているようだ。



 今は多分……10時か、もう少しくらいだろう。
私は
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