発情しちゃってるんです!

夏のある日

ホルスタウロスであるハツネは上機嫌だった

茶色いふんわりロングヘアーに、はっきりした目鼻立ち

白いワンピースは、100センチのバストの形にくっきり変形している

黄色いオシャレサンダルをキュッと履きこなし、てとてと歩く

30℃を越える猛暑日に、きっちり繋いだ右手と左手

少し汗ばんでいるが、お互い気にならないようだ

「ねぇ、ひー君、次はどこに行く?」

手を繋いだ少年に尋ねた

彼はハツネの交際相手、ヒロタカ、通称ひー君(※ハツネがつけた)

中性的な顔立ちで、カッコいいよりかはカワイイが先行している

健康的な少年のイメージと大差ない

「そうですね…ハツネさんはどこがいい?」

「え?どこでもいいよ?」

きょとん、とした後、すぐに笑顔で返す

ハツネよりほんの少しだけ背が低い彼は、じゃあ…、と言いつつ、辺りを見回す

そんな様子を真横から見ているハツネは、ぽわぽわ浮いているようだった

今日は久しぶりのデートの日

近所の小さな遊園地で小ぢんまりと幸せな時間を紡ぐのだ

はっ!

としたら、もう日は傾き、景色が赤みを帯びてきた

(そ、そんな…!もきもきほわほわ(※ハツネ語)してたら、もう帰る時間!?)

「たくさん乗りましたね、ハツネさん」

「へぅっ!?あ、あ、そうだね!」

不意打ちを食らい、尻尾や耳がピンと立った

「もう帰りましょう、暗くなったら危ないですから」

「う、うん…そうだね…」



─────────



「…で、帰ってきた、と?」

「…はい…」



ハツネが働いている牧場からほど近い場所にあるシェアハウス

リビングには、三人のシェアメイトが集まっていた

全員女性のホルスタウロスであり、テーブルを挟んで、シングルソファーにそれぞれ座り、前屈みでハツネの話を聞いていたのだが

「なんだよぅ、あんた今日こそファーストキスするんだ、って言ってたじゃん」

年長のホルスタウロスが電子タバコをくわえてビールを開ける

「そ、そうだったんですけど、タイミングがわからなくって…」

「あらぁ、そんなの勢いよぉ」

同期のホルスタウロスがほわほわ(※ハツネ語)しながら微笑みかける

「勢いなんて…ひー君まだ○学生だし、やっぱり初めてのチューはちゃんと順序を踏んで…」

「順序なんて知ってるんですか、先輩?」

一つ下のホルスタウロスが厳しい指摘をしてくれた

だんまり

知らないようだ

「ったく、そんなんでよくキスできる気でいたもんだ」

また缶を開けた

いつの間に一本目を飲み干したのか

「で、でも…」

「でもも何もぉ、あなた達ぃ、交際して一年でしょお?いい加減進展しないとぉ」

ずい、と同期ちゃんがちょっと迫力のある顔で寄ってきた

「し、しないと?」

逃げ場はないのに、ソファーの上で体をよじった

その視線の先には後輩ちゃんがいた

「ひー君さん、他の女に取られちゃいますよ」

「ふえっ!?」

びくぅ!とショックを受けた

「だって、彼氏なのに一年間も先輩の巨乳をお預けなんて、思春期初期の○学生からしたら生殺し以外の何物でもないですよ」

言われた瞬間、ハツネは両腕で胸を抱き抱えるように隠した

「ひ、ひ、ひー君はそんなえっちな子じゃ…」

「なくてもな、一番の愛情表現はえっちなんだよ、わかるか?えっち」

また開け…あ、いや、四本目だ

「えええええっちぃーーーっ!?」

「いや、驚くことじゃないだろ、むしろ普通だし、な?あ、最後輩もまだ処女か」

「っ!わ、私だって彼氏が出来ればすぐ…」

「ここ、後輩ちゃん!女の子なんだから…」

ぎゃあぎゃあ、やいのやいの、と論争が起こっている中

同期ちゃんは

「じゃあハツネちゃん?発情期ならどうかしらぁ?」

ぴたっ…





魔物であるホルスタウロスだが、発情期は標準装備である

人間にとっての生理のような感覚で、定期的に訪れるらしい(出典:『よくわかる魔界生物とのコミュニケーション』アラターナル出版社より好評発売中)

ちなみに、この発情期

意中の男性がいる場合、理性が吹っ飛ぶ可能性がアホみたいに高い

「にゃにゃにゃにゃにゃにおうぅぅぅ!?」

ハツネは絵の具をストレートに塗りつけられたような真っ赤っぷりだが、年長さんと後輩ちゃんは納得がいったようだ

「なるほど、あんたが言ってた勢いってそのことか」

「発情期なら、先輩もドスケベになっちゃいますよね」

「なっ、ならなくていい!ならなくていい!」

ぶんぶんぶんっ!と必死に拒否するが

「じゃあ、いつ一歩を踏み出すのかしらぁ?」

「う…」

「半年前からぁ、同じこと言ってるわよねぇ?」

「ふぐっ…」

「もう…身体に頼るしかないんじゃない?二つ
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