黒い粘性物質 前編

    依頼状
  ダークスライム一体。

  元人間。
 冒険者であったが魔物化した状態で帰還する。
 元はそれなりに地位、名誉を有する者である。
 その為、事が明るみに出れば教会に不利益を出す。
 迅速に処理すべし。


 方法、結果は貴君に一任する。


         第三教会神官長、ジグニア・モルト


 ――― ――― ―――



 さて、久しぶりの『仕事』だ。
 正直な話、近頃は持て余していたのだ。
 平和な町並み、平和な情勢、平和な国。
 吐出が出る。安息日以外は毎日出勤だ。

 退屈な任務も退屈な日常も、全てウンザリ。
 世界はもっと、破滅的でエキサイティングであるべきだ。
 そうは思わんか。「元」冒険者どの?

「……貴方一体、何をする気なの」

 なに。
 そう難しい事でも、複雑な事でも無い。
 単に偉大なる我らが神の為、煩雑な問題を迅速に片付ける。
 ただソレだけの話だよ。まあ、貴方にとって楽しい話では無いだろうが……
 世の中ってのは理不尽なモノだ。
 諦めろ。そうすれば楽になれる。

「何をする気、と聞いたんだけど?」

 おや。かは……くくく。
 いいねぇ、あんた。実にいい。
 その目。その態度。その体。
 いやあ良い。最高だね……くっくかか、実にオレ好みだ。

「下劣ね。それが地金なのかしら?」

 おおっと失礼。
 「何をするか」それが知りたいんだったな?
 ではお答えしよう。簡単な事だ。

 あんたを壊す。以上。
 具体的な方法は決めていないがね。

「壊す…?」

 そう、壊す。
 実に残念な事に、君は魔物になってしまった。
 それはオーケイ?

「………」

 その沈黙は了承と取ろう。
 だが君は、自分が魔物になるなど思ってもみなかっただろう?
 魔物になって、まだ自我を保てているなど考えてもみなかっただろう?

 なぜなら、教会はそんな事は教えていない。
 人が魔物になれば、獣に成り果てる。
 それが教会の教え。そして教会の教えとは『神の教え』
 故に絶対。故に……

「私の存在は、あんた達の言う『神の教え』に背く?
 だから『壊す』って事?
 クソくらえね……」

 理解が早くて助かるね。
 では始めようか。……くっくくかか


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 第一番記録。
 まずは簡単な会話。
 その後の痴漢まがいの愛撫で、目標の身体特徴を幾らか掴む。
 以下はそれらのメモ。


・【生意気】とまでは行かないが、【プライド高い】
・非処女。ただし【貞操観念】有り。
・体力、気力共に高く【回復早い】。
・【B敏感】

  注意事項

・【気丈】【抵抗】【抑圧】
・【痛みに強い】


 以上の点より正攻法は効果薄。
 何らかの策、もしくは絡め手を用意するべし。



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 さてさて、そういうわけで久しぶりのお仕事なわけだけど、どうするかな。
 ……考えられる手段は三つ。いや、四か。


 まず一つは殺す事。
 これは下策中の下策。なにせ楽しめない。
 ついでにアレの相手をしている内は期間付きながら有給休暇の扱いだ。
 それを手放すのは惜しい。


 次に快楽漬け。
 精神を蕩かしてぶっ壊す。
 魔物相手にコレは疲れるが、有効策の一つ。
 なにせ元からドが付く淫乱だ。堕とすのは手易い。
 ただし、今回は元人間。ついでに性格が『あれ』だ。
 余り効果はあるまい。


 三個目は物理的に屈服させる……のは、論外か。
 アレはもともと戦稼業の人間。苦痛には耐性が有る。
 その上、今のアレはスライム体。
 殴るどころか、切ったところで効果無しと来たもんだ
 苦痛に訴えての陥落は無茶がある。


 なら、他に考えられる方法は……ふむ、たまにはそういう方向も乙なものか。

 なんにせよ最初にすべき事は変わらん。
 まずは感覚から、各ABLを適当に上昇させていく。
 後の事はそこから考えれば良い。


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「く……ぁ、ふ…」


 不快。
男の手が、私の肌を撫で回す。
見ず知らずの人間に、身体を好きにされている。
魔物に成り果て、幾分好色にはなってしまったが、不快な物は不快だ。
愛してもいない男が触れてきた所で、そこに官能は無い。

「おやおや随分と強情なご様子で。」
「黙れ!…くっ……」

 ぐちゃりと、股を男の指が這う。
スライムの体になっても、大まかな身体形状は人間の時と変わらない。
消化器官は無くなっているようだが、生殖器周りは概ねそのまま。
好色な魔物らしい……いや、私が人間だった時の名残だろうか?

 ぐちゃりなどと音が立ったが、私が感じていたなどという事はない。
何と言うことも無い。
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